未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命--人は明日どう生きるのか
豊かさとは何か、人間とは何か、生命とは何か
2019年11月19日〜20年3月29日
森美術館
発達するテクノロジー。
昔は夢のような話と思っていた技術が、今は日常生活に欠かせないものとなる。それが繰り返されてきた人類の歴史。
そして今また、新たな技術、現実化することがありうるとは思えないような技術たちが社会に孵化する瞬間を待っている。それはすぐ明日のことなのである。
後半のバイオ、AI、ロボット関係から印象に残る展示について、主にキャプションをメモする。
ゴッホの左耳を「生きた状態」で再現、タンパク質による彫刻
「耳」を構成する細胞のもととなったのは、ゴッホとY染色体を共有する父系の玄孫リーウ・ファン・ゴッホの耳の軟骨細胞。そして、より正確に再現するために、母性の子孫の唾液から抽出したミトコンドリアDNAが導入されました。
生命を再現するとは何か。
外科手術で身体機能を強化した新生児たち - よりよい大人に成長することを願って、親がわが子の身体を修正する。
1)頭皮を引き伸ばす、その効果
頭皮を引き伸ばすことで頭部の面積が増え、より早い熱解放が可能になります。地球温暖化が加速するなか、肌の表面近くにより多くの血管があれば、子供は高温度の環境で働くことに耐えることができるでしょう。
2)頬を引き伸ばす、その効果
クリップを頬側に埋め込むと、3ヶ月をかけて皮膚と筋肉にストレッチがかけられます。これにより、ストレスの多い仕事に就く際に子供は素早く、かつ効率的にカフェインを吸収することができるようになります。
人間の身体を修正するとは何か。
倫理的自動運転車、そのアルゴリズム
人道主義
・人的被害が極力少ない経路を選択。
・死者が出る経路を極力回避。
保護主義
・運転者にとって最も被害の少ない経路を選択。
利益優先主義
・運転者が加入している保険内容に応じて経路を選択。
・社会的影響力の高い人物を優先して保護する。
・結果、同乗者に被害も。
我々に、アルゴリズムの選択権があるか。
実際の人間の動きに近づける
自律した動きと外部刺激への反応-アンドロイドの表情、動作。
中性的容貌の採用も相まって江戸時代の妖怪図巻に出てくる妖怪みたいで不気味。そう言っていられるのも今のうち。
人間の死を看取るマッサージ機-末期医療ロボット
死期が迫った患者は、病室のベッドの上でこのロボットに腕をさすられ、「ご家族・友人が来られず残念ですが、快適な死をお迎えください」と慰められながら一人きりで他界する。
ビジュアル的には冴えないこの技術が、私的には、一番身近で現実性のあるものになりそう。
なお、前半の都市・建築関係の展示については、確かに凄そうだが、膨大な資金と膨大な自由になる土地が必要、今の日本は地震と津波と原発だな、との印象で、興味薄で通り過ぎる。