カヤ日記

活動する研究者、かやちゅ。@カヤニストの行動記録
カヤネズミの研究&保護活動や野生生物の保全に関する話題をつれづれに

チュウヒ危機:木曽岬干拓地にメガソーラー誘致方針

2012-02-23 | 気になるニュース

木曽岬干拓地にメガソーラーを 三重知事、誘致の方針(朝日、2012/2/22)

愕然とした。こんな計画が持ち上がっていたとは。
誘致が実現した場合、干拓地内の保全区域はどうなるのだろうか。

記事には全く触れられていないが、木曽岬干拓地の一部は保全区域として整備され、全国で60ペアしかいないと言われる猛禽類のチュウヒや、カヤネズミが生息している。
日本野鳥の会は、チュウヒの保護に関する要望書を提出した。

実は、私は木曽岬干拓事業の保全区設置案について、三重県から相談を受けたことがある。
正確に言うと、保全区の青写真がすでにできあがった段階で、保全区内でカヤネズミの生息地保全をどのようにすればいいかについて、若干のアイデアを出した。

私が知る範囲で情報提供すると、干拓地はもともと干潟だった場所を締め切って出来た土地だそうだ。
保全区の広さは約80haで、2006年から5年かけて造成が行われるとのことだった。
チュウヒの保護区にしたいというのがメインの意図で、カヤネズミは愛知県RDBにランクされているので、オオヨシキリとともに、ついでに保護しましょうということになったそうだ。
その後2009年に三重県から届いた情報によれば、保護区の工事が進み、ヨシ原が育ち、周辺にチガヤ群落もできて、カヤネズミにも良い環境になっているとのことだった。

他紙の記事も拾い読みしたが、保全区のことについて触れた記事はなかった。
三重県側が意図的に伏せたとすれば、不当な情報操作だし、新聞各紙が記事執筆の過程で不要だと切り捨てたのであれば、記者の見識を疑う。

木曽岬干拓地は三重と愛知にまたがるが、COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)は、愛知県で開催されたのではなかったか。
自然環境を破壊して、ソーラーパネルを設置するなんてナンセンスだ。

この話は、要するに「草地の生きものが軽視されている」ということだと思う。
「どうせ草地なんかどこにでもあるし、生きものだってどこにでもいるでしょ」ということだ。
実際には草地には多様な動植物が生息していて、それぞれの種の好みの環境(マイクロハビタット)を利用している。
草地環境には、バリエーションがあり、質の幅があり、単に草が生えている場所を指すのではない。

先日の草地シンポでも紹介したが、草地の面積はここ30年間にほぼ半減している。
現在はまさに、草地性の生きものの危機の時代なのだ。
今ある環境を出来るだけ残して欲しい。そして、多くの人がもっとこの件について関心を持って欲しいという気持ちから、このエントリを上げた。


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