すぎな之助の工作室

すぎな之助(旧:歌帖楓月)が作品の更新お知らせやその他もろもろを書きます。

万の物語5

2005-07-03 20:15:53 | 執筆状況
4ではなく、5です。(4は、四方の賢者のよもやま話。御絵描き刑事VANに書いたものを再録する予定です)

書き出しは、今のところこうなってます。


 北の主の手の中で、白い大きな星は次第にその密度を増して縮み、明るさを減じ、やがて、全てを引き込む闇となる。宙の終末点。
 あるいは、
 主の手の中で、巨大な恒星はその激しい命を爆発によって終わらせ、それは新星を育む温床となる。星の子宮。
 しかし、主には一片の感情も無く。自ら治める北の世の全てに心までも下賜しつくして、もはや手元には無いかのように。
「後はまかせた」
 必要最小の言葉を残して、宙から館へ帰る。
 白い新殻衛兵らは一礼して主を送り、
 黒い累機衆たちは一礼して主を迎える。
 星の一生を無感慨に見守り、にもかかわらず、それを好むと聞く。
 北の賢者は変わり者とも、孤高の神とも、呼ばれていた。

「おーい」
 北の果ての館へと、きまぐれに訪れてひっかき回していくは、南の賢者ノウリジ。
「酒もって来たぞーう」
 紅い酒瓶を持ち上げて、おもうさま左右に振る。
「いらん帰れ」
「単刀直入に酷ッ!」
 玄関にすら入れることなく、門の際で腕組みしたインテリジェは不機嫌につぶやいて、追い返すつもりだった。
「なんだよー。上がらせてくれよお。館に居るってことは、ヒマなんだろー? 語り明かそうぜ? 俺が一人でしゃべるからさあ」
 荒野の地に地団駄踏む紅い賢者に、紫の賢者はすげなく首を振る。長い薄紫の髪が、北風に冷たくなびいた。
「お前にくれてやる暇などない帰れ」
「お前の語尾ってもしかして『帰れ』なのかよ? んならさあ、『いらっしゃぁーイ!』に変更しないか? 客の入りがずいぶん違うぞ?」
「星華(セイカ)。そなたの主を連れて帰れ」
「申し訳ございません。お上がいつも不躾な口を利きまして」
 インテリジェは、とうとうノウリジを無視して、彼の背後で楚々と頭を垂れ続ける紅い頭巾を被った紅い巫女に言葉を掛けた。
 どうしたことか、彼女はいつも頭巾を深く被っている。若い女の姿であれ、老婆の姿であれ。
 今返った声の調子は乙女。ならば、頭巾からこぼれて流れる黒灰色の髪は生来の色である。
「えー? 失礼なのはインテリジェじゃないかよう?」
「お上。ごあいさつを」
 静かにひたりと言いつけられて、外見が少年のノウリジは、ぶうと頬を膨らませる。
「うええ、へいへい星華ばあちゃ、おっと。星華、わかったよ」
 祖母と呼ばわろうとして口をつぐみ、巫女として名前だけを呼んだ。
「こんにちは北の賢者殿。お日柄もヨロシクご機嫌伺いにキマシタ」
「機嫌は悪い帰れ」
「ほらぁ、な? 何言っても駄目なんだってこいつは。オジャマしまーす」
 家主から言葉の石つぶてを投げつけられたにもかかわらず、ノウリジは押し入り強盗のように館内に侵入した。転移の術で。
「……」
 インテリジェが、冷たい怒気を放った。
「帰れというに、」
「お上! なんということを!」
 星華が慌てて恐縮する。
「申し訳ございません。インテリジェ様、」
 さっと深く一礼した。
 そこに、小雪まじりの北風が、ごうと吹いた。
 南の巫女の紅い頭巾が風に煽られる。
「……!」
 長い髪が舞い、頭巾が外れた。
 涼やかな切れ長で黒灰色の相貌が現われた。
 思わず見入る紫の賢者の、彼らしくも無い感情ある珍しい行動に、はっとした巫女は右手で顔を隠した。両の目を。
「まあ、ご覧にならないでくださいませ。いらぬ災厄を招きますゆえ」
 初めて聞く、慌てた声だった。
「あー、インテリジェ、見たらえらいことになるぞう?」
 館に入って今や好き放題していると思われたノウリジが、北の賢者と南の巫女との間に姿を現し、インテリジェへぱっぱと右手を振った。背後に巫女をやって。
「何故だ?」
「だって星華は……」
 言いかけて、紅い賢者は思案顔になった。
「どうした?」
 促す北の賢者の耳に入った、言葉の続きは、
「ここじゃなんだから、館の中でまあ酒でも飲みながら」


