東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

【後期】「日本の素朴絵ーゆるい、かわいい、たのしい美術ー」展(三井記念美術館)

2019年08月21日 | 展覧会(日本美術)
日本の素朴絵
ーゆるい、かわいい、たのしい美術ー  
2019年7月6日〜9月1日
三井記念美術館

 
   後期入り(8/6〜)した「日本の素朴絵」展を訪問。
 
   素朴絵の横綱といえば、《つきしま》&《かるかや》。
   《つきしま》は通期展示(場面替あり)であるが、《かるかや》は前期限りの出品で後期は姿を消している。
 
 
   以下、特に楽しんだ作品。
 
 
《つきしま絵巻》2巻
室町時代・16世紀
日本民藝館
 
   全2巻10場面の絵巻。
   前期訪問日は上巻・下巻ともに冒頭の2場面が公開。
   今回の後期訪問日は、上巻は第3場面が、下巻は最後の2場面が公開。
 
【上巻・第3場面】
   浄海(出家した平清盛)は、進まない築島工事に対し、陰陽師の占い結果を受け、三十人の人柱を立てることとする。街道に人を置き、そこを通る旅人を捕まえ投獄する。
 
【下巻・第9場面】
   人柱の日。籠で運ばれる人柱。悲しむ人柱の縁者たち。陰陽師は人柱の代わりに一万部の法華経を沈めることを進言するが、浄海は聞き入れない。父親の身代わりになることを懇願する娘夫妻。浄海は父親を解放し、残る二十九人は予定どおり沈めることとする。その時、浄海に仕える童の一人(松王健児)が、一万部の法華経とともに自らが三十人の人柱の身代わりになることを申し出る。

【下巻・第10場面】
   再度の人柱の日。松王は、船に乗せられ法華経とともに沈められる。
 
 
 
《うらしま絵巻》1巻
室町時代・16世紀
日本民藝館
 
   前期訪問日は、本絵巻の名場面、箱から立ちのぼった白い煙がカーブして、太郎の背後、首の付け根あたりに突き刺さる場面の公開。
   後期訪問日は3場面の公開。楽を奏でる乙姫と太郎、黒い箱を渡す乙姫と受け取ろうとする太郎、見送る乙姫と黒い箱を持つ船上の太郎(漕ぎ手不在)。
   うち、2場面で、乙姫の長い黒髪の先っぽが動物の尻尾のように見えるように描かれている。単に着物で途中が隠されているだけであるが、この乙姫の正体は狐狸か?と一瞬戸惑わせる。
 
 
 
《おようのあま絵巻》2巻
室町時代・16世紀
サントリー美術館
 
   後期は上下巻とも1場面の公開。
   一人暮らしの老僧と薬や扇、香などの日用品を商うおよう(御用)の尼という老女の物語。
   身の回りの世話をする若い娘を取り持つとの尼の言葉を信じ、女性と一夜をともにするが、翌朝見ると、女性はおようの尼本人。
   ともに念仏を唱える老僧とおようの尼が描かれる最終場面。2人のこの後の人生は悪くはなかったのではないか、と思わせる。
 

 
   「立体に見る素朴」章は、全点通期展示。改めて見てもその素朴表現は楽しい。
   特に、狛犬シリーズ。
   《獅子・狛犬》1対(室町時代・1419年、和歌山・河根丹生神社)
   《狛犬(阿形)》(17世紀、愛知県陶磁美術館)
   《狛犬(吽形)》(1751年、愛知県陶磁美術館)
 
   また、展示室2の彫刻《神馬・口取人形》(鎌倉時代・13世紀、滋賀・御上神社)のうち「神馬(しんめ)」の「小型の日本在来種の馬を的確に表現」した造形(=素朴表現とは真逆の造形)が魅力的。
 
 
 
   展示室3の《地獄十王六道図》(室町時代・16世紀、滋賀・御上神社)は、全21幅のうち前期3幅、後期3幅の展示。地獄で苦しむ人たちも描かれる後期展示の2幅、その人たちの表情は、責苦に苦しむ人たちとして描かれていない。恬淡とした表情というか、修行に臨む祈りの表情というか、である。
 
 
 
   展示室5の《漂流記集》(江戸時代・19世紀、西尾市岩瀬文庫)。
   前期は、1803年に常陸国(茨城)に漂着した舟と、その舟にただ一人乗っていた異国の女性が描かれた頁の公開。
   後期は、普通の異人さんたちと、普通の大きな帆船が描かれた頁の公開。
   前期の公開頁が圧勝。
 
 
 
【本展の構成】
・立体にみる素朴(1・2・7室)
・絵巻と絵本(4室)
・庶民の素朴絵(4・5室)
・素朴な異界(3・5室)
・知識人の素朴絵(6・7室)
 
 
 
   次は、京都の龍谷大学龍谷ミュージアムに巡回する(9/21〜11/17)。京都会場限りの出品作もあるようだ。行きたくなるなあ。


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。