カラヴァッジョ展
2016年3月1日~6月12日
国立西洋美術館
オラツィオ・ボルジャンニ
《ダヴィデとゴリアテ》
1609-10年頃
マドリード、王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館
本展の第6章「斬首」。
カラヴァッジョの《メドゥーサ》の第1ヴァージョンのほか、斬首をテーマにした気持ちよろしくない作品が並ぶが、そのなかでもひときわ気持ちよろしくない作品が本作。
ゴリアテ斬首中で血がほとばしる。残忍。悪趣味。
本作は、スペインの所蔵。大半の出品作品がイタリアから(一部は日本)なのに、わざわざスペインから持ってくるとは、企画者は残忍性MAXのこの作品に対する極めて強いこだわりがあるのだろう。
2001年のカラヴァッジョ展でも、オラツィオ・ボルジャンニの「グロい」作品が出品されている。
いわば、日本のカラヴァッジョ展において「グロい」部門を一手に引き受けているカラヴァッジェスキである。
《聖エラスムスの殉教》
1612-14年頃
ローマ、マリーニコレクション
(画像は部分)
3世紀のアンティオキア司教エラスムスの殉教場面。
ローマ皇帝の命で、死刑執行人が聖人の内蔵を引き出している。専用の?巻き取り器具まである。死刑執行人は、伝統的な古代ローマ人としてではなく、トルコ人あるいは回教徒として描かれているのが、17世紀初頭当時の情勢を物語る。
オラツィオ・ボルジャンニは、1574年ローマに生まれる。初期はパレルモで活動。1598~1605-6年頃までスペインに滞在。ということは、ローマ美術界の寵児カラヴァッジョとは直接の接触はなさそうである。ローマに戻り、カラヴァッジョ様式の影響を受ける。1616年死去。
画家は、残忍専門ではない。むしろ「深い信仰心に裏打ちされた制作姿勢は、カラヴァッジョ様式の持つ宗教的側面をより発展させることに貢献した」と評される画家である。現に2001年のカラヴァッジョ展でも、上記作品以外に、《死せるキリスト(ピエタ)》と《自画像》と、雰囲気の異なる計3点が出品されている。
当時の西洋は、国家権力の執行としての血、信仰心の勝利としての血、そして社会生活の暴力性の発露としての血と、現実が血生臭い世界であって、それに見合う刺激が絵画に求められたのだろう。