芸術新潮2021年11月号の特集「5人の達人たちとゆく メトロポリタン美術館」を眺める。
「これまでの同種の展覧会に比べて、明らかにヌード画が少ない」
1達人からの大文字コメントが記載されている。
本当なのだろうか。
確認してみる。
まずは、メトロポリタン美術館展2021-22 の「ヌードの絵」。
【ルネサンス(15-16世紀)絵画】
ティツィアーノ
《ヴィーナスとアドニス》
1550年代、106.7×133.4cm
ルーカス・クラーナハ
《パリスの審判》
1528年頃、101.9×71.1cm
【バロック・ロココ(17-18世紀)絵画】
グイド・カニャッチ
《クレオパトラの死》
1645-55年頃、95×75cm
フランソワ・ブーシェ
《ヴィーナスの化粧》
1751年、108.3×85.1cm
【写実主義・印象派(19世紀)絵画】
クールべ
《水浴する若い女性》
1866年、130.2×97.2cm
ジャン=レオン・ジェローム
《ピュグマリオンとガラアテ》
1890年頃、88.9×68.6cm
女性ヌードの絵は6点(私的基準)。
一方、男性ヌードの絵は、というと無い。
近いところを挙げると、その妖しさからこの1点か。
カラヴァッジョ
《音楽家たち》
1597年、92.1×118.4cm
6点、出品点数比率で約10%は少ないのだろうか。
同じように15-19世紀の西洋美術を対象とした展覧会としては、近年だと、2020年の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」がある。
同じ私的基準で数えると、LNG展の「ヌードの絵」は、ティントレット、ボッティチェッリとアングル、女性を描いた3点。
出品点数61点中の3点、比率は約5%。
LNG展の方がMET展よりも少ないこととなるが、開催時期が近いので、同じ傾向を示したということなのかもしれない。
もっと遡らなければならない。
どの展覧会が良いか。
とりあえず、同じメトロポリタン美術館展ということで、約50年前のメトロポリタン美術館展を見る。
メトロポリタン美術館展
1972年8月10日〜10月1日(東京国立博物館)
1972年10月8日〜11月26日(京都市美術館)
出品は、計115点。古代近東14点、エジプト10点、ギリシャ・ローマ18点、中国3点、ヨーロッパ中世7点、版画20点、ヨーロッパ絵画34点、ヨーロッパ彫刻2点、アメリカ絵画7点と、2012年の東京都美術館「メトロポリタン美術館展」と同様に幅広い時代・分野を対象としている。
出品構成は異なるし、また、ヨーロッパ絵画は、2021-22年版と比べ、出品点数が約半分、時代もティントレットからピカソ・ルソー・ボナールまでの16-20世紀初頭とずれていることは承知の上で、確認する。
クールべ
《水源》
1862年、120.0×74.3cm
カミーユ・ピサロ
《森の水浴》
1895年、60.3×73.0cm
ゴーギャン
《ふたりのタヒチの女》
1899年、94.0×72.4cm
3点。すべて女性。比率は10%弱で、2021-22年版と変わらない。ヨーロッパ彫刻2点(ロダンの男性像、マイヨールの女性像)をあわせると比率は約14%。それほどの差はない。
結局、メトロポリタン美術館展2021-22が「これまでの同種の展覧会に比べて、明らかにヌード画が少ない」のか、今のところ確認できていない。
記事中のご指摘の件ですが、今回の展覧会では、
ジェンダーなどの問題から裸体画を
少なくしているという情報を目にしました。
大変申し訳ないのですが、どの媒体か忘れてしまいました。
来春ようやく開館する大阪中之島美術館の所有作品の目玉は、
モディリアーニの『髪をほどいた横たわる裸婦』ですが、
同館で“横たわる裸婦の系譜”なんていう企画展をしていただけないか…
と淡い期待を抱いているのですが、
昨今の情勢から困難なのかもしれないです。
簡単ですが、取り急ぎご報告いたします。
コメントありがとうございます。
「横たわる裸婦の系譜」展、私も見たいです。でも、おっしゃるとおり厳しいかも。今だったら(財布の問題は別として)あの作品を購入すること自体も厳しいかもしれません。
大阪中之島美術館の「モディリアーニ展」には行きたいと思っています。このご時世に、どの程度広く海外所蔵者から作品を借りることができるのか、一部名前がでている作品が予定どおり来日してくれるのか、注目しているところです。感染状況が落ち着いていることを祈るばかりです。
また、開館記念の「超コレクション展」も気になるところです。
引き続きよろしくお願いいたします。
当方コメントにお返事いただき、有り難う御座います。
「超コレクション展」ですが、意外と知られていない?と思うのが、白隠です。
アルチンボルド、モディリアーニ、マグリットや「群」として所蔵している佐伯祐三などは著名ですが、案外知られざるものかも知れません。
白隠や佐伯祐三などは、企画展の計画があるのかもしれません(と勝手に期待)。
「モディリアーニ展」は、2008年に東京・大阪の「モディリアーニ展」、名古屋・盛岡・姫路の「アメデオ・モディリアーニ展」の2つの展覧会がありましたが、現時点の出品予定作を見ると、後者に近い印象です。
国内の傑作・優品+少数の海外所蔵作といったところでしょうか。
なお、2022年7月16日から7月18日までの3日間は、神戸市博「スコットランド国立美術館展」、大阪市美の「フェルメール展」、中之島美「モディリアーニ展」の梯子が可能です。
中之島美術館ですが、私は大阪市のコレクションを総合する「大美術館」を期待していました。
大阪市立美術館の田万コレクション、阿部コレクション、東洋陶磁美術館の安宅コレクション、歴史博物館の森派(森狙仙などの)や考古資料に、中之島美術館のコレクションを包括的に見せる施設をJR大阪駅北側の再開発エリアに建設してほしかったと思っていました。
大阪市美のコレクションは、来年サントリー美術館で展覧会開催予定ですので、お楽しみいただけると思います。
宋元絵画が非常に充実しています。
記事内容と大幅にずれてしまいました。お許しください。
コメントありがとうございます。
中之島美術館コレクションにかかる私の認識は、全くおっしゃるとおりで、白隠のことは知りませんでした。
モディリアーニ展に行くことがてきたら(梯子はさすがに難しいですね)、あわせてコレクション展示室もしっかり見たいと思います。
サントリー美術館の「大阪市立美術館名品展」には注目していました。中国絵画のことはよく分からないながらも、充実したコレクションとの評判を聞いていたので、近代日本画とともに楽しみにしているところです。