デトロイト美術館展
大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち
2016年10月7日~17年1月21日
上野の森美術館
豊田、大阪を巡回し、いよいよ東京にやってきたデトロイト美術館展。想像を遥かに超える充実の展覧会である。
出品点数は52点と控えめだが、外れがない、というか、見応えのある作品ばかり。範囲を絞って、横に行くことはほぼない。画家名の網羅は敢えてしない。見せるものをしっかり観せる。厳選である。
最初の部屋は、第1章「印象派」。
左壁にはルノワール3点、正面壁にはドガ5点、右壁にはクールベ、ピサロ、モネ各1点。
それらを受け止めるような形でもう一つの壁に配置されるのは、アカデミック系画家の2点。カロリュス=デュラン《喜び楽しむ人々》とアンリ・ジェルヴェクス《パリのカフェにて》。初めて名を聞く両画家が、印象派の巨匠たちをしっかりと受け止め、返している。感心の7画家13点。
次の部屋は、第2章「ポスト印象派」。7画家11点。
順番逆転だがまず目に入ってしまうのが、「冷ややかなエロティシズム」ヴァロットンの裸婦像《膝にガウンをまとって立つ裸婦》。
ゴーギャンが《自画像》1点なのは残念だが、セザンヌが4点。大サイズの《画家の夫人》が特に素晴らしく、小サイズの《水浴する人々》や《サント=ヴィクトール山》も見応え充分。
1階最後のスペースには、ゴッホ作品2点のみを置く。1887年のパリ時代の《自画像》。1890年の終焉の地での《オワーズ川の岸辺、オーヴェールにて》は、ボートの描写と人物が印象的。
2階へ。
第3章は「20世紀のドイツ絵画」。
実は本章が本展のメインかもしれない。ドイツ表現主義の画家たち。私的にはツボ。
カンディンスキーは置いといて(といっても、初期や後期作品ではなく、1910年代の色彩豊かな抽象絵画作品が選ばれている)、ノルデ《ヒマワリ》(←ゴッホへのオマージュらしい)、キルヒナー《月下の冬景色》、ヘッケル《女性》(←久々ぶりにこの画家の優品を観た)、ベックマン《自画像》、オットー・ディクス《自画像》(←デューラー系人物画)、ココシュカ《エルベ川、ドレスデン近郊》《エルサレムの眺め》など、充実の10画家12点。ここまで見応えのあるドイツ表現主義作品が並んだことは、近年ないだろう。
第4章は「20世紀のフランス絵画」。章名にかかわらず、極めて限定された7画家16作品。
デュフィ、グリス、ルオーの露払いのあと、最後の部屋に移ると、モディリアーニ3点、スーティン1点(←《赤いグラジオラス》は素晴らしい)、ピカソ6点(代表各期から1点ずつ)。そして驚きのマティス3点は、全て1910年代の制作。《窓》も素晴らしいが、《コーヒータイム》が私のツボ。マティスの魅力を満喫する。
本展は、月曜・火曜日限定にて、全ての作品の写真撮影が可能。
ただし、一部の作品(第3章の5作品と第4章のルオーとピカソ全作品の計12作品)は、SNSをはじめとして、不特定多数への公開が禁止されている。
祝日に重なっても可能とのことなので私も行きたいが、撮影にばかり気が取られそうなので、まずは通常日に訪問したところ。ドイツ表現主義作品の多くが禁止対象なのは残念である。