見頃を明らかに過ぎた様を「名残」と呼び、
それを以て鑑賞の期間を終わらせる。
しかし私は、その後さらに、「余韻」という時期があっても
いいのではないかと思うことがある。
例えば、木を見上げても殆ど花がついていないのに、
風にのってなお、はらはらと、どこからか花びらが運ばれてくる景色は、
祭りが終わった後の寂しさや、甘い思い出や、
生命の尊さを思う気持ちを、しばし胸の中で疼かせるのに十分美しいと
思うのだ。
そんなことを考えながら、4月第二週の金曜日、
佐藤節子先生を囲むお食事会と、オペラ鑑賞のため横浜へ出かけた。
選んだのは……
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白地に漆糸で染めた刺しゅうが施されている小紋と、
佐藤先生作の「小鳥帯」。
えっ、「余韻」といいながら、桜がどこにもないって?
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実は帯揚げにうっすらと、影だけ見せる花いかだ。
右の写真は、左から着物の通し裏、帯、ショール(こちらも佐藤先生作)で、
ブルー系を揃えたコーディネートにしてみました。
まず向かったのは、元町の「シェ・クロッシェ」。
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2年前まで、この界隈では超有名なフレンチ「修廣樹」だったお店。
オーナーが変わり、店名も変わったが、シェフは同じ方なので、
“感激の味”は健在。
ところが、変わったオーナーもご高齢を理由に、14日でお店を
閉めてしまうとのこと。
とても残念……。
この日は
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人生の先輩方とお食事。
みな、佐藤先生の帯を締めて。
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右上、佐藤先生の帯は、生け花に使われる雲龍柳だそう。木版の桜のお着物に合わせて。
左上の方の帯は、
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白っぽい着物にも黒っぽい着物にも合うのよ」(先生)
左下の方の帯は、桜吹雪をイメージしたたたき染め。花びらも描かれている。
右下の方の帯は、
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-目に見えるところだけでなく、見えないところにも“桜らしさ”を表現したくて-
夕方のオペラまで時間はたっぷり。
ランチのフルコースをおしゃべりとともに楽しんだ。
もう最後なのと、半個室だったので、デザート以外のお皿を全部
写真におさめました。ああ、美しい!
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左上
・アミューズ
右上
・春爛漫な野菜の冷製スープ・パレット
(白が玉ねぎ、緑が確かグリーンピース)
サーモンのセビーチェと共に
左下
・フルーツトマトと山独活(ウド)、豆腐のエスプーマのカプレーゼ
右下
・ハンガリー産 鴨胸肉の網焼きローストとキャベツのマリアージュ、
柚子胡椒香るジュ
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オペラの方は……
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佐藤先生の義理の息子さん、大川信之さん(テノール)が伯爵役でご出演の
「セビリアの理髪師」。
フライヤーにもある通り、「気軽にオペラ!」とのことで、
ピアノ&チェンバロの伴奏のみ、ホールもコンパクトな
さしずめ「サロン・オペラ」といった感じ。
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これは過去の別演目の様子ですが…雰囲気が伝わるでしょうか。
舞台美術も要所は押さえて、シンプル。
迫力の点ではフルコンポーネントのオペラには及ばないけれども、
何となく、昔の西欧の貴族が自分の館に歌手を招き、披露してもらっている……
かのような、いい意味でのプライベート感、特別感があり、
これはこれで楽しかったです。
何と言っても「セビリアの理髪師」ですから、
小さい舞台でなおさらドタバタ感も盛り上がったし
(まあ、かなりお笑い要素たっぷりの演出で、吉本新喜劇風な印象も
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それを好ましいと見るかそうでないかは人によるでしょう)
改めて、有名オペラの筋やアリアをおさらいするのにも良かったです。