マタイ様が教えてくださったのですが、びっくり!!
来年2022年、スコットランド国立美術館展が開催!!
同美術館展は過去に複数回開催されているようであるが、今回は、ルネサンス期から後期印象派までの西洋美術史の巨匠の著名な作品が相応数含まれる模様で、最も豪勢ななものになりそうだ。
以下、東京都美術館、NHKおよび本展特設サイトから、現時点の掲載情報を記載する。
スコットランド国立美術館
THE GREATS 美の巨匠たち
(東京展)東京都美術館
2022年4月22日~7月3日
(神戸展)神戸市立博物館
2022年7月16日〜9月25日(予定)
(北九州展)北九州市立美術館
2022年10月4日~11月20日
【概要】
英国エディンバラにあるスコットランド国立美術館群(National Galleries of Scotland, 通称NGS)は、スコットランド国立美術館、スコットランド国立肖像画美術館、スコットランド国立現代美術館という3つの美術館で構成されています。
本展では、ヴェロッキオ、ラファエロ、エル・グレコ、ルーベンス、ベラスケス、レンブラント、ブーシェ、ヴァトー、コロー、シスレー、スーラ、ゴーガン、モネ、ルノワールなどヨーロッパ大陸の巨匠たちに加え、ゲインズバラ、レイノルズ、マーティン、レイバーン、ブレイク、コンスタブル、ターナー、ミレイといった英国美術史を彩った画家の作品など、油彩画・水彩画・素描約90点を通じ、ルネサンスから後期印象派にわたる西洋美術史の流れを紹介します。
【出品作品】
ジョシュア・レイノルズ
《ウォルトグレイブ家の貴婦人たち》1780-81年
ディエゴ・ベラスケス
《卵を料理する老婆》1618年
クロード・モネ
《エプト川沿いのポプラ並木》1891年
※東京展のみ展示
ポール・ゴーガン
《三人のタヒチ人》 1899年
※東京展のみ展示
アンドレア・デル・ヴェロッキオと工房に帰属
《幼子キリストを礼拝する聖母(ラスキンの聖母)》 1470年頃
エル・グレコ
《祝福するキリスト》 1600年頃
レンブラント・ファン・レイン
《ベッドの中の女性》 1647年?
私的には、ベラスケスの初期作品である厨房画《卵を料理する老婆》。
まさか日本にいながらにして実見できるなんて。土焼きの鍋の中の2つの卵。陶器の壺、皿、真鍮の鉢、少年の持つメロン、後ろの壁の籠、楽しみ!!
次が、レンブラント《ベッドの中の女性》。画集でお馴染みだが、やはりエロティックな雰囲気が濃厚な作品なのだろうか。
ゴーガン《三人のタヒチ人》 は、2016年「ゴッホとゴーギャン」展で来日し、印象に残った作品。再見が楽しみ。
今回、ゴーガン《説教の幻影》はさすがに無理か。それより、ゴーガンとモネは、東京展のみ展示とあるのは寂しい。
現時点では名前だけの提示であるが、ラファエロも出品されるようだ。
《ブリッジウォーターの聖母》もしくは《ヤシの木の聖家族》だったら凄いこと、ラファエロの助手の手によるとされる《散歩の聖母》は無いだろう、ならば素描だろうか。いずれにせよ楽しみ。
ボッティチェッリ《眠る幼子キリストを崇拝する聖母》はさすがに無理か。
スコットランド国立美術館には、ここ10年ほどを見ると、フェルメール《マルタとマリアの家のキリスト》や、レオナルド帰属《糸巻きの聖母(バクルーの聖母)》(寄託)、シャルダン《カーネーションの花瓶》などでお世話になっている。
今回の美術館展も非常に期待する。
春の美術展については、2020年、2021年と2年連続で、楽しみが削られてきたところ。2022年は満喫できることを願う。
まずはラファエロから。Rizzoli集英社のラファエロのカタログ(1975、原書は1966)では、この3点の絵はまだ旧所蔵者のロンドン・エルスメアコレクションとなっていて、その後1990年に出たアサヒグラフ別冊西洋編12ラファエロではブリッジウォーターの聖母がスコットランドNG寄託、2012年の新人物往来社ラファエロの世界(池上英洋著)ではスコットランドNG所蔵となっているので、この間に現所蔵者に変わったことが分かります。Rizzoli集英社版ではブリッジウォーターの聖母とヤシの木の聖家族が真筆、散歩の聖母が工房制作となっています。また、集英社世界美術全集7ラファエロ(嘉門安雄著)1978のラファエロ作聖母子リスト45点の中でもブリッジウォーター~とヤシの木~は真筆となっています。私の希望としてはブリッジウォーター~とヤシの木~のどちらが来てもいいのですが、ヤシの木~の幼児キリストの表現が、ルーブルの美しき女庭師やウィーンの牧場の聖母のキリストを思わせる素晴らしい出来であること(いずれも1506~07年)、聖母マリアとヨセフがラファエロの絵には珍しく完全な横向きであること、ブリッジウォーター~が以前はかなり表面が傷んでいたものを最近修復したと思われること(上記のアサヒグラフ別冊と新人物往来社の掲載図版の比較による)といった理由から、ヤシの木の聖家族に来てほしいと思います。ブリッジウォーターの聖母は以前から知っていましたが、ヤシの木の聖家族(棕櫚の聖家族)はあまり意識していませんでした。今回の件で新人物往来社の本のカラー図版を再確認し、思ったより良い作品であることを認識したので、是非実物を見てみたいと思った次第です。
次にボッティチェリの「聖児を礼拝する聖母と少年聖ヨハネ」。Rizzoli集英社のボッティチェリのカタログ(1975、原書は1967)では「異論はあるが多くの研究者が真筆とする作品」としていますが、ライトボーンのカタログレゾネ(2巻本、1978)では工房作とし、仏の研究者メニールが幼児キリストの姿勢について、ベルリン絵画館のバルディ家の聖母のキリストの反転コピーであり、ワシントンNGの聖母子トンドのキリストのコピーとする指摘を取り上げています。さらにメニールはパリのジャクマール・アンドレ美術館にある絵に描かれた洗礼者ヨハネとの類似を指摘しています(ジャクマール・アンドレのボッティチェリ?周辺作「港の聖母子と洗礼者聖ヨハネ」は2015年の渋谷ブンカムラ「ボッティチェリとルネサンス Money and Beauty」展に来日しています。図録をお持ちならご覧ください。No.38)。横顔で下を向いた聖母マリアの表情は1490年頃のボッティチェリ工房の作品によくあるタイプであり、幼児キリストのやや硬い表現や洗礼者ヨハネの面長の顔などから、私もこの絵は工房作だと思います(これが来るなら見たいですが)。
なお、上記貴ブログの本文では「眠る幼子キリストを崇拝する聖母」とされていますが、私が見た上の2冊の本の写真ではキリストは眠っていません。この題名はどこに出ていたのでしょうか?
