今年もこの季節がやってきた。
日経トレンディ2021年1月号臨時増刊『日経おとなのOFF 2021年絶対に見逃せない美術展』を眺める。
このご時世なので、例年と比べるとラインナップが大人しくなった感はあるけれども、恒例企画の山下・山田対談でも取り上げた展覧会18展のうち既に開催中が6展(うち2020年中終了が2展)だったりするけれども、全国の美術館紹介で21頁を稼いでも頁数が去年より減った(価格は少し上がった)けれども、それでも、西洋美術、日本美術とも楽しみな展覧会が想像以上に多く掲載されている。実にありがたいこと。
以下、2021年絶対に見逃せない、西洋美術展。私的一覧。
テート美術館所蔵
コンスタブル展
2021年2月20日〜5月30日
三菱一号館美術館
生誕150周年記念
モンドリアン展
2021年3月23日〜6月6日
SOMPO美術館
(愛知に巡回)
カラヴァッジョ《キリストの埋葬》展
2021年3月24日〜5月10日★
国立新美術館
フランシス・ベーコン
パリ・ジュール・コレクションによる
2021年4月〜6月★
渋谷区立松濤美術館
(1〜4月に神奈川県立近代美術館葉山)
クロード・モネ 風景への問いかけ
オルセー美術館・オランジュリー美術館特別企画
2021年5月29日〜9月10日★
アーティゾン美術館
ランス美術館コレクション
風景画のはじまり コローから印象派へ
2021年6月25日〜9月12日
SOMPO美術館
(愛知、宮城、静岡に巡回)
バンクシーって誰?展覧会
2021年8月21日〜12月5日★
寺田倉庫G1ビル
(愛知、大阪、福島に巡回予定)
マティス
自由なフォルム
2021年9月15日〜12月13日
国立新美術館
ゴッホ展
響きあう魂 ヘレーネとフィンセント
2021年9月18日〜12月12日
東京都美術館
(福岡、愛知に巡回)
動物の絵 日本とヨーロッパ
ふしぎ・かわいい・へそまがり
2021年9月18日〜11月28日★
府中市美術館
イスラエル博物館所蔵
印象派・光の系譜
2021年10月15日〜22年1月16日
三菱一号館美術館
(大阪に巡回)
以上11展。うち2020年からの会期変更が5展(★印。私の認識)である。
私的期待度トップ3は、カラヴァッジョ、モンドリアン、ゴッホ。
カラヴァッジョ展は、約5ヶ月の延期により、(そういう趣旨は全くないが)結果として画家生誕450年の記念年の開催となり、勝手に期待を高めているところ。
モンドリアン展は、オランダのデン・ハーグ美術館からの出品を主とする。ありがたいこと。初期から晩年の作品を楽しめる模様。
ゴッホ展は、またゴッホ、また東京都美術館、という感があるが、東京都美術館渾身?のゴッホ・シリーズ、今回はクレラー=ミュラー美術館コレクションの形成者ヘレーネにも焦点を充てられるとのことなので、新たな知見に触れられそうで非常に楽しみ。
日本美術展について。
多数あるなか、私的好みにより絞りに絞って、王道的な展覧会2展と変化球的な展覧会2展を挙げる。
あやしい絵展
2021年3月23日〜5月16日
東京国立近代美術館
(大阪に巡回)
コレクター福富太郎の眼
2021年4月24日〜6月27日
東京ステーションギャラリー
国宝 聖林寺十一面観音
三輪山信仰のみほとけ
2021年6月22日〜9月12日
東京国立博物館
(奈良に巡回)
曾我蕭白展
2021年10月8日〜11月21日
愛知県美術館
まだまだ新たな美術展の情報が、来年後半に始まるものを中心に今後出てくるだろう。12月19日発売予定の「美術の窓1月号」もチェックする予定。
この時期の翌年美術展特集の情報誌、年を追うごとに競争が増す印象があったが、今年は芸術新潮が離脱した模様。このご時世、今後は売れ行きも厳しくなるのかもしれない。
そういうなか、今回の「日経おとなのOFF」は、痛恨のミスをやってしまった模様。
2020年12月9日付の朝日新聞朝刊に「増刊 日経おとなのOFF」の広告を誤って掲載したことについて、改めてお詫び申し上げます。
— 日経おとなのOFF【公式】 (@Nikkei_OFF) December 10, 2020
そして、このような状況下、前回の投稿に対しても皆様よりたくさんのご指摘、ご配慮、ご意見をいただきました。真摯に受け止めるとともに、心より御礼申し上げます。
今朝の朝日新聞です。
— みやこどり (@maxcv2L1YyYdmY9) December 9, 2020
「日経おとなのOFF」の広告、去年のものではないでしょうか? pic.twitter.com/D3LcEuOEsI
手元にある朝日新聞を確認した。
スルバランだ。確かに去年のだ。
去年の雑誌を改めて眺める。
表紙の 「百済観音も東京へ」、「ナポリから初来日」が実現しなかったのは非常に残念。
ただ、それ以外の企画については、概ね2021年1月時点でも依然進行中であって、今回2021年版でも現に取り上げているのが面白い。
早くも来年のいちらん(一覧)をあげてくださり、ありがとうございます!
