ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
2020年3月3日〜6月14日
→開幕日未定
国立西洋美術館
ムリーリョ
《窓枠に身を乗り出した農民の少年》
1675-80年頃、52×38.5cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
(本展出品作)
単なる少年の半身像。
特に背景もなく、最下部に描かれた窓枠のみで、身を乗り出しているポーズ。
少年の笑顔を除けば、特筆すべきことのない絵画。
と思っていたら、違った。
対作品となる少女の像が存在するという。
ムリーリョ
《ショールを持ち上げる少女》
1670年代、個人蔵
少女は、顔を覆うショールを持ち上げ、少年に流し目を送る。
少年は、自分より2〜3歳年上の少女のそんな姿を見て、笑顔をみせる。
少年少女カップルが大人の世界の真似事をしている微笑ましい場面なのか、当時のピカレスク小説など別に何らかの文学的典拠に基づくのか、そんな作品だったのである。
ムリーリョによる子どもをモティーフとした風俗画は、大変好みである。
近年だと、2015年のルーヴル美術館展で次の作品が出品され、その素晴らしさに感嘆した記憶がある。
ムリーリョ
《物乞いの少年(蚤をとる少年)》
1647-48年頃
ルーヴル美術館
ムリーリョの子どもを描いた風俗画は、ムリーリョの生前から19世紀にかけて諸外国で人気があったという。
そもそもスペイン美術は、19世紀のナポレオン戦争までは諸外国にその魅力を知られていなかったというが、その例外がムリーリョ(の風俗画)、その人気のおかげで現在ではスペイン国内には一枚も所蔵が確認されないほどであるらしい。そもそも外国向けの土産作品として制作していたという話もある。
特に英国やドイツで大人気だったようで、ロンドンのダリッジ絵画館やミュンヘンのアルテ・ピナコテークにおけるムリーリョ作の子ども風俗画コレクションは特段充実しているようである。
ムリーリョ
《3人の少年》
1670年頃、168.3x109.8cm
ダリッジ絵画館
ムリーリョ
《アルゴージャ遊び》
1665-70年頃、165.2×110.5cm
ダリッジ絵画館
ムリーリョ
《花売りの少女》
1665-70年頃、120.7×98.3cm
ダリッジ絵画館
ムリーリョ
《ブドウとメロンを食べる2人の少年》
1645年頃、145.9×103.6cm
アルテ・ピナコテーク
ムリーリョ
《サイコロ遊びをする少年たち》
1675-80年頃、146×108.5cm
アルテ・ピナコテーク
ムリーリョ
《果物売りの少女》
1670-75年頃、144.3×107.6cm
アルテ・ピナコテーク
さて、ムリーリョ《窓枠に身を乗り出した農民の少年》は、ロンドン・ナショナル・ギャラリーで一番最初に所蔵されたスペイン絵画であるという。
実物に対面できる日が1日でも早く来ますように。