隠れ家-かけらの世界-

今日感じたこと、出会った人のこと、好きなこと、忘れたくないこと…。気ままに残していけたらいい。

大人の世界は?・・・「子供の事情」より

2017年07月22日 15時01分51秒 | ライブリポート(演劇など)

2017.7.19(水)
「子供の事情」
at 新国立劇場 中劇場


作・演出 三谷幸喜
出     演 天海祐希/大泉洋/吉田羊/小池栄子/伊藤蘭
               林遣都/青木さやか/小手伸也/春海四方/浅野和之  


■ 子供じゃなく大人の・・・
 久しぶりの新国立劇場中劇場は、驚くほどの女性率の高さ。もうほとんどが女性だった(ま、私も一応そうですけど)。ライブでも芝居でもそういう傾向はもちろんあるけれど、この夜はハンパないなあ、と。
 日がかげった劇場前は少し風が心地よく、ベンチで休んでいるうちに、「仕事もう疲れたよ(-_-;)」モードからちょっと切り替わる頭ん中。

 出演者の顔ぶれを見るだけで想像できちゃうでしょうけど、それぞれの個性を十二分に生かした活気あふれる舞台。質のいいコメディーは大笑いと、そのあとに何かを残してくれる。理屈ではなく、ね。
 子供たちはみな10歳、小学4年生。放課後になぜか教室に残る、少しだけいわくありげな10人の子供たちの、実は大人の人生をも彷彿とさせちゃうような、無邪気な、だけど深い言葉のやりとり。
 ひとりひとりが見事に個性的で、似てなくて、当たり前のようで当たり前じゃなくて。ああいう子、ワタシのクラスにもいたなあと思えたり、いやいやあんな子たちはいなかったよ、と思えたり。それはさまざま。
 だけど、人生の難しさや生きづらさや無情なさまは、実は子供にだってあったんだよなと思い返したりできる。
 何度も繰り返される「だけど、まだ10歳だよ、いくらでもやり直せる」という宣言のような言葉。10歳の子が言うから、ついつい見ている私たち大人のお客は笑っちゃうけど、でも、子供のころ、「いくらでもやり直せる」なんて達観できたことあったけなあ。ふと思う。失敗したり、まずいことしちゃったりしたとき、「大丈夫。まだ10年しか生きてないんだもん。やり直せるよ」なんて思えた? 10年は、大人になって見るから「たった10年」なんであって、10歳のガキにしてみたら「もう目いっぱいの10年」って感じだった。
 子供たちの中に、兄が金属バットで父親を殺したという女の子がいて(話題にはのぼっていたけれど、その子だったというのはちょっと衝撃だったんだけど)。何年もたっているのにマスコミが学校の前に殺到して、それに対応しようとする女の子に、クラスのリーダーは裏から逃げるように指示して、こう言うんだ、「そのことに向かい合うのはもっと先でいい。今は逃げてもいい」と。そうだよね、それでいいよね、と深く納得する私はたしかに大人のワタシで、その10歳のリーダーの女の子に作者は「優しい深い大人」の気持ちを言わせたんだろうなと思ったのだ。
 だから、「子供の事情」は、子供の姿を借りた大人のメルヘンだと思う。転校生が権力(というほどでもなく、ただの気弱なお坊ちゃんだったんだけど)を得ていく様子やかけひきはまさに大人の行動だったりする。
 だけど、おしなべて言えるのは、みんな根が優しいということ。実は弱いことへの本能的なおおらかさがあるということ。きつい言葉があっても、人を遮断しないこと、どこかで受け入れること。それが最後まで心地よかった。
 子供とか、大人とか関係なく、人はそういうもんだよ、と言えるのか、それとも失われつつあるのか、そのあたりはわからないけれど、必死で守りたいものがあるとしたら、自分の中に残されていると信じたい、「とりあえず受け入れてみるかな」というおおらかな部分だ。長く生きていて薄れつつある、そういう部分をもう一度・・・と思ったりしたのです。


■ ステキな役者たち
 役者は誰もすばらしかったです。誰、と特定はしません。群像劇にふさわしく、主人公っぽい人もそうでない人も、適度に目立ったり、かげでひっそりオーラを隠したり。
 そういう強烈な個性を上手にバランスよく小気味よくちりばめて、作者兼演出家の本領発揮だったのでは?
 少年のように溌溂としたクラスのリーダーで、でも確固たる信念がありわけではないアニキ(天海祐希)、転校生でカッコつけで生意気で大人ぶって、でも実は・・・だったジョー(大泉洋)、子役で活躍していて大人の世界に染まりながらも教室での時間にすがっているかもしれないヒメ(伊藤蘭。はじけっぷりがハンパじゃない!)、活発で脱線したいたずらが少々常軌を逸しちゃうこともあるゴータマ(小池栄子)、一緒になって悪さをする枯れた?雰囲気のジゾウ(春海四方)、恐竜博士で少しだけ人とのコミュニケーションが苦手なドテ(小手伸也)、飄々としてクラス内を渡り歩いて人の言葉を繰り返すちょっととらえどころのないリピート(浅野和之)、学級委員で担任の意向にべったりで優等生で、でも学級委員選挙に落ちてからはキャラが180度変わって生き生きしちゃったソウリ(青木さやか)、誰よりも熱心に勉強しても成績がちっとも上がらないというまじめで地味な、だけどとてつもない重いものを背負っていたホリサン(吉田羊)そして最後に、物語の進行役で三谷幸喜君の少年時代?と思わせる賢そうなホジョリン(林遣都。若い彼が見事な進行役をつとめていました)。
 これはまことに不十分な稚拙な登場人物紹介ですが、なかなか魅力的な彼らの一部を垣間見ていただければ。
 カーテンコールでは劇中歌の合唱で、客に「早く帰れ!」と迫るのですが(笑)、そのリードボーカルをつとめるのが天海祐希(相変わらずステキです)ではなく学級委員の青木さやかってところも、なかなかいいでしょ。




★ BENI 「ヘビーメロウ」をカバー ★
 http://www.sanspo.com/geino/amp/20170721/geo17072105050011-a.html


★ クージー本『C会談で行こう!』出版パーティー ★
 https://www.shinko-music.co.jp/report/ckaidandeiko/
 クジさんの人柄が伝わるパーティーです!
 執筆だけではなく企画にも大いに参加したというところがいい。
 手元にある本をまだ読んでいないので、楽しみだ。


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