神奈川絵美の「えみごのみ」

白洲正子ときもの展

都心へ出かける予定があったので、
ちょうどいい、と、この日から松屋銀座で始まった
「白洲正子ときもの」展を観に行くことに。

着て行ったのは……

日中、荒れ模様だったので
「きもの 英」さんの芽柳の着物に。
故 木村孝先生に昨年見立てていただいた一枚。
帯は織楽浅野さんの変わり七宝。
それに合わせて…というわけではないのですが
帯留めは七宝焼き。桐の柄…だったと思います。
帯締めは、伊賀くみひもの平井さんでいただいた三分紐を二本遣いで。

後ろはこんな感じ。
木村先生が選んでくださった、金茶の八掛がちらりと。


さて、展示の見どころはたくさんありましたが

私が特に、印象深かったのは
母 樺山常子氏から伝えられた、子ども用の赤い四つ身。
白洲正子氏のひ孫さんが、お直しして着ている写真も展示されていました。

改めて、着物って大事にすればこんなに長く、
着られるんだ…と感慨深く。

そして、展示のメインともいえる
「こうげい」の作家さんたち。
柳悦博の眼鏡織や吉野織は、
現代の作家さん-松尾鏡子さんや大高美由紀さんなど-に、
そのスピリットが受け継がれていることがよくわかるし、
立花蝶子、古澤万千子、田島隆夫、そして宗廣力三と
見る人が見れば一目でわかる、主張と力のある着物を眺めていると
つくづく、白洲正子の審美眼、センスの良さに感じ入ります。

白洲正子は古澤万千子の仕事を
何もないところから感じるままにつくっていく「詩人である」と評し、
田島隆夫に対しては当初
着ているうちに“腰”がなくなり、着物としては不完全、と告げ、
それを田島氏は黙って受け止め、何度も何度も白洲のもとに
布を織っては訪れたそう。

この、田島氏と白洲正子との手紙のやり取りも一部、展示されていて
白洲正子が田島氏に宛てて詠んだ歌が、
私の心を捉えました。

 「糸のなりに おりたる絹の
  あたたかさ
  つくりし人の 心にもにて」


白洲正子の、作家さんへの敬意、愛情を感じます。

その他、50歳まで探究していたお能関係の展示や
武相荘の書斎の部分再現、使われていた器
(私の好きな富本憲吉の箱や黒田辰秋の漆器も)
ふだん着もいろいろ。

展示の終わりの方、スキッとした藍の細い縦縞の着物が
とーってもステキで -シンプルな、普段きものなのに!-
「どんな(よそゆきの)着物でも、ぴったり身について
ふだん着のように見えればしめたもの」
との、
上のポスターにもある白洲氏の言葉が、なぜかここで
思い出されました。

白洲正子は、歳を重ねることにも非常に前向き、肯定的で
「本来は老いるほど美しくなるはず」との言葉も。
洋服は(単体としての)型が大事だけれど、
和服は組み合わせの面白さ、そして、「やつれの味」がいい

……「やつれ」なんて本来、ポジティブな意味では使われないけれど
いわゆる「枯れ」と同じように、
和ものに関しては魅力を帯びた表現になる。
ふと我に立ち返り
着物歴12年弱…というのは、大先輩方に比べればまだまだ、
まだまだなのだろうけれど、
着物と出合えて、ここまで着物を着ながら歳を重ねてこられて
良かったな、と思えた展示でした。


※「白洲正子ときもの」展は、来年16日まで。松屋銀座内のインフォはコチラ

コメント一覧

神奈川絵美
こむぎさんへ
こちらこそ、先日はありがとうございました
とても楽しかったです(おしゃべりしすぎて、ごめんなさい!)。

私も、お母さまから受け継がれた着物はとても印象に残っています。「母は(俗)世間を知らないので好みが保守的」(だったかな、記憶が曖昧ですが)との、白洲さんのコメントが掲示されていましたけれども、審美眼は素晴らしいものがありますよね。
こむぎ
今晩は。先日はありがとうございました♪いろいろお話を聞き、刺激になりました。

私も行って参りました、「白洲正子ときもの展」。用事の合間をぬってで少々慌ただしかったのですが、見応えのある展示でした。お母様の着物(あんなに綺麗に保存されている江戸時代の着物を見たのは初めてです)の素晴らしさ、良いものを見て彼女の審美眼は養われていったのですね。

神奈川絵美
朋百香さんへ
こんにちは あら、プチチャット状態
そうなんです、想い出の着物…
でもご縁あって、見立てていただいて、本当に
良かったと思っています

白洲正子さんの言葉には力を感じます。
私たちの、励みにもなりますよね。
朋百香
http://www.tomoko-358.com
絵美さま
木村先生お見立てのきもの、よくお似合いです。
今となっては思い出のきものになってしまいましたが・・・。
白州正子さんのお言葉も沁みますねぇ。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「美術展・工芸展レポート」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事