この季節くじゅう連山の裾野はハギとススキの競演だ。ハギとススキがなぜか株を寄せ合って生きている。ここは冬の終わるころ火が放たれ真っ黒の坊主山になって春を待つことになる。
焼けこげた黒い山肌を割って小さな命の芽吹きが一斉に始まる春も好きだが、広い草原の植物の丈ものび花が咲きそろって
まだ生まれたばかりの秋風になびいて「さわさわ」と歌い出すこの時期のほうが好きだ。そう、なかなか去りきれぬ夏の風と生まれたばかりの秋風が行き会う草原は生き生きとしている。
今日の空は雲が大きく動いて草原の植物たちを不安がらせている。背えたかのっぽヤマウドの淡い黄色の花が刻々と変化する空模様を仰ぎ見ながら大きく揺れている。それに続くハギやススキがフジバカマ、オミナエシ、ワレモコウを誘うと「さわさわ」と心地よい草原の歌の、はじまりはじまり......