泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展Ⅳ
不変/普遍の造形
住友コレクション中国青銅器名品選
2023年1月14日〜2月26日
泉屋博古館東京
泉屋博古館東京(2021年4月に泉屋博古館別館から名称変更)を、2022年3月のリニューアルオープン後、初訪問する。
リニューアルオープン記念展の第4弾となる中国青銅器名品選の会期末に滑り込んだもの。
本展では、ほぼ全ての展示品が撮影可能。
お目当ての《虎卣(こゆう)》はその1として記事掲載済み。その2として《虎卣》以外の気になる青銅器6点の画像を掲載する。
中国青銅器の世界にも疎いため、とっつきやすい動物の文様モチーフの器が中心となる。
《蛙蛇文盤(あだもんばん)》
春秋前期/BCE8-7c
H 14.9cm/D 37.2cm/W 6.8kg
盤は儀式の際に身を清めるために使用する水器の一種で、匜から注がれた水を承ける。見込みの部分には浮彫調で1匹のカエルの姿をあらわすが、その周囲にはとぐろを巻いたへビの姿が。首をもたげ、いまにも後ろから噛みつきそうだが、カエルはそれに気づいた様子もなく、呑気に泳いでいる。こうしたユーモラスな文様は殿周青銅器のなかでもまれ。
《蝉文俎(ぜんもんそ)》
殷後期/BCE12-11c
H 18.8cm/L 41.8cm/W 4.0kg
俎は儀式の場で肉を盛り付けるための台を指すが、肉を切るためのまな板としても使用されていたらしい。2か所についた脚には、大きく丸い目が特徴の饕餮文(とうてつもん)が飾られ、左右には小さな手が生えている。上面には蝉や龍の文様も飾られており、特に蝉は死者が暮らすと考えられた地中から成虫があらわれるため、再生観念の象徴として文様化されていた。
《鴟鴞尊(しきょうそん)》
殷後期/BCE13-12c
H 22.4cm/D 6.1cm/W 1.5kg
鴟鴞の立像をあらわした酒器。頭の上にピンと立った耳のようなものが目を引くが、これは羽角と呼ばれる部位で、耳はその下に小さくあらわされている。こうした特徴は野生のミミズクと共通し、当時の工人たちが実物をよく観察していたことを物語る。可愛らしくデフォルメ化された造形のなかにも、確かなリアリズムが光る興趣に富んだ作例。
《鴟鴞卣(しきゅうゆう)》
殷後期/BCE12-11c
H 29.1cm/L 15.0cm/W 4.4kg
二羽の鴟鴞が背中合わせとなった形状の卣。蓋の両端には上向きに反り返った嘴がつき、大きくぎょろっとした目が特徴的にあらわされる。器を見渡すと、そのほかにもさまざまなモチーフが全体を覆い、特に鴟鴞の死角にあたる部位には必ずといってよいほど眼のついた文様があらわされているのは、鴟鴞の性質を考えるうえで大きなヒントとなる。
《戈卣(かゆう)》
殷後期/BCE12c
H 27.2cm/L 15.2cm/W 3.1kg
おなじ鴟鴞卣の一種だが、蓋の内側と内底に「戈」という銘文がほどこされているため、この名で呼ばれている。前出2器にくらべてさらに丸みが強調され、古代の悪鳥たる鴟鴞のイメージとはかけ離れているようだが、やはり眼をもった モチーフが配されているのは、背中合わせの鴟鴞とともに、邪霊の侵入を360度見張る意味合いがあったのだろう。
《螭文方炉(ちもんほうろ)》
春秋前期/BCE8c
H 20.2cm/L 16.4cm/W 3.8kg
ミニチュアハウスのような形の器で、扉は開閉し、内部に火種を入れて食べ物を温めることができた。扉の両側には門番が立っているが、脚が異様に短くあらわされている。実は古代中国では、門番は足切りの刑を受けた人が務めることが多かった。楽しげな第一印象とは裏腹に、ぞっとするような恐ろしさが半開さの扉の隙間から顔を観かせている。
【本展の構成】
全97点の展示。
1 神々の宴へようこそ
2 文様モチーフの謎
3 古代からのメッセージ - 金文 -
4 中国青銅器鑑賞の歴史