東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

エル・グレコ展(東京都美術館)

2013年04月07日 | 展覧会(西洋美術)

エル・グレコ展
2013年1月19日~4月7日
東京都美術館


最終日近く、エル・グレコ展を訪問。
既に何回か訪問していたが、最後にもう一度51点のエル・グレコを堪能したかった。


肖像画と宗教画に大きく分かれる。


まず、宗教画について。

なんといっても、347cm×174cmの大祭壇画「無原罪のお宿り」(サン・ニコラス教区聖堂)に尽きる。

エル・グレコの素晴らしさは、このような大祭壇画において、最も発揮されるのだろう。
床に座り込んで祭壇画を仰ぎ見る、という鑑賞スタイルも、会期終盤ではすっかり定着化していた。

それ以外の宗教画については、イタリア時代の「受胎告知」(ティッセン=ボルネミッサ美)や1605年頃の「羊飼いの礼拝」(コルプス・クリスティ学院総大司教美術館、バレンシア)など、印象深い作品ももちろんある。
ただ、大祭壇画の縮小バージョンのレプリカや、人気作品の再作成が多い。そうなると、度合いの差はあれ、どうしても工房が関与してくる。本展のキャプションに、はっきりと、工房作、あるいはエル・グレコではない、と明記されている作品もあった。
とはいえ、私が押す大祭壇画についても、大祭壇画であるからには、工房の関与はあるだろう。
逆に、エル・グレコ工房の活発な活動が生み出した膨大な作品、という観点から見れば、それはそれで興味深いことである。


次に、肖像画について。

純粋な肖像画「1-1 肖像画家エル・グレコ」のほか、「1-2 肖像画としての聖人像」、さらには、宗教画としかいえない「1-3 見えるものと見えないもの」まで含む。要は、地下1階フロア全部を指す。

個人的には、大祭壇画「無原罪のお宿り」と同じくらい、この「1-1 肖像画家エル・グレコ」が楽しかった。

◇芸術家の自画像(メトロポリタン美)
 その前を立ち去りがたかった作品。

◇修道士オルテンシオ・フェリス・パラビチーノの肖像(ボストン美)。
 エル・グレコ最晩年の肖像画。ボストン美はいい作品を持っている。

◇燃え木で蝋燭を灯す少年(コロメール・コレクション)
 2010年国立西洋美でカポディモンテ美所蔵の別バージョンも見た。2バージョンも見れるとは幸せなこと。

◇白貂の毛皮をまとう貴婦人(グラスゴー美)
 一見エル・グレコ作に見えない。実際に異議も差し挟まれているらしい。作者は誰であれ、この作品が極めて魅力的なのは確かである。

◇ディエゴ・デ・コバルービアスの肖像(エル・グレコ美)
 既に故人であったモデル、別の画家による肖像画を元に描かれた。その元となった肖像画も参考出品として隣に展示されている。この肖像画からどうしてエル・グレコのような肖像画が生まれるのか、実に不思議である。

◇フリアン・ロメロと守護聖人(プラド美)
 206cm×127cmの大型作品。これも一見・グレコ作には見えないし、やはり異議も差し挟まれているらしい。そのことには関係なく、故人を悼む奉納画として、よい作品だと思う。


「1-2 肖像画としての聖人像」も面白い。

◇聖ヒエロニムス(王立サン・フェルナンド美術アカデミー)
 ドイツ表現主義そのもの、としかいいようのない描写。

◇聖パウロ(個人蔵)
 若く、目がクリクリの聖パウロ。背景が普通の室内空間であることが新鮮。


「1-3 見えるものと見えないもの」では。

◇悔悛するマグダラのマリア(ブダペスト国立美)
 存在感のあるマグダラのマリア。実に素敵な作品である。
 このコーナーには他にもお気に入りはあるが、省略。


しかし、不思議なのは、このようなエル・グレコの極めて異質な作風が、トレドで単に受け入れられたのみならず、トレドをイメージづけるほどの大繁盛となったのだろう。そして、今も多数の作品が街を彩っているらしい。


来年2014年は、没後400年。スペインでは、いろんな大イベントが開催されることだろう。
いつの日か、プラド美、そしてトレドに行って、エル・グレコの大祭壇画を堪能し、上述の不思議に思いを巡らせたい。 



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