東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

「正倉院の世界」展(東京国立博物館)

2019年10月25日 | 展覧会(日本美術)
御即位記念特別展
正倉院の世界
-皇室がまもり伝えた美-
2019年10月14日〜11月24日
前期:〜11/4、後期:11/6〜
東京国立博物館
 
 
   奈良国立博物館の毎秋恒例の「正倉院展」。長年気になっているが、訪問したことはない。    
 
   すると、向こうから東京にやってきてくれた、「正倉院の世界」展。
 
   「正倉院宝物」はもちろんのこと、「正倉院宝物」より一時代古い「法隆寺献納宝物」(東博所蔵)があわせて展示されるほか、「正倉院宝物」の保存の歴史や保存の取組みなどの資料も紹介されるという。
 
   会期は、前期20日間、後期17日間(休館日を除く)。
   奈良博の「正倉院展」の会期日数と同じであるのは、おそらく「正倉院宝物」公開に関する掟が存在するためなのだろう。
 
   週末の午後の訪問。その混雑状況。
   入場待ちはない。展示室内は、ところどころで最前列鑑賞のために並ぶことはあるけれど、特記するほどの混雑ではない。
 
   展示点数は、前後期あわせて116点。
   うち「正倉院宝物」は46点。
   ただし、「正倉院宝物」としての数え方では総件数43件とのこと(「No.35, 39, 112は合わせて1件、No.113, 114は合わせて1件」)。
 
   その46点の展示期間は、通期4点、前後期入替えが2点、前期のみ20点、後期のみ20点である。1回の訪問で観れるのは26点。
   ここ10年の奈良博「正倉院展」の展示点数が60件台(直近は60件弱)であることと比べると少ないが、質とか大きさとかもあるので、量だけでは何とも言えない。
   ちなみに本年の奈良博「正倉院展」では、41件と例年より少ない出品件数が予定されている。
 
 
   まず1巡目は、全ての展示作品を順番に見る。
   2巡目は、「正倉院宝物」に限定して見る。1点1点は1巡目と変わらない熱心さをもって見ているつもりなのだが、「正倉院宝物」ではない展示品を飛ばすと、ずいぶん早く1周が完了する。時間の経過で混雑が緩和していたこともあるが、やはり展示点数自体が少ないのだな。
 
 
印象に残る「正倉院宝物」
 
《東大寺献物帳(国家珍宝帳)》
奈良時代・天宝勝宝8歳(756年)注
前期展示
 
   聖武天皇の御遺愛品を中心とする宝物が東大寺大仏に献納されたときの目録、全長15メートル弱を一挙公開。
   改ざん防止のため全面に隙間なく「天皇御璽」の印が捺されている。整った文字と保存状態の良さ。
(注)「天平勝宝7年、孝謙天皇の勅により年の表記が「年」から「歳」に改められたため、改元までの3年間は、天平勝宝7歳、8歳、9歳という表記が用いられます。」(出品目録の凡例より)
 
 
《螺鈿紫檀五絃琵琶》
中国 唐時代・8世紀 
前期展示
 
   正倉院宝物のなかでも屈指の名品であるらしい。本品のための展示部屋として、第2会場の3分の1のスペースをあてる。長蛇の列対策も用意。
   撥(ばち)を受ける部分の「ラクダに乗って琵琶を演奏する人物」や背面の「宝相華文(ほうそうげもん)」は確かに美しい。何周かしてしまう。
 
 
《白石鎮子   青龍・朱雀》
中国・唐時代   8世紀
前期展示
 
   美しい浮彫り。龍と鳳凰。
   後期は白虎・玄武が出品。
 
 
《塵芥(じんかい)》
飛鳥〜奈良時代、7〜8世紀
通期展示
 
   「正倉院宝物」は、もとの形状が残っているものばかりではない。1260年以上の月日の流れのなかで、残欠、断爛、塵芥、塵粉となってしまったものもある。これらも「正倉院宝物」として大切に保管されている。
   本展では「塵芥」のひと固まりと、分別された「塵芥」が展示される。ビデオ紹介にあるとおり、「塵芥」の分別作業は大正時代から継続して行われているそうだ。
(参考)
残欠:破損は大きいが元の姿を知りうる片
断爛:崩壊が進んで元の形が推定できない片
塵芥:小断片や微小片(塵や芥となった片)
塵粉:粉状化した片
 
 
   それ以外では、その大きさに感心する奈良時代の《墨画仏像》。
   また、足利義政、織田信長、明治天皇ゆかりの名香《黄熟香》の、その特別扱いぶり。
 
 
   初鑑賞の「正倉院宝物」の展覧会。宝物の有り難さ・素晴らしさは分からないながらも、楽しく見る。
 
   ところで、毎年たいへんな入場者数となる奈良の「正倉院展」に対して、東京の「正倉院の世界」展ではどのくらいになるのだろうか、も気になるところ。


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