万の物語5 「お嬢さんを私にください」

2005-05-30 22:24:49 | 執筆状況
はい。書いてますよー。
嫁取り物語(違う)
お嫁さんにください、といえば、わたくしが思い浮かべるのは以下のようなやりとりでして。

インテリジェ(着慣れないスーツでガチガチに緊張):
「お父さん、お嬢さんを私にください! きっと幸せにいたします!」

雪葉父こと、白柳(腕に覚えあり!):
「ぬわにぃー! お前のような勝手な男に、大事な雪葉をやるわけにはいかーん! 帰れッ! 今すぐ帰れッ!」

雪葉母こと、柏陽(お父さんたらっ オロオロ):
「お、お父さん、落ち着いてくださいな……」

雪葉(一人娘だ):
「お父さん……。私たちのこと、祝福してくれないの……?(涙)」

白柳:
「父さんは許さんぞ! こんな男なんか!」

セイシェル(妖しい美女 なぜか台所の勝手口から登場):

「アアンわかるわぁーん! お父様のキモチ! アタシにはイタイほどわかるわーん! セイシェルは、お父様の味方よぉぉーん!」

白柳(ギクッ!):
「ああっ! こらセイシェル! 家には来るなとあれほど言っただろう!?」

柏陽(呆然):
「あなた……なんなのこの女は? どういう関係!?」

白柳(オロオロオロ):
「関係って……アレだよお前、セイシェルはあの、ただの、アレだお前、秘書、そう、秘書だよ」

柏陽(嘘付けっ激怒):
「中間管理職のあなたに『秘書』なんかつくわけないでしょうっ!? わかった! 愛人ね!? なんて人なの!」

雪葉(ショック……):
「お父さんたら、不潔、不潔よっ!」

セイシェル(いやん困っちゃうん):
「ああん! アタシをめぐって争いがッ! なんて罪な女なの? アタシって……あはん」

インテリジェ(このすきに……):
「雪葉、二人で逃げよう! 僕(!?)と二人っきりで、どこか遠くで暮らそう!」

雪葉(このすきに):
「ええ! 連れて行って!」

白柳(逃がさんぞーう!):
「なにいー?! 雪葉は渡さんぞ!」

柏陽(それはこっちの台詞よあなた!):
「その前にあなた! この女は本当はなんなのか、私にわかるようにキッチリ説明してください! そういえば月に何度か残業で遅くなるって言ってかなりな午前様なのは、……この女と!?」

白柳(なんか言い訳っ言い訳考えなきゃ):
「いやあのおまえ、そんなわけないだろう、そんなお前あれだよこれはその、」

セイシェル(ああん、家庭崩壊!?):
「アタシってやっぱり、罪な女なのねーん!?」




えーと、途中からかなり脱線してしまいました。
「お前のような男に雪葉はやらん!」という白柳父さんの帰れ発言までが、書きたかったところです。
……セイシェルおそるべし。
上のようなやりとりはありませんが。

ある意味嫁取り物語です。


万の物語5 キーワードは

2005-05-29 18:36:27 | 執筆状況
いらっしゃいませこんばんは。
万の物語「5」 インテリジェと雪葉の出逢いの物語。
途中経過です。現在、ファイルサイズ67kbです。

キーワードは「裏腹」です。

ノウリジが可哀想な目に遭います。が、自業自得だと言っておきます。
ノウリジの巫女、星華も出てきます。

結末はもちろん誰がどう見てもハッピーエンドですが、そこにいたるまでに割と色々あります。

キーワードは、「裏腹」です。


万の物語5 書いてる途中です。

2005-05-26 22:10:36 | 執筆状況
こんばんは。
今日は2度目の記事ですが。

万の物語5は雪葉とインテリジェの出逢いの物語です。
今のところ、インテリジェは、雪葉に関係する場面のみに出てくるのですが。
これではまずいです。
なぜかというと、
雪葉に関わるインテリジェの姿、それはつまり「非常に限定的な場面でのみ発現する性格」ですから。

えー、雪葉に関わってない、単品でのインテリジェの姿、これを書いておかないことにはですね。
このままですと、彼のイメージは、
「インテリジェ = めろめろでおのろけで後ろ向きに悩む青春ばく進恋愛青年。~もう君しか見えない~」
という、面白くも的を射た……いえ。端的なものになってしまいます。

単品での冷たいつれない感情がない彼を書きますです。