芥川(間所)紗織(1924-66)。
1953年頃から41歳で亡くなるまで、前衛的な表現で活躍した女性アーティスト。
今年(2024年)は、芥川(間所)の生誕100年。
生誕100年の大回顧展は開催されないようであるが、全国の10美術館が、それぞれの所蔵作品により、常設展示(コレクション展)にて小企画を順次開催するプロジェクト「museum to museum 生誕100年記念 芥川(間所)紗織 軌跡を回顧する旅へ」を実施している。
・川崎市岡本太郎美術館(4/18〜7/7 済)
・栃木県立美術館(4/20〜6/16 済)
・豊橋市美術博物館(6/8〜7/21 済)
・刈谷市美術館(6/20〜7/21 済)
・名古屋市美術館(6/29〜9/8 済)
・高松市美術館(7/13〜9/29 終了間近)
・横須賀美術館(7/13〜10/20)
・東京都現代美術館(8/3〜11/10)
・東京国立近代美術館(9/3〜12/22)
・国立国際美術館(11/2〜1/26予定)
私的には、東京国立近代美術館の常設展示で女性像の作品2点を見て、強い色彩対比のポップな作品だなあ、と気になっていた画家。
先般、板橋区立美術館(本企画には参加していない)の館蔵品展「シュルレアリスムとアブストラクトアート」(8/22〜9/23)にて、やはり女性像2作品を見て、その激しい情動の表現に惹かれる。油彩ではなく染色で、ろうけつ染めを学んだことを知る。
遠くには行けないけど、東京ならと、まずは東京国立近代美術館の常設展(MOMATコレクション展)を訪問する。
東京国立近代美術館は、6点を所蔵する。
「女」シリーズが2点、「神話」シリーズが2点、晩年の「抽象画」が2点と、見事なバランス。
6点が3階8室の壁一面を独占して並んでいる様は壮観。
芥川(間所)紗織
《女(I)》 1955年
《女(B)》 1955年
前者は怒り。
後者は笑いなのか、驚きなのか、なにか分かりかねる。
芥川(間所)紗織
《神話 神々の誕生》 1956年
《神話より》 1956年
「古事記」などの神話や民話を題材とした作品。後者の大画面作品は、「大魚に呑まれたヤマトタケルが、背を切り割って外に出て、戦っている場面」だという。
芥川(間所)紗織
《黒と茶》 1962年
《スフィンクス》 1964年
「抽象画」は、1959〜62年の約3年間のアメリカ(LA&NY)留学を経て、油彩画に転じてからの作品。
あわせて、同室には「いち早く彼女の作品を評価し二科会に誘った岡本太郎、製作者懇談会という前衛的なグループにともに参加した池田龍雄や石井茂雄、河原温、奈良原一高、戦前から戦後にかけて芥川に先駆け前衛的な女性アーティストとして活躍した桂ゆき(ユキ子)、芥川が作品を見て感銘を受けたというメキシコの画家ルフィ―ノ・タマヨら、同時代の作家たちの作品」も展示される。
石井茂雄(1933-62)
《戒厳状態》 1956年
28歳の若さで亡くなる。もっぱらこんなテーマの作品を残したようである。
ルフィ―ノ・タマヨ(1899-1991)
《しま模様の人物》 1975年
1955年9月10日〜10月22日に東京国立博物館にて開催された「メキシコ美術展」。
「メキシコ・ルネサンス」と呼ばれる壁画運動の巨匠たち(オロスコ、リベラ、シケイロスなど)の作品が初めて日本に紹介された展覧会で、多くの若い画家たちが感銘を受けたという。
芥川は、特にルフィーノ・タマヨに強く惹かれ、「神話・民話」シリーズに取り組む契機の一つとなったらしい。
私的には、「女」シリーズに惹かれる。
激しく感情を表している女性像。
ちょっとパウル・クレーを想起させる造形。
東京音楽大学(現:東京藝術大学)本科声楽部を卒業した翌年、芥川也寸志と結婚&長女の誕生。「一つ屋根の下に二人の音楽家が暮らすのは不都合」「特に作曲家のかたわらでの歌声は遠慮しなければならなかった」と、声楽を断念。独学で絵画を学ぶ。
そんな生活のなか、抑えられない自己表現への強い想いが、「女」シリーズに表されているのだろう。
次は、東京都現代美術館。