1)
カルロ・クリヴェッリ
《大天使ガブリエル》
《お告げを受ける乙女マリア》
1482年、36×45cm前後
シュテーデル美術館、フランクフルト
2)
ピエトロ・アレマンノ
《受胎告知》
1484年、214×234cm
アスコリ・ピチェーノ絵画館
3)
カルロ・クリヴェッリ
《聖エミディウスを伴う受胎告知》
1486年、207×146.7cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
似ている。
3)は、2)に1)を組み込んで、より複雑・より豪華・より繊細になっている。
2)の作者ピエトロ・アレマンノ(Pietro Alemanno)は、現オーストリアのゲットヴァイク出身。1470年頃にアスコリ・ピチェーノに定住し、クリヴェッリ工房で働いていたようである。生年は不明だがクリヴェッリとおそらく同年代、没年は1498年頃だから、クリヴェッリより少し長生きしている。
2)の《受胎告知》は、アスコリ・ピチェーノの自治承認記念作品。1484年にアスコリ・ピチェーノの長老会メンバーが議会宮殿内の礼拝堂のために注文したものである。自治承認の2年後のこと。
同じくアスコリ・ピチェーノの自治承認記念作品である、クリヴェッリの3)の《受胎告知》の制作は、1486年のこと。大仕事だと思われるのに、工房主でヴェネツィア出身の匠クリヴェッリではなく、アレマンノが先に注文を受けたこととなる。何故だろう。
クリヴェッリがアスコリ・ピチェーノを不在にしていたのだろうか。1)の「受胎告知」2パネルを上部に据える《カメリーノの聖ドミニコ教会の三連祭壇画》制作のため、カメリーノに滞在していたのかもしれない。
アレマンノは、クリヴェッリ作品を見て何を思っただろうか。
アスコリ・ピチェーノの紋章&街
クリヴェッリ《聖エミディウスを伴う受胎告知》は、アスコリ・ピチェーノのサンティッシマ・アンヌンツィアータ教会に設置されていたが、ナポレオンのイタリア侵攻時に接収され、ミラノに運ばれる。その後、手放され、英国に渡り、1864年にロンドンナショナルギャラリーの所蔵となる。
一方、アレマンノの《受胎告知》は、誕生地アスコリ・ピチェーノに残り、長く市の倉庫で眠っていた時期もあったようだが、今はアスコリ・ピチェーノ絵画館に所蔵され、芸術作品としてのみならず、地元の貴重な歴史史料としても大切にされているようである。
私もロンドン・ナショナル・ギャラリー展を見ましたので、作品ごとに詳しく作品を解説されておられる一連のブログを拝読せていただき、この美術展を再体験させていただきました。
クリヴェッリ 『聖エミディウスを伴う受胎告知』は、珍しいスタイルの『受胎告知』の前で立ち止まってしまいました。ドナテッロの影響を受け、斬新な遠近感、強烈な表現主義と鋭くて神経質なデザイン感覚がある一方、豪華な後期ゴシック様式の装飾が施され、古風で抽象的な基本構想に著しい真実の瞬間を挿入しようとしているように感じました。
私はロンドン・ナショナル・ギャラリー展見て、絵画の本質と魅力を広い視点でほけ下げてレポートしてみました。ぜひ一度目を通していただきお役に立てることを願っています。ご感想・ご意見などありましたら、ブログにコメント頂けると感謝いたします。
コメントありがとうございます。
貴記事、拝読させてもらいました。
8点、いずれも素晴らしいですね。
クリヴェッリ、ウッチェロとひまわりは特別の存在ですね。
私的にはスペイン絵画も良かったです。