60年ほど前、私は町の中心部に近い幼児園に通っていた。
当時は戦後の復興期で、皆が貧しい時代であった。昭和31年の経済白書が「もはや戦後ではない」と宣言する少し前のことである。手元に2枚の幼児園の集合写真があるが、1枚目は思い思いの私服で写っている。もう1枚は卒園前で、皆おそろいの制服である。
入園した頃は幼児園のすぐ近くに住んでいた。しかしある時、2キロも離れたところに引っ越すことになった。当時送迎バスなどあるはずもなく、私は途中、2本の国道を越えて園まで一人で歩いて通うことになった。信号機などまだ数少ない時代である。横断歩道もあったかどうか。
ある日、園の近くまで来て昼食のパン代5円を忘れたことに気が付き、青くなった。その日はパン食の日であった。引き返すこともままならず、うなだれて国道を横断していると、道の真ん中に何か落ちている。しゃがんでよく見ると、なんと5円玉である。ああこれで助かったとその5円玉を拾い、そのまま幼児園へ向かった。
その日の運が良かったのか、悪かったのか。ただその時、偶然とはあるものだと子供心に思ったものである。
この道の真ん中で5円玉を拾った
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