東京でカラヴァッジョ 日記

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三の丸尚蔵館の収蔵品が国宝新指定。

2021年07月23日 | 日本美術
   7/16、三の丸尚蔵館が収蔵する美術工芸品5件が国宝に指定されることとなった(正式指定は今秋)。
 
高階隆兼《春日権現験記絵》20巻
《蒙古襲来絵詞》2巻
狩野永徳《唐獅子図》1隻
伊藤若冲《動植綵絵》30幅
小野道風《屛風土代》1巻
 
伊藤若冲の国宝指定は初めて。
狩野永徳の国宝指定は4点目かな?
実物を観た!と言えるのは、この2点くらい(春日権現経記絵も一部を見ている)。
 
 
   三の丸尚蔵館は、昭和天皇の逝去に伴って代々継承されてきた御物のうち美術工芸品約6,300点が国に寄贈されたことを受け、これを保存研究公開するために、1993年に皇居東御苑内に開館した。宮内庁が所管する。
 
   常設展示はなく、展覧会開催によりその収蔵品を公開する。入場無料。月曜・金曜日が休館日(展覧会のない期間は休館)。コロナ禍前は多くの外国人観光客が訪れていた印象がある。
   ただ、狭い。例えば伊藤若冲《動植綵絵》を2006年に公開した際は、全30幅を5回に分けて、各回約1カ月の会期で6幅ずつの展示になったほど。現在、2025年の開館に向けて、展示室面積を現160m2から1300m2と大幅に拡大する新施設の建築が進められているようである。
 
 
   三の丸尚蔵館の収蔵品は、これまで国宝・重要文化財指定の対象外とされてきた。宮内庁がしっかり管理しているのだから、あえて「文化財保護法」上の国宝・重要文化財に指定する必要性はなかったということらしい。
 
  しかし、例えば東博の国宝や重要文化財が目白押しのような展覧会で、その表示のない出品作はどうしても軽く見てしまいがち。その作品の所蔵者が三の丸尚蔵館であることを確認して、一応納得する。が、三の丸尚蔵館の収蔵品だからといって全てが国宝・重要文化財クラスであるわけはない、国宝と重要文化財の違いも大きいだろう、と日本美術に疎い私にとってはモヤモヤ感が残る。
 
 
宮内庁有識者懇談会
宮内庁三の丸尚蔵館の今後の保存・公開の在り方に関する提言(2018年)
 
4(1)-4
収蔵品の価値を分かりやすく示すことの検討について 
 
   三の丸尚蔵館の収蔵品は、教科書等にも登場するような優れた貴重な作品が多くある。
   が、それらは、文化財保護法上の国宝又は重要文化財の指定を受けておらず、多くの人々にそれら作品の価値を分かりやすく示すことになっていない。
   一方、多くの人々にとっては、国宝や重要文化財に指定されることが、文化財の価値判断の基準として広く理解されている。
   これまで、皇室に伝承されてきた優れた文化財は、皇室の保護のもとに保存されてきたという歴史があるものの、皇室を中心とする文化の情報発信拠点としての機能の強化に向け、国宝や重要文化財の指定も含め、貴重な作品の美術史的・歴史的・学術的な価値を分かりやすく表示することを考える時期に来ている。
 
 
   このような提言プロセスを経て、さらに菅首相が本年1月の施政方針演説で「地方に積極的に貸し出し、文化観光の核とする」と言ったこともあって、急ぎ観光資源としての価値を明確化すべく、今回の初めての指定に至ったのだろう。今後も続けていく意向のようである。当面の美術工芸品の新指定は、「ニューフロンティア」三の丸尚蔵館の収蔵品に集中したりするのだろうか。
 
 
   ちなみに、九州国立博物館にて現在開催中の「皇室の名宝」展(会期:7/20〜8/29)では、新国宝指定5点のうち、狩野永徳《唐獅子図》以外の4点が出品されるという。グッド・タイミング!
 
 
  2年間開催が見送られている東博のGW恒例企画「◯◯年度新指定  国宝・重要文化財」展。昨年は開催中止、今年は企画すら無し(そもそも指定自体がなかった?)。来年は3年ぶりに開催されるのか、その場合これら5点が出品されるのか、にも注目したい。


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