すぎな之助の工作室

すぎな之助(旧:歌帖楓月)が作品の更新お知らせやその他もろもろを書きます。

プリンちゃんを探して……

2006-02-01 00:28:46 | こばなし。。

こんばんは。
こばなしを書きます。
家で飼っている猫の話です。
うちには三匹の猫がいます。
そのうちの一匹が「プリンちゃん」
「ちゃん」までが名前です。
名前は萌えキャラですが、
実際はシャムネコっぽい、ごっつい猫です。
すごく怖い顔をしています。迫力大有りです。マフィアのボスに抱かせるのにぴったりな極道グッズです。
ところが性格はなかなか優しいです。ちょっと「ゴーイングマイウェイ」な部分もありますが。
その上、人間に「お話」をしてくれます。なにを言っているのかはよくわかりませんが、「ニャガニャガニャガ」と話しかけてくれます。「そうなのか。うんうん。そりゃあすごいなあ」などと応じると「ニャガニャガ」とさらに話してくれます。

そのプリンちゃんが、先週木曜日からいなくなりました。
彼は若いオス猫なので、ははーん武者修行の旅にでも出たな、と、土曜日まではのんきに考えていたのですが。
日曜日も不在。
さすがに不安になり、「どこかのタヌキ罠(田舎なのでそんなトラップが設置されてます)にでも引っかかってるんじゃないかえ?」と、探しにでかけました。
家の裏にある、田んぼにいきまして。
「プリンちゃーん! プリンちゃーん!」
と、絶叫しながら(大丈夫。田舎なので近所迷惑になりにくい過疎環境ですよ)
あぜ道を歩きます。
と、あぜ道に、散らばった猫の毛を発見しました。
毛の色の構成が、白、焦げ茶、薄茶、と、プリンちゃんの毛の色と一致しました!
「おおっ、プリンちゃんの居た形跡が!」
と、その散らばり毛を、まじまじと見ます。
「……」
でも、だんだんと、悪い予感がしてきました。
毛に、皮がついてるのですね。
「……なんか、食いちぎられた跡、みたいな?」
だんだんと、体が冷たくなるのを感じながら、私は周囲を見回しました。

するってえと、
背後の田んぼにですね。

「!!!!!」

猫さんの、変わり果てた遺体が……。食い散らかされてます。
ていうか、バラバラ……。

私は、かなりなショックを受けまして。呆然と「うわー」などと小さな声を漏らしまして、
一目散に、自宅の台所にいる母に報告したわけですよ。

「おかあさん。プリンちゃんを見つけたけど……ばらばらになってたよ?」
私呆然。

看護婦だった母、冷静です。
「ええ? まあ、かわいそうなことしたねえ」
と、おっとりつぶやきながら、現場に行ってくれました。
私はもうそんな惨状は二度も見る気力もなく、遠くから、母の検分を見つめておりました。

帰ってきた母。
「いやーあれはプリンちゃんじゃないよ。いなくなって三日くらいでしょ? あの死体はミイラ化してたし(私は動転してそこまで確認できず)。それに骨格も小さいから、違うと思うよ?」
「そ、そうかなあ?」

しかし、日曜日の夜もプリンちゃんは帰ってきませんでした。
最初は、「違うよあれはプリンちゃんじゃないよ」と言い切っていた母も、
「……あれなのかなあ?」
と、言うようになりました。

月曜日、午前で仕事が終わって帰ってきた私に、母は、
「あの猫の遺体を埋めたんだけどね。鼻の肉が黒かったんだよ……もしかしたらプリンちゃんかもねえ」
と、言いました。
「でも、三日であんなには、ならないと思うんだけどねえ」
母は信じたくない様子。
私は、外に出て、また「プリンちゃーん!」と呼びつつ、探し回りました。
その夜も、プリンちゃんは帰ってきませんでした。

私は母に、伝え忘れていたことがありました。
あぜ道に散らばっていた毛のことを。
そのことを話しました。
母はそれは見てなかったみたいで、「いや、でもねえ、……うーん、色がねえ」と、困惑していました。

私の半分は「あれはプリンちゃんだ」と思い。
私のもう半分は「いやいや希望を捨ててはいけないよ」と思ってました。
しかし、だんだんと、「でも本当にあれがプリンちゃんだったら、あんなになって死んだのに、苦しかったろうに、なのに飼い主がその事実を否定してしまうのは、プリンちゃんが可哀相なんじゃないだろうか……」と思うようになりました。
もう死んじゃったのなら、何もできないけど、ごめんね苦しかったろうねと弔いの気持ちをせめて表さないと、と思いました。

そんな、月曜の夜が更けまして。
月曜の深夜になりまして。
私、そこで、ふと、木曜日の状況を思い出したのです。

「あの猫。……そういえば、失踪前に何食べてたっけ? キビナゴ(小魚)20匹と、豚の角煮2切れと……。あれ? むちゃくちゃ食べて失踪してるな。これは、……食べ貯め……?」
その、「すごい食事量」を思い出しましたら、急速に気持ちが明るくなりました。
あれだけ大量に食べたのなら、4日くらいは平気で遊びまわるだろう。奴はそんな猫だ。

母にそのことを話しますと、「そういえば、水曜日も叱られるくらい大量のキビナゴを食べあさってた」とのこと。
……ふ、ふふふ。もしかしたら。
だんだんと、明るい兆しが見えてきました。

そして火曜日の朝。
早起きの父のいる台所へと、プリンちゃんは無事帰還しまして、沢山のご飯を食べまして、またどっかにいきまして。
夕方またふらっと家に帰ってきて、またもやキビナゴ20匹、鳥の刺身ひとつかみ、猫缶三分の一、を平らげて、
またどっかにいっちまいましたとさ。
私は「ええー、また行っちまうのかい? もうちょっと居たら?」と引きとめましたが、「ニャ」と言って、出て行きました。
つれないクール猫もあったものです。

母が言いました。
「やっぱりねえ。死後三日じゃあ、あんなにミイラはならないもんね」
おっかさん、あんた、正しかったよ。
しかし私は、プリンちゃんに言いたい。
この、うんこプリンちゃん(「ちゃん」までが名前です)!!!
飼い主がどれだけ心配したと思っとるんじゃー!!!
ここ二日の間に味わった「しんみり感」を返せー!(←?)
まあ無事でよかったですたい。