神奈川絵美の「えみごのみ」

“銀河鉄道”の小鉢

半年以上前のこと

銀座 和光で開かれた色絵磁器作家 佐藤亮先生の展示会場にて

-銀河鉄道の夜をテーマにした小鉢を創っていただけませんか?-と
お願いした私。

3月末の、あたたかな日の午前中に
それはそよ風にのって届きました。



『先日はお電話で失礼いたしました。
 ようやく春です。今冬の北陸加賀は-』

 さすがに豪雪がすごく、、、でも何とか我が家は
 持ちこたえてくれた、と。

佐藤先生のお手紙はいつも、
気が付くと隣に座って話しかけてくれているような、
さらりと易しい言葉で、ふわりと優しい文体で
心地よく胸にしみていきます。

『ご依頼いただいていた小鉢の制作、遅くなってごめんなさい。
 とても嬉しいお話に感謝いたします。』



宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』をテーマにした作品は
数年前、国立での展示でもお茶碗を拝見していて、とても惹きこまれ、
少し小さ目の小鉢でぜひに、とお願いしていました。


 
 『私にとっても何回目かの再読から-
   ジョバンニとカムパネルラの友情に思いをかさねて
   (やはり私の得意な鳥たちにたくして)』

創ってくださったのは



こちらと



こちらです(いずれも1客ずつ、正面と反対側を撮影)。

技法は「手びねり」(ろくろを使わず成形)。
特に上の作品は、私の若干小さ目の手にちょうど
包み込まれる大きさで、肌がすいついてくるようで、
持っていて嬉しくなります。

この写真でわかるかどうか・・・
上の作品にも鳥たちが隠れています。
サザンクロスのようなモチーフもあり、
夜の世界-この世とあの世の間-なのでしょうか。

下の作品は、カムパネルラがいなくなってしまった
“その後の”世界-ジョバンニにとっては新たに拓けた明るい現実、
なのかも知れません。

そして、今回特に私が「はっと」したのは、
まったく別のデザインで1客ずつ であること。
私がご依頼したときには、多くの方がそうであるように
「同じデザインで2客」を(心の中で)前提にしていました。
なので、包みを解いた直後はびっくりしたのですが、
眺めているほどに、
自分の中で日ごろ、ぼんやりと思っていることを表してくれて
いるのではないかな、と。


わたしは、あなたではない。
あなたは、わたしではない。
でも何か、共通の何かを有していることで心地よさがあったり
創造性が生まれたりする。
それが、佳い人間関係のありかたなのではと。


「先生、ありがとうございました! すごく嬉しくて・・・」

届いてすぐ、御礼の電話をして

「1客ずつ違うデザインを考えてくださったなんて」

本当にありがとうございます、とお伝えしたものの、

わたしとあなた の感想は、何だか口にするのは大仰な気がして
いえずじまいでした。


佐藤先生、今年の10月に国立の画廊「岳」で、14回目となる個展を開くそうです。


※私がこの作品をお願いしたときの、銀座和光での展示の記事はコチラ

コメント一覧

神奈川絵美
セージグリーンさんへ
こんにちは
>手びねりの色絵磁器,これだけでも珍しい
そういえばそうですよね!
以前、国立の展示で観たお茶碗はろくろを
使っていたような。
手びねりには
リズムやあたたかみを感じます。

>宮沢賢治の世界を
きものでも、何であっても、
物語のあるものには愛着を持ちますよね

セージグリーン
手びねりの色絵磁器,これだけでも珍しいですね。
絵美様はとうとう、、、、器までオーダーの
世界に嵌まっちゃいましたねー。
宮沢賢治の世界を掌で楽しむ、味わう、なんて
贅沢なんでしょう。
神奈川絵美
風子さんへ
こんにちは。ご覧いただけて嬉しいです

>深くそこに辿り着くのは 難しい
まさにまさに、
私が記事本文に書いた5行のうち
最初の2行こそがより重要で・・・という
思いが私の中に、ありました
あなたがわたしであるかのように
思いこんだり、
ふるまってしまうことの、なんと多いことか。

宮澤賢治、奥深いですよね。
佐藤先生のお陰で、いい思索ができました。
風子
あなたは あなた
わたしはわたし
とても単純で、でも なかなか 深くそこに辿り着くのは 難しい。
生きていると死んでいる
その あわいも とても不確か。

銀河鉄道の夜 を 表現した 絵美さんだけの作品。
ほんとに素敵です。

おまけ:なめとこ山の熊 も大好き (^O^)
神奈川絵美
香子さんへ
こんにちは
そうでした、そうでした!
佐藤亮先生は今までに何度も、
銀河鉄道の夜をテーマにした作品制作と展示を
行っているそうです。
宮澤賢治、大好きだとおっしゃっていました
香子
銀河鉄道の夜と題名を聞いただけで嬉しくなってしまいます。
地元の星ですからね〜
ありがとうございます
神奈川絵美
Tomokoさんへ
こんにちは
>うつわは友だちだなあ
ああ、わかるような気がします。その日そのときの
気分によって選ぶ器は、
自分の心持ちを反映しているような。
自分がいて、器があって、
生活のワンシーンが完成するのですよね。

>こんな風に響きあうの、素敵
そうですよね。
そこから、当初は思ってもみなかった物語が
生まれたりしてね。それも楽しいものです
Tomoko
作家さんの世界であり、見ていると絵美さんらしい好みが反映されているようでもあり、
互いに好む方向がつながり、こんな風に響きあうの、素敵ですね。
工芸好きのお友だちが今日のお昼ご飯に自分の好きな器の取り合わせを考えながら「うつわは友だちだなあ」と思ったってネットでつぶやいてましたけど、
その感じなんだかわかるな〜って思ったところでした。
神奈川絵美
朋百香さんへ
こんにちは
お忙しいであろう中、コメントくださいまして
ありがとうございます

>何とも言えず愛おしい
そうなのです! 色形だけでなく、存在そのものが
愛おしい、と感じます。

佐藤先生、春に新潟で展示があるそうなのですが
そこでも銀河鉄道をテーマにしているとのことで
とてもやりがいがある、と取り組んでくださいました。
朋百香さんもそうですが、
アートに携わる方は本当に、発想が泉のように
わいてくるのだなあ、と感じ入っています
朋百香
http://www.tomoko-358.com
絵美さま
素敵な作品たちですね! 作家さんにとってもこういうアプローチは普段の制作と違って、新鮮なのではないでしょうか。手びねりのどこか、温かさがあるフォルムが何とも言えず愛おしい。
これを手に取るたびに思い出も蘇って、愛着もひとしおでしょう。こういう物語のある作品って好きだな〜。
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