カヤ日記

活動する研究者、かやちゅ。@カヤニストの行動記録
カヤネズミの研究&保護活動や野生生物の保全に関する話題をつれづれに

草地の保全をめぐる話題3件

2012-10-16 | 気になるニュース

最近の、草地の保全をめぐる3つの話題を紹介します。
いずれも文化的側面からの保全の重要性が大きく扱われていますが、生物多様性保全の観点からも、重要性は高いです。
近年、草地は開発などの影響で急速に減少しており、また草地をすみかとする多くの絶滅危惧種が生息していることから、草地は生物多様性のホットスポットと言えます。
私自身、カヤネズミの調査や観察会で訪れたことがあり、何とか生き物たちのすみかが失われることがないようにと願っています。

1.奈良平城宮跡地の埋め立て・舗装
世界遺産に指定されている奈良平城宮跡地の一部で、埋立て・舗装工事が進められています。
今回、45000m2の土地が埋め立てられることになり、地元の市民を中心に反対運動が展開されています。
既に工事予定地の草刈りが始まっており、来月には埋め立てが行われる予定とのこと。
近接する草地は、近畿で有数のツバメのねぐらとして知られています。
工事の問題点や反対運動の内容は、以下のサイトに詳しいです。
平城宮跡を守る会

2.淀川鵜殿の新名神高速道路建設
凍結されていた新名神高速道路計画が解除され、大阪府高槻市鵜殿の淀川河川敷のヨシ原の真上を通ることがわかりました。
高速道路の橋脚建設によるヨシ原の直接的な破壊と、維持管理のために毎年行われているヨシ焼きが、高速道路の開通後は実施が困難になると予想されることから、ヨシ原の衰退が懸念されています。
鵜殿のヨシは、雅楽の篳篥(ひちりき)の蘆舌(ろぜつ=リード)の材料として利用されています。
工事による鵜殿のヨシ原の衰退は、雅楽の材料の不足につながります。
危機感を持った雅楽関係者と地元でヨシ原保全活動を行っている人々が保全運動を展開しています。
SAVE THE 鵜殿ヨシ原 ~雅楽を未来へつなぐ

3.伏見・宇治川河川敷のヨシ焼き復活への取り組み
伏見のヨシ原では、毎年ヨシ焼きが行われてきましたが、2010年、宇治川河川敷で行われたヨシ焼きの煙が広がり、国道1号線が通行止めになった事態を受けて、以後ヨシ焼きが中止になりました。
火入れが行われなくなったヨシ原にはツルがはびこり、ヨシを刈ることができない状況になっているとのこと。
一帯のヨシは桂離宮などの文化財建築の材料や、市無形民俗文化財に指定されている、地元の三栖神社の炬火祭でたいまつに使われていることなどから、地元のヨシ屋さんと、自然観察を行ってきた市民団体が中心になって、ヨシ焼きの復活を目指す取り組みが行われています。
京を掘る:ヨシ焼き復活プロジェクト=伏見・宇治川河川敷/京都(毎日新聞2012年10月5日)

*写真は鵜殿の風景(2003年撮影)。


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