田園都市の風景から

筑後地方を中心とした情報や、昭和時代の生活の記憶、その時々に思うことなどを綴っていきます。

小料理屋で懐かしき人々と再会(下)

2024年08月13日 | 遠い日の記憶

 I記者が赴任の挨拶に来た時は印象的だった。やや強面の人物がのっそりと入って来て、ぶっきらぼうな物言いである。だが話してみたら好人物だった。女性職員がどこの業界の人かと緊張したと笑っていた。

 二次会で飲み屋街を歩いていたら、外車がクラクションを鳴らして追い越して行った。ある記者がうるさいと怒鳴って飲食ビルのバーに入った。少しして背広姿の二人組がいまのはどいつだと階段を駆け上がってきた。バーのママと上司の支局長がとりなして何とか事をおさめたが、当の本人は素知らぬ顔をしてカウンターで飲んでいる。その日はタクシーで帰るついでに彼を社宅まで送った。すると家に上がれと言う。深夜の11時である。

 市長選挙が近づいた頃、現職の対立候補と目されるY氏が職場に来たことがある。ニンニクの匂いをぷんぷんさせていた。彼が帰ったあと、しばらくしてN記者が来た。こちらもニンニク臭をまき散らしている。笑いをこらえて「昨晩、焼肉屋でYさんは何て言ってました」と鎌をかけたら、どうして知っているのと顔色を変えた。この時期、記者たちは情報収集に余念がなかったのである。

 この夜は三十代、四十代に仕事で出会った人々と再会して、楽しいひと時だった。当時の記者の中には、マスコミとは違う世界に入った者もいる。地元紙の出身で、文学賞を取り小説家になったM君である。デビューが遅かった分、作家人生を生き急いだのか多作だった。数年前に亡くなったが、彼もこの店の常連で、本を出すたびママさんに献呈していた。その本が壁の棚に並んでいる。

 記者たちの溜り場であった小料理屋はなくなった。彼らはまたどこかに居心地のよい止まり木を見つけただろうか。

 

           壁の棚に並べられた本             

  

 

 

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2 コメント

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昭和の時代 (雨上がりのペイブメント)
2024-08-18 17:04:48
「事件記者」いいドラマでしたね。「七人の刑事」もよかった。古き良き時代の昭和がよみがえってきました。(上下)読ませていただきました。
 同時に歌謡曲ちあきなおみが歌う「紅とんぼ」を思い出しました。路地裏酒場の店じまいの歌です。
歌詞の一部を紹介します。
   紅とんぼ
ちあきなおみ
空(から)にしてって 酒も肴も
今日でおしまい 店仕舞
五年ありがとう 楽しかったわ
いろいろお世話に なりました
しんみり しないでよ…ケンさん
新宿駅裏 紅とんぼ
想い出してね…時々は

 ちあきなおみが歌うとしんみり泣けてしまう。
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こんにちは (九州より)
2024-08-19 09:53:17
「七人の刑事」は毎回楽しく観ていました。
冒頭の旧警視庁をバックにした、テーマ曲のハミングとスキャットをいまでも思い出します。
あの頃は他にも良いドラマが放映されていたように思います。テレビの草創期でみんな一所懸命だったのでしょう。
ちあきなおみの「紅とんぼ」は知らなかったのでYouTubeで聴きました。彼女はいい歌手ですね。
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