4/8付の美術手帖ネット記事で知る。
フィンランド税関は4月6日、日本およびイタリアからロシアに輸送途中だったロシアの美術館の所蔵美術品を押収したと発表したという。
イタリア/日本の美術館が、展覧会のために、ロシアの美術館から借りていた美術品を返却する途中での出来事。
日本に関しては、その展覧会は、おそらく千葉市美術館で開催されていた「ジャポニスム-世界を魅了した浮世絵」展で、借用相手先はプーシキン美術館であろう。
ということは、私の大好きなゴッホの素描《ラ・ムスメ(少女の肖像)》も押収品に含まれているのだろうか。
と思っていたら、4/9の朝日新聞夕刊にて詳細報が出る。
押収された美術品は、千葉市美術館にて開催された「ジャポニスム-世界を魅了した浮世絵」展に出品されたプーシキン美術館所蔵作品。
ジャポニスム-世界を魅了した浮世絵
2022年1月12日〜3月6日
千葉市美術館
同展は、当初「千葉市美術館拡張リニューアルオープン・開館25周年記念」展として、2020年7月11日〜9月6日の会期で開催を予定していたが、新型コロナにより延期となり、1年半後に開催に至ったもの。単館開催で、巡回はない。
日本の浮世絵の影響を受けた西洋のジャポニスム作品を通じて、日本の浮世絵を観る展覧会。
出品点数は、約220点。
千葉市美術館のほか、国内美術館等、さらには次の海外の4美術館から作品が集められた。
・プーシキン美術館(ロシア)
・ジマーリ美術館(アメリカ)
・メトロポリタン美術館(アメリカ)
・ホノルル美術館(アメリカ)
プーシキン美術館からの出品は、本展の目玉であるゴッホの素描《ラ・ムスメ(少女の肖像)》のほか、ロシアの作家による作品など、書籍雑誌1点、油彩1点、素描2点、版画17点の合計21点。
朝日新聞記事によると、21点の価値総額(保険金?)は8.4億円相当。
おそらくその大半は、ゴッホの素描が占めるのであろう。
朝日新聞記事による今回の状況。
ロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まった後の3月初旬、プーシキン美術館側から「3月5日に日本を発つ便で作品を返却して欲しい」との要請がなされる。(*ロシア政府の指示だろうか。)
しかし、展覧会は会期中であり、また直前の要請であったことから、実現せず。
その後、航空各社がモスクワを発着する便を停止、結局、4月2日にヘルシンキ行きの日本航空便に乗せる。(✳︎ここに至るまでの調整は大変だっただろう。)
そして、ヘルシンキから陸路でモスクワを目指していた途中でフィンランド税関に押収される。
千葉市美術館側も、フィンランド外務省や日ロの大使館に連絡を取り続ける。
4月8日になってプーシキン美術館側から「作品が税関を通過する許可が出たようだ」との連絡があったという。
本展を担当した千葉市美術館副館長は話す。
「作品の貸し借りは、美術館や学芸員の信頼関係で成り立つ。それが優先されるべきところにこういうことが起こり、複雑な気持ちでした。」
以下、フィンランド税関にて一時差し押えられたプーシキン美術館所蔵作品21点。
ゴッホ(1853-90)
《ラ・ムスメ(少女の肖像)》 素描
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/b7/06dcbb854dcab7acc4d5dcf07019d609.jpg)
エドヴァルド・ムンク(1863-1944)
《自画像》 リトグラフ
フェリックス・エドゥアール・ヴァロットン(1868-1925)
《外出》 木版
ニコライ・ニコラエビッチ・ゼデラー(1876-1937)
「芸術と批評」 書籍雑誌
《山羊》 木版
ポール・エリュー(1859-1927)
《手すりに寄りかかる婦人》 素描
《白い婦人》 油絵
ヴァディム・ドミトリヴィッチ・ファリレーエフ(1879-1950)
《カプリ島、波浪》 リノカット
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/95/07beda8a7bf1d0ed936449c10335f729.jpg)
《高い橋》 リノカット
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/f2/1e3c6a5f36df0a0f3dda47e23ee3733d.jpg)
《草刈りの人々》 木版
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/92/bd61487d77383ccdd54d2d2b99cbd3cf.jpg)
《英雄アエネーイスの艦隊 (アエネーイス叙事詩のスケッチ)》 リノカット
《夕暮れ》 リノカット
《オルヴィエート、アルバム『イタリア』(1921年版)》《同(1923年再制作版)》リノカット
《正午》 木版
《雨中の筏》 リノカット
アンナ・ぺトロヴナ・オストロウモヴァ=レベデヴァ(1871-1955)
《鉄柵と木》 木版
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/91/e296657e89fe4799c4c211b1bddf7f96.jpg)
《夏の庭園》 木版
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/18/700e3babec03278bc90c6da0c260443e.jpg)
《城と船》 木版
《蜘蛛の巣》 木版
アンナ・パヴロヴナ・ソモヴァ=ゼデラー(1879-?)
《アイリス》 木版
ロシアに対する制裁対応は、日本においても、日常生活に多様かつ多大な影響が見込まれ、あるいは既に現れているところである。
文化交流についても同様とはいえ、しかし、まさかこういう形でも現れるとは。