田園都市の風景から

筑後地方を中心とした情報や、昭和時代の生活の記憶、その時々に思うことなどを綴っていきます。

師走の床屋で世間話

2024年12月22日 | 話の小箱

 散髪に行ってきた。もう人目を気にする歳ではないが、それでもさっぱりした頭で正月を迎えたいというもの。季節柄、椅子に座っての床屋談義は紅白歌合戦の話題である。いまのマスターは二代目。昔は大晦日の床屋は夜遅くまで忙しく、客が茶の間で紅白を観ながら順番待ちをしていたと、彼が子どもの頃の思い出話になった。

 紅白歌合戦が終わると、11時45分からゆく年くる年の番組が放映される。騒々しくも華やかな紅白の会場から一転、映像は深々と雪が降る中、神社仏閣の初詣風景になる。除夜の鐘が聞こえてくる。

 ある年から紅白の番組が拡大され、7時過ぎからの長丁場になった。多様化した音楽シーンを3時間弱の額縁では納めきれなくなったのだろう。しかし何とも間延びした番組になり、劇場で映画を観るような凝縮した時間は失われてしまった。それ以来、紅白歌合戦とは縁がない。

 いまのマスターは関東での修業組である。20年ほど前、先代の親爺が今度息子が帰って来るんですよと嬉しそうに話していたのを思い出す。理容と美容の垣根が規制緩和されたとも言い、息子の帰郷を前にして店を今風に模様替えした。三色のサインポールは要らないと言われたそうだが、こればかりは床屋の象徴だからと譲らず、結局、軒先にかけた小さなサインポールで妥協した。

 夫婦でやっていた床屋は間もなく代替わりした。しっかり者の二代目は業態を拡張し、いまはあちこちに支店を出して従業員も十数名を数えるまでになった。前の親爺も元気なうちは店に出ていたが、研修なのか若い子が入れ替わりで立つようになる。客層も中高年のご婦人を見かけるようになった。昨年秋には全面改装し、照明やインテリアなど都会的でハイセンスな店に変身した。もう昔のような町の床屋ではない。

 今回は私の両隣りは若い女性だった。初めての経験である。場違いのようでどうにも落ち着かない。ソファーで待っている客も若い女性。散髪をすませて店を出たらまた若い女性がやってきた。理容業界も変化していて、カット専門の安い店も増えている。いまの店は先代からの長い付き合いだが、来年はどうしようかと思案している。

 写真は別の店。放送業界では床屋ではなく理髪店と言い換えているそうだ。八百屋は青果店、魚屋は鮮魚店というふうに。

 

 

 

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