東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

カッサンドル・ポスター展(八王子市夢美術館)

2017年04月29日 | 展覧会(その他)

カッサンドル・ポスター展
グラフィズムの革命
2017年4月7日〜6月25日
八王子市夢美術館

 

   カッサンドルって誰?
   沢木耕太郎『深夜特急』のカバー表紙の絵の人だという。
   じゃあ面白そう、見に行こう。
   と思いつつ、2/11〜3/26の埼玉県立近代美術館に行き損なう。残念。
   だったところ、次の巡回は八王子だと知り、早々に訪問する。

 

   カッサンドル(1901〜1968)は、ウクライナに生まれ、フランスで活躍したグラフィックデザイナー。


   出品数は約100点。リトグラフのポスターがメイン。直筆のポスター原画や、ポスター以外の作品も含む。


   感心したのが、ポスター作品のサイズ。特に第1章の初期作品は大きい。制作当時のポスター広告を巡る環境がこのサイズを求めていたのだろうか。


   やや不満なのは、会場内の個別作品の説明。
   作品名は原語をカタカナにした商品名のみ。作品解説も、解説が付けられた作品数自体が少なめなのはともかく、デザイン観点の説明が中心で、商品については最小限の単語でしか触れていない。おかげで、何の商品なのか想像もつかない作品も少なからずある。一般の日本人にもわかるような商品説明を付して欲しい。

 

 

第1章   街頭の視覚革命-鮮烈なデビュー

   主に、1921-26年制作のポスター。作品の大きさに感心する。


No.1《ガール》
   地生するパスタを鎌で刈る不気味な容貌の女性。「パスタ製造会社」


No.5《ピヴォロ》
   黄金比とカササギ。「ワイン」


No.8《ラントランジジャン》
   耳に集まる電線。 「夕刊紙」


No.3《オ・ビュシュロン》
No.11《オ・ビュシュロン》

   横長4メートルの巨大ポスター。木こり。「家具店」。No.3で、万国工芸博覧会でグランプリを受賞、その名を広める。

 

第2章   ポスターの頂点へ-時代の寵児として

   主に1927-1935年制作のポスター。

 

No.17《ノール・エクスプレス》

   ワゴン・リ社の「北急行」。文庫版『深夜特急』1巻のカバー表紙。

パリ↔︎リエージュ↔︎
ロンドン↔︎ブリュッセル↔︎

↔︎ベルリン↔︎

↔︎リガ(ラトビア)
   ワルシャワ

   

 

No.18《エトワール・デュ・ノール》

   ワゴン・リ社の北極星という名の「寝台列車」。文庫版『深夜特急』6巻のカバー表紙。列車を描かずして疾走感を表現する。

パリ↔︎ブリュッセル↔︎アムステルダム。

 

No.27《スタテンダム》

   「客船」。3代目のスタテンダム。文庫版『深夜特急』2巻のカバー表紙。

オランダ↔︎アメリカ


No.28《ラ・ルート・ブルー》

   文庫版『深夜特急』4巻のカバー表紙。

ロンドン↔︎パリ↔︎コートダジュール

 

No.30《ロアゾー・ブルー》

   青い鳥という名の列車。文庫版『深夜特急ノート 旅する力』のカバー表紙。
アントワープ、ブリュッセル、パリ。


No.37《ドクトゥール・シャルピー》
   女性の顔。「化粧品」


No.38《ヴェラ・マン》
   「ミント入りリキュール」


No.39《リス・シャンティイ》
   「シャンティイに向かう鉄道」


No.44《トリプレックス》
   「強化フロントガラス」


No.47《トムソン》
   「電化製品」


No.61《デュボ・デュボン・デュボネ》
   代表作の一つ。「食前酒(ワイン)」。大いに受けたらしいキャラクターを利用した販促景品も展示される。灰皿、扇子、レター製品。お気に入りは、帽子。欲しい、被ることは無かろうけど。

 

No.65《ノルマンディー》

   代表作の一つ。フランスが国家の威信をかけて建造し、1935年に就航を開始した超豪華かつ世界最速の「巨大客船」。文庫版『深夜特急』5巻のカバー表紙。
   ル・アーブル(仏)からサウサンプトン(英)経由ニューヨーク(米)を就航、とある。
   1942年にアメリカ海軍により接収。改装作業時に火災が発生し転覆、1946年に解体。なんとも短い命。

 

 

第3章   見果てぬ夢-ポスターを超えて

   バルテュスとの出会い。キリコやダリとの交流。1930年代半ばより、もともと夢であった絵画制作に取り組むほか、舞台装置、衣装も手掛ける。
   書体(文字のデザイン)研究にも取り組み、文字のみのポスターも制作する。なんでも小文字嫌いで基本的に大文字を使用していたという。確かに。
   1940年頃以降、広告のデザインを辞める。1968年死去。

 

 

タバコのポスターも数点あるのだけれど、無いかのような取り扱いの印象。

 

【展覧会サイトより】

   ウクライナに生まれ、フランスで活躍した20世紀を代表するグラフィックデザイナー、カッサンドル(1901年〜1968年)。彼が生み出した作品は、時代の先駆的な表現として、グラフィックデザイン界に「革命」をもたらします。都市の街頭を埋め尽くしたポスターはもちろん、レコードジャケットや雑誌の表紙等、数々の複製メディアの仕事を手がけ、生活の隅々にそのデザインが満ち溢れました。カッサンドルは機械と大量消費の時代をまさに体現したのです。
   この展覧会ではカッサンドルの数々の仕事を、ファッションブランド「BA-TSU」の創業者兼デザイナーである故・松本瑠樹氏が築いたコレクションを通してご紹介します。松本氏のカッサンドル・コレクションは、保存状態の良好なポスターの代表作、およびカッサンドル直筆の貴重なポスター原画を含むものとして、世界的に高く評価されています。国内ではおよそ20年ぶりの回顧展となる本展で、カッサンドルが到達した至高のポスターデザインをご堪能いただければ幸いです。



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