すぎな之助の工作室

すぎな之助(旧:歌帖楓月)が作品の更新お知らせやその他もろもろを書きます。

更新しました。

2005-07-31 00:10:48 | 更新日記ですよ
いらっしゃいませこんばんは。
二週間ぶりの更新となりました。微妙に忙しい二週間でした。来週は忙しいかどうか未定なのですが。
さて、さっそく更新のお知らせです。

マジックキングダム第51~53話更新しました! 
51話、お悩みカイIN沈思の森(解決編?)ですが。カイがぐるぐる悩んでいてわかりにくい文章です。
少年は、どうやら悩みの出口に向かって一歩踏み出した感じです。
要は「人は人、自分は自分だ!」と割り切ることができれば悩み解決なのでしょう。他人と自分の世界観は同一ではないということと、世界と「世界観」とは別物である、ということ。
少年はそれに向かって一歩踏み出しましたです。

52話、
謎の刺客
謎の女の子
謎です。……ううむ、正体は誰なのか、バレバレですかね?

53話、
これはわかりやすい話かと思います。
ルイルが家に帰ったら、家は全部蝋(ろう)になってましたとさ。だからルイルは怒りましたとさ。てな話です。

という、3話の更新でした。

それでは、今夜はこれにて失礼します。寝ます。
素敵な一週間をお過ごしください。


時に浮かぶ、月の残影56

2005-07-28 00:41:34 | 即興小説
「菊、」
祈職の長は、体ごと振り返った。
菊が、こちらに、出入り口に向かって歩いてくるところだった。

私が立っていたところは、入り口から進んでわずかのところだった。
目の前に広がる部屋は、「月の昇る地平」に面した大きな窓にそって、つまり塔の外壁にそって作られていた。塔の内側部分は全て壁で仕切られていて、塔の広さから考えるに、この一面の壁の向こうにはまだ部屋がある。
その「壁の向こうにあるはずの部屋」から、出てきたのだ、菊は。
だって、今まで彼女の姿はなかったのだから。

私は最初、「あら、私を出迎えに来たのかしら?」と思っていた。
幹部の娘が「きしょく」に加わるというのだから、当然の行動だと思った。
向こうから挨拶するというなら、私も応じようではないか、と、……横柄な気持ちで、いた。
でも、

「戻りなさい、菊。まだ休んでおけ」
「長。翔伯に、話したいことが、あるの。……降ります。少しの間」
長と菊との会話。抑えた調子の。当時の私はわからなかったが、深刻な様子の。
私は、それを聞いて、菊が私に挨拶するつもりがないことがわかると同時に、……翔伯の名前が耳に入って、私は、

「ちょっと! あなた翔伯と一体どういう関係なの!?」

思わず、声を荒げていた。

「あなたには関係ない」
すぐに返された答え。
私は、誰が言った言葉なのか、一瞬理解できなかった。
長の身体の向こうにいる、隠れて見えない菊本人からだった。私が期待していた、恋のさやあてのどろどろした感情は、彼女にはなく。ただ、石が石であり、木が木であると言いたいかのような、……当たり前を言う口調だった。私は、すぐに返答があったことと、そんな答え方に、虚をつかれて、くってかかることもできなかった。
「あなたには関係ない。長、私、行きます」
祈職の長は、無言で菊の進む道を開けた。
彼女が、長の右側から、姿をあらわした。
銀無垢の長衣をまとった、菊。
白い長髪。青白い肌。金色の瞳。
すげなく通り過ぎる。
……くやしいが、また、みとれてしまった。
そうだ彼女がその衣装をきているから、私は美しいと思ったのだ、と、今更気付いた。



時に浮かぶ、月の残影55

2005-07-27 00:20:34 | 即興小説
「銀無垢の長衣が好きならば、」
祈職の長は、父の正面に立っていた。私ではなく。そして、……当時の私にでもわかる、ひどく冷え切った口調で、言った。
「貴方の令嬢が、それほど銀無垢の長衣を好きだというのならば、」
首だけで、背後を振り返り、長は言い放った。
「誰か手の空いている者。……ああ、萩、彼女に、新品の銀服を用意して渡しなさい」
萩、と呼ばれた赤紫の髪の娘は、その静かな瞳を長に向けると、うなずいた。
「わかりました。少々お待ちください」