うちの(親友の)チット、絵を見るのが大好きで、昔は本当によく・てんらん会に行ってたし、美じゅつざっしもチェックしていたのですが、さいきんは忙しく・・こうしてKさまのブログですべてをはあく(把握)してまんぞくするに至っています💡
「カラヴァッジョブログによるカラヴァッジョ展のリポートが楽しみ🎵」と今からきたい(期待)を高めていますので、よろしくおねがいします✨
クリンより🐻(府中市美じゅつかん、って、けっこう良い企画をやっているなと思っています)
コメントありがとうございます。
ブログには取り上げませんでしたが、府中市美術館の2021年春の江戸絵画まつりは、与謝蕪村展です。
また、新版画の展覧会も期待です。吉田博(東京都美術館)、笠松紫浪(太田記念美術館)、川瀬巴水(SOMPO美術館)が紹介されていました。
一日もはやく、気兼ねなく美術展や旅行に行ける日が戻って欲しいものです。
日本美術関係での来年の予定では、私は日経おとなのOFFに掲載されていた美術展では、東博・奈良博の「聖徳太子と法隆寺展」に最も注目しています。
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/horyuji2021/index.html
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/horyuji2021/highlight.html
奈良の方は4月27日からなので、予定通り開催できるか不安がありますが、東博の方は7月なので、その頃までにはなんとかなっているだろうと思っています。聖林寺十一面観音展が6月から本館、聖徳太子が7月から平成館なので、7月以降は両方同時開催です。
この聖徳太子展に注目しているのは、通常は公開していない国宝聖徳太子及び脇侍像(聖霊院安置、平安時代後期)が出るためです。この像については数十年前に年1回の御開帳の日(3/22)に合わせて法隆寺に見に行ったことがありますが、博物館の明るい照明で近くから見ることができるのは貴重な機会です。脇侍の4体の像(山背大兄王、殖栗王、卒末呂王、恵慈法師)も一緒に出品されます。なお、過去には1994年の法隆寺昭和資材帳完成記念展で東博・奈良博に出品されたことがあります(私は行っていませんが図録だけ持っています)。
平安時代の聖徳太子像については、制作年代の明らかなものが現在3点あり、そのうちの2点がこの展覧会に出ます(但し東博は上記の聖霊院聖徳太子のみ)。1点目は治暦五年1069の像内銘がある絵殿にあった像(現法隆寺宝物館)で、貴ブログの昨年11月の東博聖徳太子絵伝に関する記事で言及されている東博法隆寺館の聖徳太子絵伝と同時に制作された像で、これは太子生誕500年の機会に太子像と絵伝を同時に制作したものです。絵の作者と像の彩色絵師が同一人の秦致貞(秦致真とも)です。2点目が京都広隆寺上宮王院本尊の着装像(下着姿に作って実物の着物を着せる像)で、元永三年1120の像内銘があるもの(これは出品されません。下記アドレス、但し33歳の像と書かれているのは寺伝によるもので、実際にはその形式から古式の16歳孝養像と考えられます)。この像は歴代天皇が即位の儀式で着用した着物(黄櫨染の御袍)を皇室から下賜され、次の天皇交替までこの聖徳太子像に着用させるというものです。今の像が着用しているものは平成6年から着用していて、今回の天皇即位に際しても、秋篠宮の立皇嗣の礼が11月に終了し、天皇がこの黄櫨染の御袍を使う全ての儀式が終了したので、今後数年かけて調整を行い広隆寺に下賜されるものと思われます。なお、この制度は(記録及び現存遺品では)室町時代後期から続いているそうです。
https://asitaaozora.net/travel/post-698/
