日本・スウェーデン外交関係樹立150周年記念
カール・ラーション
スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家
2018年9月22日〜12月24日
損保ジャパン日本興亜美術館
会期末に駆け込み訪問。
上りのエレベーター、積み残しが出るほどの人出。まあ、1台しか動かしてないけど。会場内の混雑を懸念するが、盛況であるが、作品に人が群がるというほどではなく、快適に鑑賞する。
カール・ラーションという画家は知らなかったが、19世紀から20世紀にかけて活躍したスウェーデンの国民的人気画家であるとのこと。
カール・ラーション(1853-1919)
妻:カーリン(1859-1928)
長女:スザンヌ (1884-1958)
長男:ウルフ (1887-1905)✳︎盲腸により夭折
次男:ポントゥス (1888-1984)
次女:リスベート(1891-1979)
三女:ブリータ (1893-1982)
三男:マッツ (1894-95)✳︎生後数ヶ月で死去
四女:チェシュティ (1896-1975)
四男:エースビョーン (1900-37)
妻や子どもたちとの日常生活風景を題材とした、一見イラスト風の作品が有名。確かに愛情に満ちた家族の風景である。
家族の風景よりむしろ、部屋のインテリアを描くことが主題と思われる作品も見られる。
画家はスウェーデン中部ダーナラ地方スンドボーンに「リッラ・ヒュットネース」(「小さな精錬小屋」の意)と呼ばれる家を義父から譲り受ける。その家を妻とともに時間をかけて改装と増築を重ね、理想の家に作りあげていく。その家での生活風景を描いた画集を発表し、評判となる。これら画集(5冊発表)は、現代のスウェーデンのインテリアに深い影響を与えているという。
でも、リッラ・ヒュットネースは近代的生活には不便だったようだ。もともと住居というよりも芸術作品であるとの意識があったのかもしれない。子どもの通学の利便のために、近くの町ファールンにも家を所有し、1907年以降はそちらをメインの住居としている。
本展は、カールよりも妻のカーリンに注目すべきかもしれない。
カーリンはかつて絵を描いていたが、結婚を機にやめてしまい(本展には結婚前に描いた作品も数点展示)、夫や子どもたちの世話に専念した。と思われていたが、実はそれにとどまらず、その芸術的才能を家の装飾デザインに発揮していたのだという。
本展の後半は、カーリンのデザインによる、ドレスや帽子、椅子、椅子のカバー、シャンデリア、花台、タペストリー、カーテン、テーブルクロス、ベッドカバー、クッションなどの実物や複製が展示される。
これらカーリンによる家具やテキスタイルは、カールの画集に描かれて世で評判になるが、当時はカールの手によるものと思われており、後年の研究によりカーリンの手によるものと判明したらしい。
カールもカーリンの芸術的センスを信頼していたらしく、自身の作品もカーリンのOKが出て初めてサインするほどであったが、カーリン自身を独立した芸術家とは思うことすらなかったとのことである。
本展の撮影可能スポットは、IKEAの協力による「リッラ・ヒュットネース」の居館をイメージしたコーナー。
この部屋は小さな子どもがいては維持できないなあ。
カールの生前最後となる画集の題名は『他の家の子どもたち』。自分の子どもたちは成長してしまっている(発表の年、初孫が誕生)し、これまでのイメージもあるし、で苦心の策だったのかなあ。
帰りのエレベーター。満員で到着し、満員で発車する。まあ、1台しか動かしてないけど。
可愛い子どもたち。
カール・ラーション
《あしたはクリスマス・イヴ》
水彩・インク
1892年、カール・ラーション・ゴーデン(記念館)
1892年制作ということは、長女8歳、長男5歳、次男4歳、次女1歳を描いたのだろう。
「あしたはクリスマス・イヴ」という日に本作品を観た。