日暮れ時の散歩の途中、クヌギのどんぐりの実り具合を観察していたら珍しい物を見つけた。子供のころ良く見かけた天然繭(まゆ)がまだ秋を気づかずにいる緑の葉っぱに紛れ込むように下がっていた。ウスタビガのカマス型繭だ。この写真では掴みきれぬが抹茶のような色をして光沢がありなかなか捨てた物じゃない。昔はタワラ型の天然繭も山を分け入れば結構あったものだが、ここ最近は貴重な物となっているのだろう。この繭はもう空き家だった。指でつつくとカサカサと乾いた秋の音がした。
秋の夕日はつるべ落としと言うが、まだ秋はそれ程深くはない。とつとつと沈みゆく夕日に照って益々抹茶色となり私だけのささやかな感動に浸った。
あのグロテスクな蛾の幼虫がどうしてこんな素敵なカマスを作り出すのか不思議だ。はてなマーク?が頭の中でくるくる回っているうち夕日が点となってくじゅう山と大船山の鞍部に消えようとしていた。