神奈川絵美の「えみごのみ」

わが衣手に雪は降りつつ

(前回の続き)

先日は、この和歌がしっくりくるような
雪が、ここ世田谷にも舞いました。

まるで、この数日前



長年にわたり、お茶会を通して親交のある
表千家不白流 佐藤宗香先生の今回は自宅で開かれた
茶事のひとしきりを、天が眺めていたかのように。

「今回は、百人一首の
-君がため 春の野に出でて若菜摘む わが衣手に雪はふりつつ-を
テーマにしたんです」と先生。

読み人は光孝天皇。
「最初は、天皇が若菜摘むってどういうことなのかな、と不思議に
思ったのですけど」と先生。

「大事に想う人の、長寿を願うという意味が(若菜摘むには)込められている
そうです」

新たなスタートを連想させる春に、末永く元気でと願う気持ちは、
とても純粋なものに思います。

というわけで、今回の茶事も冬から春へと、繊細ながら希望に満ちた
あたたかなものになりました。


席入り前。亭主が打ち水をしてから順に
手と口を清めていきます。季節がら、お湯も用意してあり
ありがたい限り。


今回のお客は8名。
お軸には「春入千林処々鶯」の書が。
春に入り林のそこここで鶯が鳴いている…でしょうか。

「川の下を改めます」も新鮮で
みなで炉の炭の様子や炭に入れる
練り香も拝見。

今回は、先生が独自で始めた「三献の茶事」で
軽いお食事三品と、お酒が二種類供されました。

すべて手作りだそう。
左は帆立を三五八という麴漬けにしたもので
ふくよかな甘味と旨味が口に広がります。
真ん中は、写真ではわからないのですが中にたっぷり
桜エビが入った茶碗蒸し。
ここまでは、佐渡のとても軽やかで飲みやすいお酒が
出ました。
そして三品目はおむすび型のまげわっぱに
手鞠の若菜ご飯やお肉など。
お汁はフキノトウで、この苦みを味わってこそ
春がきた!という感じで嬉しかったです。
ここでは忘れてしまいましたが西の方の、
かなり濃い口当たりの強いお酒が出ました。

驚いたのが

このバラン。先生のお嬢さんが葉蘭一枚いちまいに
ハサミを入れて手作りしたそう。
みな感心して、お持ち帰りする人多数

そして、

各自に出されたお濃茶の前に
雪をかぶった菜の花を思わせるような主菓子(左)。
黄身あんがほろほろと口どけ良く、
それも雪のよう。

そしてお濃茶はこれまで私がいろいろなお茶会で
いただいたどの一服よりも、まろやかで芳醇で
まったく苦くなくて、心から美味しいと思いました。
(銘は失念…でも知ったとて同じようにはたてられないと思うので💦)

一度退室してから


ふたたび席入りすると、お床を見てみんな
「うわー、可愛い!」と思わず声が。


猫柳よりも小ぶりな、小豆柳というそうですが
銀色の鈴が枝にたわわについているようで
椿の紅色とコントラストをなして、何と愛らしいこと。

ここで、上のお菓子の写真の右
干菓子がふるまわれ(透明な箸置きのような形をしたお菓子は
木の芽をとじこめた琥珀かんで、外は飴、中はゼリーのような食感でした)
最後にお薄。

お食事中心の紹介になってしまいましたが
2時間強をみなとともにし、外から入ってくる光が
茶室をなでるように移ろっていくさまや
湯気の勢いや流れ方が時間の経過とともに変化していく様子も
五感で感じ取りながら過ごすお茶室でのひとときは
自分にちょっとした浮遊感や、心地よい緊張感や
何か、自然とたわむれるかのような開放感も与えてくれて
お茶席って本当にいいものだなあと思います。


お開きの後、先生、先生のお嬢さん
そして今回、誘ってくださったイラストレーターの
岡田知子さんと。
今回も、佐藤先生のお人柄がよくあらわれた
春のようなやさしさのある、ほがらかで楽しいお茶席でした。

コメント一覧

kanagawa_emi
>香子 さんへ
そうなんです。滅多にない茶事の機会。とても豊かな時間を
過ごせました~♪
香子
おお、記事拝見し始めて
「これはTomokoさんと同じ・・・」と思いましたら
ビンゴ〜♪ ご一緒だったんですね。
よかったですねえ〜 (^-^)b
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