神奈川絵美の「えみごのみ」

旅とアート、巴水の見た雪

10日くらい前、新宿のSOMPO美術館へ観に行った川瀬巴水。


250点以上、充実の展示数+資料。
大正から昭和にかけて
廃れつつあった浮世絵に新風をと奮闘した
版元 渡辺庄三郎に見込まれ
美人画から風景版画へ転じ、

その作風で、私がとりわけ印象に残ったのは

雪の表現。


解説にもありましたが、巴水はわざと
版木をこするような、細かいひっかき傷をつくって
かすれさせていたとか。

このころの日本の版画は、日本と同等かそれ以上に
海外でうけがよくて、

これも巴水の作品。1950年。
サンタクロースにちょっと、違和感を持ってしまいますが
日米の文化交流が盛んだったころなのでしょう。

もっと時代が下り、あのスティーブ・ジョブズが
巴水作品のファンであったことはよく知られているようです。

ちなみに、ダイアナ妃がお気に入りだったのは吉田博。
二人に共通した画題、白馬槍岳の作品を並べてみました。

左が吉田、右が巴水。

私がもう一つ、今回の展示で興味を抱いたのは
「大正時代と旅」
というのも、少し前に国立近代美術館で観た民藝展でも
鉄道の発達にともない、作家たちが各地へ赴き民藝品を蒐集した、というような
記述を目にしたので・・・。

明治25年の鉄道網はこんな感じ


これが大正に入ると

(赤い線)
東北や北日本の方までのびているのがわかります。

巴水が旅をして多くの作品を遺せたのも
民藝の作家たちが活動を全国規模にできたのも、
鉄道網の整備があったから。

さらに、(鉄道とは関係ありませんが)
関東大震災があり、巴水の方は版木が焼けてしまうなど
被害を受けたのも、この時代を生きたアーティストには避けられない道でした。
その後の戦争は言うまでもなく。

民藝運動にしろ、川瀬巴水にしろ(渡辺庄三郎にしろ)
いいときも悪いときもいかに熱意の灯をたやさずにいるかが
歴史に名を残すかそうでないかの分かれ道なのかなあ、と
そんなことを思いました。

コメント一覧

kanagawa_emi
香子さん、こんにちは!
川瀬巴水、良かったらぜひぜひ、ネットで画像検索してみて
くださーい♡ 東北はじめ、旅情たっぷりの作品が
たくさんあります。
吉田博は絵画も確か(画材は忘れてしまいましたが)一時期
やっていたような。ちょっと巴水とはタイプが違いますよね。
一応、新版画に名前を連ねてはいますが・・・。
kanagawa_emi
原田さん、こんにちは!
西伊豆木負、ああ~美しいですよね、これぞ日本の美!
私は、タイトルは失念してしまいましたが、
東北の方の水や、夜の月の表現がきれいな作品が好きです。
(今、作品リストを見直しましたら「馬込の月」に
〇をつけていました 笑)

今回の展示では当然ながら? ジョブズに関する記述もあって
吉田博か川瀬巴水かと言われれば断然巴水、とジョブズは
公言していたらしいですね。
動の吉田、静の巴水、私の中ではそんなイメージです。
kanagawa_emi
まるたけさん、こんにちは!
巴水、お好きなのですね。よく安藤広重と比較されますが
私は巴水の作風の方がより静謐で、禅を好んだジョブズが
お気に入りだった理由が何となくわかるような気がします^^

>雪の中で傘を差した着物の女性
わかりますー「芝増上寺」かしら。巴水の表現する
神社仏閣の風景は、建物の赤と雪の白、
常緑樹の緑のコントラストがきれいで、国内外とも
人気ですよね。
原田
私も巴水は大好きです。どれか一点と言われれば、昭和12年(1937年)作の「西伊豆木負」ですかね。

巴水と言えば、すぐに思い浮かぶのが米アップルの創業者のスティーブ・ジョブズさんですよね。彼が購入した10点と同じものがSOMPO美術館にもあります。巴水の蒐集品は数十点もあるとか。

アップルは昔からの株主ですので、不思議な縁を感じます。
香子
川瀬巴水、存じ上げませんでした。
教えてくださってありがとうございます。
吉田博に比べれば同じ写実的でも版画らしい版画な気がします。
もう今年は外出はしませんから、こちらで楽しませていただきました。
まるたけ
巴水、大好きなんですよ。初めて千葉市美術館で見た時、とても感動したのを覚えています。鉄道の発展!そういえば、巴水が日本各地でスケッチした絵を思い出します。鉄道の発展なくしてはあり得なかったのですね。雪の表現、印象的ですよね~。「雪の中で傘を差した着物の女性」、とっさに浮かぶのは
その構図です。
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