さて、取材は和やかなムードで無事終わり、
せっかくだからと自由が丘の街を少しのんびり歩く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/81/5d4306c5467dd26a61ca7740afcb026b.jpg)
駅にほど近いサンセットアレイには、
南欧を思わせる白を基調としたお洒落な店が並ぶ。
その中ほどにある小さな美術館に立ち寄った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/b2/c82dafe8880379dd04fd2c15d957464c.jpg)
ガレやドーム、ルソーといった、
アール・ヌーヴォーの作家たちによるガラス工芸品が展示されている。
入場料と引換にもらった簡単なパンフレットには、
-1889年のパリ万博で花開いた様式-とあるから、
以前書いた柴田是真とほぼ同時期だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/91/d540ae1cab9b90b1b45257f1307dff3d.jpg)
撮影可とのことで、何枚か写真を撮った。
のびのびと浮かび上がってくる草花や蝶々。
やわらかな色彩と光。
ジャポニズムとの出合いにより伝統から解き放たれた表現様式は
当時の欧米の人々に深い感銘を与えたという。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/79/bdd7e3b7d2b50606050187a4751319c1.jpg)
この、キノコみたいなフォルムは、ドーム兄弟独特のものだそう。
左は、葡萄にカタツムリが宿を求めているデザイン。
今見ても、斬新だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/0d/4d450f3bf2f9d3610b11031733bea159.jpg)
中でも印象に残ったのはこの花瓶。
こちらもドームの手によるものだ。
ほかの作品が愛らしく情感豊かなのに対し、
これだけブラック&ホワイトで冷たい感じ。
モチーフは「アイリス」。解説によると、
花の命が尽き枯れていく様をあらわしているそう。
そしてこの作品にはもう一つ、「蜻蛉」という主役がいる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/77/b6a5d78f95db63e35ca45fc548262c34.jpg)
アップで撮ってみた。
透明な上に透明なおうとつで描かれているので、近寄らないと
よくわからない。
アイリスが咲き誇っていたときには蜻蛉も生き生きと、色をまとって
花に身を預けていたのに、
枯れてしまえばこちらも色を失い、儚げに彷徨うばかり…という意味らしい。
これだけだと何とも救いがないが、解説には続きがある。
この写真ではよくわからないが、実は一番下の脚部に、
球根が描かれているのだ。
さらに、新芽や蜻蛉の幼虫も…。
つまり、自然の摂理で今見えている命は尽きても、
季節が巡るまで命は繋がれ、やがて新たな命が生まれる、という
実は穏やかな希望に満ちたテーマなのだ。
うーん、深いな…と唸ってしまった。
影のごとく、黒く枯れたアイリスが、なお凛とした姿でいるのは
次の時代へ命を繋いでいるという誇りからなのか。
1893年の作品、もう120年近く昔のアイリスだが、
今もこうして観る人に、命の尊さを問うている。
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/5c/a1056aaa9ebe90c9f86f0dd9c662717d.jpg)
美術館そばの雑貨店で、
何となく石鹸を衝動買い。右はグレイン入りで、ほのかな甘い香りが
癒しになってくれそう。タイでつくられたものだそうです。
次回の更新は8月17日前後の予定です。
お盆の期間、コメントをいただいた場合多少アップが遅くなると思いますが、
ご了承ください。