東京でカラヴァッジョ 日記

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《シルス・マリア》 〜「リヒター/クールベ」特別展示(国立西洋美術館)

2018年08月15日 | 展覧会(西洋美術)
本館特別展示
リヒター/クールベ
2018年6月19日〜19年1月20日
国立西洋美術館常設展示室
 
 
  ゲルハルト・リヒターの自宅のダイニング・ルームには、クールベの風景画が飾られていて、それと隣りあう部屋に、リヒターの自作《シルス・マリア》がある――。
 
 
ゲルハルト・リヒター(1932〜)
《シルス・マリア》
2003年、82.0×122.0cm
作家蔵
 
 
ギュスターヴ・クールベ(1819〜77)
《狩猟者のいる風景》
1873年、80.5×120.5cm
国立西洋美術館
 
 
ゲルハルト・リヒター
《抽象絵画(ラヴィーン)》
1996年、82.0×62.0cm
作家蔵
 
 
 
   スイスの村、シルス。
 
   スイスの東南部、グラウビュンデン州の上部エンガディン地方の村。
   シルヴァプラーナ湖とシルス湖に挟まれた村。
   シルス湖に近い「バゼリア」地区と、湖から1キロ近く南に入った「マリア地区(シルス・マリア)」の2つの地区に分かれる。
 
   サン・モリッツ(エンガディン地方の中心地で国際リゾート地、1928年・1948年と2度の冬季五輪開催地、セガンティーニ美術館所在地)からは、バスで20分ほどの距離だが、サン・モリッツとはうってかわり、静かで落ち着いた村。ニーチェやヘルマン・ヘッセ、トーマス・マンが愛した村。
 
 
 
   正真正銘、エンガディン・アルプスの中に位しつつ、シルス・マリアで、山々は、熱情や挑みを掻きたてる烈々たる姿をなさない。人を圧する迫りを見せない。雪と氷と岩の交錯の力を示さない。氷河はここにはない。
   山々は青く白く、優しい。十分に高く、十分にアルプスの崇高さを保ち、しかも曳くもすそのなだらかな拡がりと、峰から落ちる線のやわらかさ、人を落ちついた安らぎに、また瞑想に、思索に、おのずと誘い入れるのがここである。
犬養道子『私のスイス』より。
 


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