3点目が来年の聖徳太子と法隆寺展で東博に出品される像で、記録から広隆寺像の翌年の保安二年1121に作られたと考えられています。像内に銘文はありませんが、広隆寺像との納入品の共通性(広隆寺像では太子の本地仏である救世観音を線刻した鏡像、法隆寺像では須弥山上に立つ奈良時代の救世観音)もあり、聖徳太子没後500年を意識した法隆寺・広隆寺の連動した事業と推定されています(太子没年である法隆寺金堂本尊釈迦三尊の銘623年の500年後が1123年)。なお、これらの平安時代後期の聖徳太子信仰は四天王寺や法隆寺、広隆寺など太子ゆかりの寺を中心にしたものですが、その後鎌倉時代中期以降には西大寺の叡尊や浄土真宗などでの聖徳太子信仰が大いに高まりを見せ、聖徳太子像も全国的に数多く作られるようになっていくので、これらの平安時代の像はその原点と言えます。
その他の出品作品では法隆寺金堂東の間の薬師如来に注目していて、普段は遠くからしか見られない像を間近で見られます。そして、昭和資材帳作成に伴う調査で銘文にある制作年607年が事実ではなく、670年の天智火災以降の偽古作ということがほぼ定説となってきたので、623年止利仏師作の釈迦三尊との違いを自分の目で確かめたいと思っています。
ついでに別項目のコメントもここに書いておきます。
平凡社ライブラリーの黄金伝説、図書館で借りてきました。手持ちの新泉社 黄金伝説抄は数人の聖人だけの抄訳ということだけでなく、伝記の内容も一部分しか訳されていないというものがありました(例えば人文書院・平凡社版第4巻の一万一千童貞殉教女の部分が新泉社版ではその一部のみをウルスラ伝として載せているだけ)。絵の元ネタの資料として使うには新泉社版は不十分なので、今後どうするか検討中です。
河鍋暁斎の美術館ですが、20年ぐらい前に蕨市に住んでいたことがあり、その時は駅の反対側だったので歩くと30分ぐらいの距離でした。車では時々美術館の前を通っていたのですが、近くなのでいつでも行けると思っているうちに引っ越すことになって、結局一度も行かないで終わってしまいました。少し後悔しています。
ラファエロの件はお勧めの本もあるので、あらためてコメントします。
コメントありがとうございます。
カラヴァッジョ展の再延期または中止??確かにイタリアを始めとするヨーロッパの状況、そして日本の状況の改善なくしては、そういうことになるかもしれない。今まで考えないようにしていたのですが、年末年始を超えてこの傾向が続くようならば、そういうことを覚悟しておかなければならないですね。
「聖徳太子と法隆寺展」の情報ありがとうございます。この分野は完全に受け身で、開催前後に公式HPなどで出品情報を確認して、行く日を決めて、あとは会場で楽しむ程度なので、このような見どころの壺情報はありがたく思います。国宝聖徳太子及び脇侍像と、薬師如来を注目して観たいと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。
名古屋ではドアラの100万分の1くらいの知名度だと思うので、ゆっくり見られそうで楽しみです(^-^)
コメント欄を拝見したのですが、蕨市のキョーサイ記念館、ずいぶん前ですけれど一度行ったことがあります。
駅前の交番で手書きの地図をいただき、「とにかく歩くとすごく遠いよ~」と教えていただきました。
20世紀のことなので、スマホなんて当然ない、どころかメチャクチャ重そうなバッテリーがついた、A4サイズくらいの巨大ケータイを一部の超忙しい人だけが持っていた頃なので、今とは全然事情が違うとは思いますけれど。
で、下手をすると遭難するかもと5回くらい心配した後にようやくたどり着いてみれば、カエルの置物が館内いたるところに飾ってある。ついでにキョーサイの絵も数点展示してある、とかそんな感じだったように記憶しています。キョーサイとカエルは縁が深いのは分かるけどさあ(^_^;)
でもこれも今はずいぶん変わっているかもしれません。「足でかせいでナンボ」ですから(死語)。
コメントありがとうございます。
美術館ホームページを見ましたが、まだ掲載されていないですね。余談ですが、1/15開幕の企画展は、現時点では予定どおり開催するようです。今の時期、美術館巡りは悩ましいところです。
蕨市の美術館は、駅から徒歩20分の住宅地のなからしいので、確かに迷いそう。今なら重要な観光資源として案内板も整備されていそう。そのうち行きたいと思います。