朝が明けたばかりの里山に
「おーい僕だよー」と
秋風がせわしげに駆け回る
里山で一番背え高のっぽのケヤキが言う
「わしは もっと静かな秋が欲しいんだなー」
秋風にかき回されていた
ススキやクズかずらが
「そうよ そうよ」とうなずき合う
秋風はふーっとひと息ついて言う
「僕はとても淋しがり屋なんだよ」
秋風は知っている
両手から
こぼれ落ちんばかりの淋しさは
こうやって忙し気に
里山の皆んなを訪ね歩けば
いつの間にか薄らいでいくと
背え高のっぽのケヤキを黄色に染める頃には
秋風の淋しさは
もう空っぽになって
ひゅーう ひゅーうと歌っている