夕時、無に近い空っぽの頭で庭に視線を遊ばせていたら、クロアゲハ蝶がルコウソウの花に遊んでいるのを見つけた。他の花には興味を見せずどうもルコウソウが気になるらしい。鳥や昆虫のシャッターチャンスは難しいので諦め半分でカメラを持って忍び足で庭に出た。
赤いハゴロモルコウソウは小さなラッパのようで可愛い花だ。大きなクロアゲハは甘い蜜を求めてちょんちょんと花に止まっては舞い立つのを何度も繰り返す。花が小さいので長居する程蜜がないのか、それとも、アゲハ君は案外短気なのかと勝手に想像した。好物だからと言ってじっくり味わって舌鼓を打っていては天敵の思うつぼだと言う事をクロアゲハはを知っているのだろう。
俳句の季語に『秋の蝶』があるが、同じ蝶でも『秋の蝶』と言い表わすと何と淋しい言葉だろう。
行く我をひとめぐりして秋の蝶 (星野立子)句