東京でカラヴァッジョ 日記

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「東北へのまなざし 1930-1945」展(東京ステーションギャラリー)

2022年08月02日 | 展覧会(その他)
東北へのまなざし 1930-1945
2022年7月23日〜9月25日
東京ステーションギャラリー
 
 1930年代以降の日本は、太平洋戦争へと傾斜を深める一方で、写真などのグラフィカルな視覚文化が到来し、建築や生活文化が変貌するなど、モダンとクラシック、都会と地方の両極で揺れ動いた時期でもありました。そしてこの頃、
 
 先端的な意識をもった人々が、東北地方を訪れ、この地の建築や生活用品に注目する。
 民藝運動に呼応するように、郷土玩具を収集する動きが広まる。
 東北出身者たちが、故郷の人々と暮らしを見つめ直し、戦中期の記録を残す。
 
 本展は、こうした東北に向けられた複層的な「眼」を通して、当時、後進的な周縁とみなされてきた東北地方が、じつは豊かな文化の揺籃であり、そこに生きる人々の営為が、現在と地続きであることを改めて検証するものです。
 
 
 【本展の章立て】
1 ブルーノ・タウトの東北「探検」
2 柳宗悦の東北美学
3 郷土玩具の王国
4 「雪調」ユートピア
5 今和次郎・純三の東北考現学
6 吉井忠の山村報告記
 
 
 ドイツの建築家ブルーノ・タウト(1880-1935)。 
 1933年に来日し、3年半滞在する。
 タウトの秋田旅行を、年表形式により、壁一面を大きく使って紹介する。
 地元の版画家・勝平得之のコーディネートによる秋田旅行。
 タウトによる回想文と、その回想文に対応する勝平の回想文を並べるとともに、回想文に関連する秋田の生活用品が添えられる。
 
 
 福島県出身の画家・吉井忠。
 シュルレアリスム絵画への弾圧、東北地方の困窮、日中戦争以後の「地方」を取り巻く政策。
 時局に添いながら、新たな表現を模索する吉井は、1941年から3年かけて、東北取材旅行を行う。
 ということを、2021年の板橋区立美術館「さまよえる絵筆ー東京・京都 戦時下の前衛画家たち」展にて、油彩2点とスケッチ21点などの展示により見た。
 本展の展示内容は、板橋とほぼ同じ。油彩3点とスケッチ前後期あわせて25点で、少し展示数は増えている。
 
 吉井による東北のモナリザ
《佐々木カヨ 金沢村にて》1942年11月23日
 金沢村は、岩手県にかつてあった村らしい。
 
《毛馬内風景》1943年
 毛馬内は、秋田県鹿角郡にかつてあった町らしい。
 本作関連のスケッチは、板橋では隣りに展示されていたが、本展では離れた位置にある。
 
 
 青森県出身の今和次郎・純三の兄弟による東北考現学。
 特に、今純三の『青森県画譜』をおもしろく見る。
 
 
 そのほか、農林省が1933年に山形県新庄に設置した積雪地方農村経済調査所(通称「雪調」)の活動や、商工省が招聘したフランスのデザイナー、シャルロット・ペリアン(1903-99)の活動などを見る。
 
 
 「彼らは何を見ようとしたのか-」
 バックグラウンドが分からない私にとっては、なんとも落ち着かない、鑑賞の難しい展覧会である。


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