今、この階にいる祈職たちは皆、白い衣を着ている。
菊の姿がないことに、私は気付いた。
「……菊は?」
ふと、口に出た言葉に、父が反応した。
「黙れ」
彼は隣に立つ私には目もくれず、ただ床を見下ろしていた。注がれ続ける祈職の長の鋭い視線に耐えるように。
私は、父がたったそれだけの返事しか寄越さず、しかも命令口調である理由が、全くわからなかった。
「……お父様?」
もっときちんと答えて欲しいのに。
私の疑問も、父の萎縮も無視して、長が静かに切り込んだ。まるで、触れれば切れる刀をそっと振り下ろすように。
「貴方の令嬢に、銀服をやります。お引き取りください。祈職としての籍も用意します。しかし籍だけです。令嬢の居場所は、これまでどおり、貴方の部屋です。よろしいですか? 今後二度と、彼女をここに寄越さないでください」
長の背後から、銀の長衣を持った「萩」が歩いてきた。
「長、どうぞ」
彼の左後ろで楚々と立ち止まると、萩は衣を差し出した。
「すまんな」
長はそれを事務的に受け取り、私の父に差し出した。
「さあ。お引き取りください」
父は、まるで地面に頭を触れさせんばかりに深く深くお辞儀をして、それを拝領した。
私は、私はその時、ひどく侮辱された気がして、腹を立てていた。どうして私を歓迎してくれないの?と。
親子の物になった美しい銀無垢の衣は、まるで、私たちを憐れむように……いや、私を、私の無知を憐れむように、輝いた。

その時だった。
只一人、銀無垢の長衣を着た者が現われたのだ。
私は、その名を聞いた。

「……菊、まだ出てはいけない!」
「でも翔伯に伝えることがあるから、」

……菊。


時に浮かぶ、月の残影54

2005-07-25 00:47:59 | 即興小説
真っ黒といえばいいのか、空の中といえばいいのか。
祈職の階は、そんなふうだった。
床も壁も、磨きぬかれた黒御影石。外壁はほぼ一面の大きな窓。黒い壁床は、景色を鏡のように反射している。
他の階は、こんなではない。灰色の岩の壁のままだったり、岩壁に木の壁を設えてあったり。とにかく、人の住む空間であるのだ。職場であったり、応接室であったり、控え室であったり、生活が見える場所だった。
ここには、そんなもの、これっぽっちもない。黒、または、空。

私は、正直、ぞっとした。この階の光景に。
まるで「天に召される最中」のようであったから。

「お、お父様、」
おろおろと、右隣に立つ父のそでを握って、不安をまぎらわそうとするが、彼はすげなく振り払った。……その冷たいしぐさが、私にとっての悲劇の始まりを告げる合図のように思えた。
お父様やっぱり私やめます、との言葉が、私ののどの奥に湧き上がった瞬間だった。
まるで運命の歯車が、犠牲者の悲鳴にきしみながら残酷に回るように、祈職の長が、私たちを迎えに来た。祈職の長は、高齢の男性だった。沢山のしわを顔にきざみ、長い髪は真っ白だった。
先に一礼したのは、父だった。
「先ほどは失礼しました。お取り込み中のところ」
応じる長の声は、驚くほど張りがある。声だけ聞けば、父よりもずっと若い。外見は老いているが、声や、目の輝きには力があり、そこだけはとても老人とは思えなかった。
「いえ。済みましたので、今ならよろしいですよ。どのような用件です?」
「これが」
父は私の背中に左手をやり、ぐい、と前方に押し出した。嫌がる羊を処分場に引き出すような、有無を言わさぬあらっぽさだった。
「祈職になりたいと申すのですよ?」
「……」
長は、驚いて言葉を失って、次に、奇妙な顔をした。
「何故ですか?」
「桔梗、理由はお前の口から言うのだ」
父はそう勧めた。いや、命じた。
「先ほど見ました、菊さんの姿がひどく印象に残りましたの。銀無垢の長衣。とても素敵なお姿でしたわ?」
私は、なんとか外見上は華やかに自信に満ちた態度で言った。
長は、いっそう奇妙な表情になって私をしげしげと見つめ、次に、眉をひそめて父を見た。
父は、にがみばしった顔をして、言った。
「……知らんのです」
長の返答は素早かった。
「ではお引き取りください」
「そんな!」
私が食い下がった。断られたとなると、無性に腹が立った。私の価値をちっとも理解してないと思ったからだった。自尊心がひどく傷ついた。
「そんな! 私はきしょくになることを望んだのです! どうぞ仮にでもお雇いくださいませ!」
「貴方は祈職を侮辱するのですか?」
長の、この、静かではあるが冷え切った、北の果ての湖水のような言葉は、私にではなく保護者に向けられた。……この娘に言っても理解できないだろう、と思われたのだ。
「滅相もございません」
父は、耐えられないほど苦渋に満ちた顔をして真摯に首を振ると、深々と頭を下げた。
「娘のたっての希望。そして私の娘としての最後の希望なのです。どうか、どのような形でも結構ですので、祈職として雇っていただけませんか」




ちょっと夏休み。

2005-07-23 20:29:08 | お知らせです。。
いらっしゃいませこんばんは。
今日は更新の日なのですが。
すみません、ちょっと夏休みさせていただきます。
明日の朝から用事がありまして。

それでは、すみませんが失礼いたします。
素敵な一週間をお過ごしください。