子どもが目にする最初の芸術品か

読み聞かせ講師が絵本の絵について語る時に、「絵本は子どもが目にする最初の芸術品」というフレーズが結構出てきます。
そのようにして、一生懸命作られるのは、とても大切なことだと思います。でも、「芸術」という感覚が、図書館の人はやけに狭いな、と思うことがあるのです。
「美術館にあるような絵」という説明でしたが、表現の幅が広がっている現代では、これではなかなか市民に理解できるものではありません。アニメ原画も美術館に展示されるようになりましたから。

 これが、ボランティアなど不特定多数の子どもに読み聞かせをする人たちを教育するときにも、よく使われます。とても気持ちはよくわかります。
でも、ちょっと行き過ぎな面があると思う。例えば、
「最初に与えられた絵本で、その子の一生が決まってしまう」などという言葉もそうです。
「そうかなあ?」と昔はそう思いながら聞いていました。どれだけ絵本が特別なものだと思っているのだろうと、ちょっと不思議です。
図書館の人にとっては、そりゃ本の世界は大きいものでしょうが、生活の一部分である「印刷物を見る」という行為は、どれをとっても偶然の出会いで、一期一会で、コントロールできるほど育児は暇じゃないと思います。育児不安をあおっているようにも思える位、大げさです。

「最初はリアルな絵で」という指導を受けたときも、ちょっと不思議でした。そういうときは「?」と思うだけであんまり深く考えないし、すぐに反論もしません。
 あのね、ごく小さい赤ちゃんは、あんまりよく目が見えないんだよね。家庭科の授業でもやりますし、母親学級でもやるんじゃないかと思います。現実の子どもの洋服を見ても、アップリケのようなはっきりした柄が目につきます。だから、ファーストブックで、リアルな絵を見せても、本人はあんまりよくわからないんじゃないか、物の概念だってあいまいだから。保育のプロであれば、そういう基礎知識で物事を判断していくことが多いのではないでしょうか。
 それでもね、読む大人が楽しそうなら楽しいだろうし、そういう側面はとても大事だと思います。リアルな絵は安定感があるしね。
だけど、「最初に与えられた絵本でその子の一生が決まってしまう」などというのは、脅迫観念に近いと思います。

「芸術」に対する解釈も幅広いので、芸術に対する限定はしないでいいんじゃないでしょうか。
周囲の大人が作った手づくり絵本や紙芝居 というのも芸術だと思っています。それくらい幅は広いと思います。

(2015年に書いたのを少し修正して投稿)

 

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