2016.10.29(土)
★平幹二郎さん
亡くなったというニュースに本当に驚いたけれど、80歳を過ぎてまるで絶頂期のように精力的に役者を続けていたことに驚きだ。
若い頃(精神的には「幼い頃」と言ってもいいけど)観た俳優座の舞台では、仲代達矢・平幹二郎・加藤剛が輝いて、新劇の世界に華やかな話題さえ巻き起こしていた。
私にとって平さんとシェークスピアは、千田是也氏の演出した舞台だ。
そして最後に観たのは「こんばんは、父さん」(ココにレポあり)。いい具合に力の抜けた「枯れた父さん」は、それでも深い根っこの生えた存在感で、共演の2人を盛り立てていたように思う。もっと観たかったなあと少し後悔。
名優でも最後は孤独死・・・と憐れんだような言い方をしている人もいたけれど、一人の寂しささえ楽しみ、気ままにくらした先に訪れた死ならば、うらやましいくらいだ。
息子の平岳大は大好きな役者だ。父をおくる言葉もステキだった。
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20161028-OHT1T50100.html
孫を囲んで、かつては交わせなかった親子の会話を二人の子どもと楽しみ、それが最後の夜になったなんて、それは極上の芝居を観るようではないか、などと第三者の私は勝手に心を動かしている。
後輩であり共演者であった栗原小巻さんの弔辞はこちらです。
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20161028-OHT1T50099.html
★田部井淳子さん
一度だけ、仕事でお会いしたことがある。
田部井さんのインタビューなので野外で行いたい、というこちらの勝手なお願いを快く承諾してくださって、新宿御苑での取材。
山から下りたときのクールダウンのためにストレッチを実地で教えてくれたり、日常生活でどんな行動がどのくらいの歩数か知る目安を説明してくれたり。もう10年くらい前になるけれど、心も体もよけいなものをそぎ落とした潔さがあった。
病をえながらも最後まで山を歩き、その人生を見事に貫いたのですね。
実家から冬物のセーターやベストを持ってきて、母のところに届ける。おしゃれな人だし、私と違って(-_-;)服もたくさん持っているので(いいものをセールで上手に買う才能はあるけれど、買ってきて気に入らずにそのまま・・という私には信じられないところも多々ある)、「いろいろ選べてうれしいわ」と笑顔。
「数奇な運命をたどってきたんだから、ちょっと書いておこうかしら」と、原稿用紙を要求。えっ! 文章を書くのが好きではなくて、あらたまった文章を書かなければならないときは必ず私に頼むくらいなのに。それに「数奇な運命」って・・・。
不倫のすえに私を産んでその相手(私の父です)と結婚したけれど、私に言わせれば、そのあと生涯、仕事を通じて元夫とその相手との交流を続け毅然と生き抜いた美人の元妻のほうがよほど数奇な運命だと思うけれど。
何でも事後報告で、親の言うことは一切聞かなかった娘のことを、「親を困らせたことがないの」と周囲の人に話すのはなぜなんだろう。忘れちゃったのか、忘れたふりをして「ずっと幸せだった母親」を見せたいのか。
「親に反抗しなかった娘」というイメージなんて以前なら耐えられなかったけれど、今は相方相手に、あるいはここで発散して(お付き合い、ありがとうございます)、折り合いをつけられるようになった。母の年齢、状況を思えば、もう戦いは終わったのだと、寂しいけれどそういうことなんだろう。
母は今日も元気でした。メモにたくさん私へのお願い事を書いて。
そのなかに「美川憲一」の文字。
「これは何?」と尋ねると、
「最近姿を見ないけれど生きてるの?」と。
とくにファンではないはずだけれど、気になったのか。
スマホで調べて、「生きてるみたいよ」と伝えたら、「昨日の夢に出てきたのよ」と。
母の日常はゆっくり進んでいます。
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