華麗なる英国美術の殿堂
ロイヤル・アカデミー展-ターナーからラファエル前派まで-
2014年9月17日~11月24日
東京富士美術館
1768~1918年の150年間を対象に、ロイヤル・アカデミー会員の作品が、1人1点(基本※)展示される。
章立ては、次のとおり。
1章 設立:名声への道 1768-1837
2章 国家的地位の確立 1837-1867
3章 名声と繁栄 1867-1895
4章 モダンの受容:黙認と妥協 1895-1918
5章 アーティスト教育
章の区切りの年は、各章始めのキャプションによると、ロイヤル・アカデミーの拠点の移転を踏まえての設定らしい(例外:1895年、これは美術の動向のようだ)。
以下、気になった作品を展示順に。
No.22 トマス・ロレンス≪自画像≫
肖像画家。1820年に会長。56歳でこの肌はありえない。
No.09 フューズリ≪大蛇ミズガルズと闘う雷神トール≫
ドイツ系スイス人。英国で活躍。神話や物語の場面をドラマティックに描く。本作も題名通りの場面。
マイ・セカンド・ベスト。
No.12 ウィリアム・ホッジズ≪ベナレスのガート≫
クック船長の第2回航海探検(1772-75)に画家として参加。
本作は、インド滞在経験(探検とは別)をもとに描いたインドの風景。
1787年作。オリエンタリズム要素をほとんど感じない風景画。
No.15 ターナー≪ドルバダーン城≫
1800年作。後年と比べると素直な色彩の風景画。
No.16 カンスタブル≪水門を通る舟≫
今回のマイ・ベスト。素晴らしい!
中心は、遠景の教会。
前景には大きく、水門を操作する男と水門を通ろうとする舟。川、植物、犬。
教会と並びで画面の中心を横に薄く伸びる田園の風景。多くの働く人や家畜が点在。右隅には舟、橋、家。舟には人が乗っていて、橋には人が渡っていて、家には窓から人が顔を出していて。それらが小さく描かれている。
左上にはこれからの荒天を示す雨雲が既にやってきている。
可視圏内での世界の広がり。カンスタブルに目覚めそうである。
No.30 ジョン・フレデリック・ルイス≪カイロのカフェの入り口≫
オリエンタリズム作品が3点並ぶなかでは、カイロの族長をモデルとした本作。カフェの入り口に立つ。
東方・中東を題材とした水彩画で知られる画家(出品作は油彩画)。
No.38 ミレイ≪ベラスケスの想い出≫
ベラスケス≪王女マルガリータ≫にインスピレーションを得た作品。
No.37 ルイーズ王女≪ヴィクトリア女王≫
四女による肖像。大理石彫刻。
No.34 タデマ≪神殿への道≫
101.5cm×52.0cmと決して大作ではないが、今まで私が見た記憶のあるタデマの作品では一番大きいサイズ。
礼拝用の小像を売る若い女性。足元に敷かれた絨毯は、生前の獲物の形を残している。
No.42 ウォーターハウス≪人魚≫
2013年の「夏目漱石の美術世界展」でも来日。キャプションでは三四郎の一節も紹介。
No.41 ソロモン・ジョセフ・ソロモン≪聖ゲオルギウス≫
画面一杯にリアルに描かれた、堂々たる体格の戦士たる聖ゲオルギウスと美しい女性たる王女。
本主題の絵画は、総じてコミカル系の描写に慣れていたので、少しとまどう。
No.43 オーチャードストン≪ノース・フォアランドにて≫
一人で崖の上に立っているのが好きだという娘を、その状況でモデルとした作品。
No.60 ヘンリー・ハーバード・ラ・タング≪香水用のスミレ≫
香水用のスミレの花弁を籠から地面に置いた綿生地に落とす若い女性。
花弁のスミレ色、女性の衣装の赤色が印象的な、明るい色調の作品。
No.62 チャールズ・シムズ≪クリオと子供たち≫
歴史の女神クリオが子供たちに読み聞かせをしている場面。
なお、画家は、1915年第一次世界大戦で長男を亡くし、戦争が無垢の未来の世代を冒涜したと強く思い、女神の持つ巻物に血の色を示す赤い染みを付け加えたという。
本展は、石川(済)、東京のあと、静岡市美術館、愛知県美術館に巡回する。
※例外:カンスタブルが1点+小品3点、クラウセンが1点+小品4点、サージェントが2点。
なお、出品作にライト・オブ・ダービーやスタッブス(馬の画家)が含まれていないのは残念。会員ではなかったのかなあ。