東京でカラヴァッジョ 日記

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カラヴァッジョ《エッケ・ホモ》 - 【その5】カラヴァッジョ展(国立西洋美術館)

2016年03月13日 | カラヴァッジョ

カラヴァッジョ展
2016年3月1日~6月12日
国立西洋美術館


第1節

   1605年、カラヴァッジョは、ローマの貴族マッシモ・マッシミのために《荊冠のキリスト》を制作。引き続き、対作品の制作を依頼される。
   それは「世紀の競作」。
   マッシモ・マッシミは、画家たちに明かすことなく、同じ《エッケ・ホモ》の主題による作品制作を、カラヴァッジョ、チゴリおよびパッシニャーノの3画家に依頼する。
   しかしながら、この「世紀の競作」話は、画家チゴリの甥による創作話であるらしい。
   実際のところは、カラヴァッジョに《エッケ・ホモ》の作品を注文したが、

案1:納品された作品を気に入らなかった、
案2:カラヴァッジョが何らかの理由で制作しなかった、または納品しなかった、

ため、チゴリに改めて注文した、と考えられているとのこと。

   チゴリは、1607年に《エッケ・ホモ》を制作・納品する。

 

 

第2節

カラヴァッジョ《荊冠のキリスト》
1605年
178×125cm
ヴィチェンツァ、ヴィチェンツァ人民銀行蔵

   マッシモ・マッシミから注文を受け納品した作品。

   ただ、ヴィチェンツァ蔵作品の真筆性は、グレーと認識している。

2010年没後400年ローマの回顧展:非出品

1985年NY・ナポリの回顧展:出品(当時はプラート貯蓄銀行所蔵、その後吸収合併?により現所蔵へ)

1951年ロンギ監修ミラノの回顧展:帰属作として出品(当時はフィレンツェの個人蔵)

 

カラヴァッジョ《エッケ・ホモ》
1605年頃
128×103cm
ジェノヴァ、ストラーダ・ヌオーヴァ美術館ビアンコ宮

   ジェノヴァ蔵作品の真筆性も、グレーだと認識している。

   本展では真筆として提示。根拠として、近年の修復作業時に多数のペンティメント(描き直し)が見つかったことがあげられている。

2010年没後400年ローマの回顧展:非出品

1985年NY・ナポリの回顧展:出品

1951年ロンギ監修ミラノの回顧展:非出品(メッシーナ美術館蔵の作品がコピー作として出品、194×112cmとサイズ大)

 

チゴリ 《エッケ・ホモ》
1607年
175×135cm
フィレンツェ、ピッティ宮パラティーナ美術館


第3節

   ジェノヴァ作品は《荊冠のキリスト》の対作品として制作された作品なのか。


   やはりサイズの違いが気になる。

   《荊冠のキリスト》とチゴリ《エッケ・ホモ》は、ほぼ同じサイズなのに対し、ジェノヴァ作品は明らかに小さい。

   後世に切断された可能性も考えられる。専門家もその可能性自体を完全に否定しているわけではなさそうだ。


   チゴリ《エッケ・ホモ》とジェノヴァ作品の構図は似ていることから、対作品として制作された作品は、ジェノヴァ作品とは別の作品であったとしても、ほぼ同一の構図であったはずだ、との説明もある。

 

前提)ジェノヴァ作品は、多数の描き直しがあることから、カラヴァッジョの真作である。
   描き直しは、本作の第1ヴァージョンであって、レプリカではないことを示す。

前提2)ジェノヴァ作品は、サイズが小さいため、マッシモ・マッシミに納品された作品ではない。

 

1)マッシモ・マッシミからの注文を受け、まずジェノヴァ作品、次に納品用作品、と2ステップでの制作を行おうとしたのか。

2)ジェノヴァ作品が先に存在し、それを知ったマッシモ・マッシミが対作品に丁度良いと拡大レプリカを注文したのか。

3)ジェノヴァ作品とマッシモ・マッシミとは全く関係がなく、単に主題がエッケ・ホモで共通しているだけなのか。


   ジェノヴァ作品が真筆であるならば、その制作の契機がわからない、と一旦頭の中を整理した。

 

   本展出品のカラヴァッジョ《エッケ・ホモ》とチゴリの《エッケ・ホモ》は、甲乙付け難い。

   という観者がもし多いようであれば、ジェノヴァ作品の真筆性自体がクエスチョンマーク?



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