インソムニア

■インソムニア

ゴソゴソと遠慮がちな音がして
地球の夜が終わる
とうに陽があがって　風が止まり
新しい合図が　そこここで生まれる
窓の外の無数の光がまぶたをかすり
部屋に居座るきのうの匂いを　無下におしやる

背中を丸めて　猫のようなうしろ姿
キミがキミの部屋に消える
朝と夜がひっくり返って
キミの一日は　バランスを保つ
眠れぬ時を抱きかかえたまま
季節の記憶も　いまは心もとない

やわらかい毛布を　胸まで押し上げて
忘れかけた静寂を　むなしく貪る
川遊びや　お化け屋敷
ススキの揺らめきや　草いきれの裏庭
夢にあらわれて　キミをかっさらい
眠りの果てに　連れ去ってくれれば…