ヴェロッキオについてはまとまった資料をほとんど持っていません。類似の聖母子は何点か(ベルリン絵画館、シュテーデル、NY-Metなど)知られているので、これらの作品との違いについては今後確認してみます。聖母マリアの表情はベルリンやシュテーデルの絵に近いと思うし、頭にかぶっているベールも上手に描かれているので、これがヴェロッキオ工房の作であることは間違いないと思います。
コメントありがとうございます。
また詳細情報をありがとうございます。
ラファエロについて。
美術館のホームページを見ると、《ブリッジウォーターの聖母》《ヤシの木の聖家族》《散歩の聖母》の3点は、画像が掲載されておらず、どうやら3点とも寄託作品であるようです。
本展公式サイトにてヴェロッキオ工房は作品画像が出てラファエロは名前だけであることも考え併せると、出品作はこの3点のいずれかではなく、素描作品ではないかと推測しています。
ボッティチェリについて。
美術館のホームページによると、《眠る幼子キリストを崇拝する聖母》は、1999年の取得とあります。長年スコットランドの個人蔵で一般公開されていなかった模様。アメリカのキンベル美術館に売却されることとなったが、寸前で資金を調達し、スコットランドにとどめおくことができたという逸話を持つ作品のようです。
これとは別に《聖児を礼拝する聖母と少年聖ヨハネ》も掲載されていますが、工房作とされているようです。
ボッティチェリの「眠る幼児キリストを礼拝する聖母」ですが、この絵はどこかで写真を見た記憶があるので、手持ち資料を再度調べたら出ていました。(カタログレゾネ類は2000年以前の本しか持っていないので、それ以降に世の中に出たものは載っていません。)この絵が出ていたのは2009年に開催されたフランクフルト・シュテーデルのボッティチェリ展図録です。絵の題名は「幼児キリストの礼拝」(Wemyss Madonna ウィームズの聖母、Wemyssは前所有者名)です。そして、2016年の都美ボッティチェリ展図録のNo.47「バラの聖母」(フィレンツェ・パラティーナ美術館)の解説に「背景に同様のバラのモティーフがあるエディンバラのウィームズの聖母を想起させる」とあります。パラティーナの絵はトンドであり、また、天使が4人いて幼児キリストは眠っていませんが、聖母マリアの表現とバラの背景はよく似ています。もう1枚のスコットランドNGの「聖児を礼拝する聖母と少年聖ヨハネ」も合わせ、これらの絵は似たような雰囲気の1490年代頃のボッティチェリ晩年の工房作と言えると思います。類似作品をもう少し詳しく比較すると、同様のバラの背景を持つ絵として、ピアチェンツァの「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」のトンド(2015年のブンカムラ「ボッティチェリとルネサンス Money and Beauty」展出品作、1480年頃)があり(上記シュテーデルの図録中のWemyss Madonna解説ページでピアチェンツァの絵を関連作品として引用)、こちらはほぼ真筆ですが、上記パラティーナのトンドやスコットランドNGのもう1枚のボッティチェリ作品と比べると、このウィームズの聖母はピアチェンツァのトンドよりやや劣るぐらいの出来栄えと言っていいと思うので、工房作としてもかなり質の高いものだと思います。ということで、もしスコットランドNGのボッティチェリ作品が来日するなら、「聖児を礼拝する聖母と少年聖ヨハネ」の方ではなく、Wemyss Madonnaの方に来てほしいと思います。
ラファエロ作品3点がスコットランドNG寄託なのか所有なのかはよく分かりません。カラヴァッジョのナポリ・カーポディモンテにある「キリストの鞭打ち」が以前はカーポディモンテ寄託と本に書かれていたのに、最近ではカーポディモンテ所蔵とされているようで、どちらが本当なのか、美術館に売却か寄贈されたのかもはっきりしません。ラファエロの件もよく分からないので、あとは出品作が公表されるまでのお楽しみということにしておきます。私としては本に出ていた「ヤシの木の聖家族」の写真が素晴らしいと思ったので、是非来日してほしいと願っています。
コメントありがとうございます。
ボッティチェリ《眠る幼子キリストを礼拝する聖母》について、いろいろとお教えいただきありがとうございます。2014-15年にアメリカ3都市を巡回したコレクション展「Botticelli to Braque」には目玉作品として出品されたようですが、今回の日本のコレクション展では含まれません。その分、ラファエロの油彩画3点のうちいずれかの出品を期待したいと思います。今後の詳細発表が楽しみです。