☆2013年2月25日の読売新聞の社説は多くの人に強い疑問を抱かせた。
☆読売新聞が 「被曝は大したことはない。原発は再開すべきだ」と
☆考えて紙面を作っていることは良くわかっている。
☆でも、情報に関する社会的公器であり、数々の優遇措置を得ている。
☆大新聞にはそれなりの社会的倫理が求められる。
【読売の原発信仰とその系譜】放射能災害が国土を汚染し、国民の命を危険にさらした今も!! 今日の驚き/ウェブリブログ
http://kimito39.at.webry.info/201211/article_37.html
武田邦彦ブログより
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読売新聞・社説の評価
「genpatsuyomiuritdyno.83-(12:26).mp3」をダウンロード
長く尊敬されていた新聞の社説のレベルが
落ちたことはよく言われることだが、
ここは新聞の論説委員などの奮闘に期待したい。
ところで、2013年2月25日の読売新聞の社説は多くの人に強い疑問を抱かせた。
読売新聞が 「被曝は大したことはない。原発は再開すべきだ」と
考えて紙面を作っていることは良くわ かっている。
でも、情報に関する社会的公器であり、数々の優遇措置を得ている
大新聞にはそれなりの社会的倫理が求められる。
それは「意見は自由だが、事実には忠実」ということだ。
特に日本の 新聞は「事実」を国民に知らせる役割が強く、
それだけに、読売、朝日、毎日などの大新聞は
事実を伝えるという点でプライドを持ってもらいたい。
今回の社説での問題点は、「被曝の限度を上げるべきだ」
という「考え方」そのものではなく、
「その根拠とされている事実の整理と認識」にある。
新聞は必ずしも中立でなくても良 いので、
読売新聞が「被曝はたいしたことはない。
食品の安全は100分の1則でなくても良 い。原発は再開すべきだ」
という立場を取るのは問題がない。
ただ、取材体制、記者クラブの特権、
大規模印刷設備などを有する情報企業としての「最低の倫理」があり、
それは「意見は自由だが、事実 から離れない」ということだ。
それが「普通の 国民や企業」とは違う「大新聞の倫理」であ る。
その見地から社説を見ると次の点が指定され る。
まず第一に「食品基準が厳しすぎる」という記 述だ。
その理由として「ICRPの1年1ミリは
「超えても直ちに危険としていない」ものである」という論述だ。
これには2つの間違いがあ る。
(1) 日本は法治国家であり、日本の法律で
1年1ミ リが定められているのであり、ICRPで決 まっているものではない。
読売新聞が「日本には国民を被曝から守る法律がない」
という見解ならそれを述べ、もし「法律がある」ならなぜ
ICRPを持ち出すのかについて見解が必要で ある。
(2) 日本の基準、1年1ミリは「直ちに危険があ る」ことをもって
基準値を決めているのでは無く、少なくとも5年程度の被曝で、
長期間にわたり障害がでないことを基準としている。
だから 「1年1ミリが、直ちに危険ではない」というのは
日本の法令には何も関係の無い論理である。
このような低レベルの論理を大新聞が使ってはいけない。
(3) 日本の食品安全はかなり前から「100分 の1則」
(危険と思われる値の100分の1を基準 とする)が適応されていて、
私の記憶では読売 新聞もこの基準を支持していた。
従って、被曝だけにこの原則を適応しないなら、
その事を明 示しなければならない。
(4) 日本の法令の基準は「外部内部合計して1年1ミリ」であり、
現在の食品の被曝の暫定基準値は内部だけで
1年1ミリであり、法令は守 られていない。
「多くの食品が出荷できなかっ た」とか「国際的に厳しい基準」というのと、
「日本の法令を守れ」というのは違う。
また第二の問題点は、自然放射線、医療放射線 と比較していることだ。
これにも数々の事実誤 認と論理矛盾がある
まず世界で1年10ミリシーベルト以上の自然放射線の
場所があるというのは事実だが、そこに 住む人が
「日本人並みの健康を保つことができるか?」が問題である。
私の調査によれば、中国、インド、ブラジルの いずれもが平均寿命が低く、
日本の昔のように 「ガン」という病気すら知られていない場所で あり、
インドでは海上生活と陸上生活の区別が なく、
ブラジルでは道路をコンクリートで覆っ て線量率が低くなっているが
統計は混合してい るなどの問題があり、
「世界の高線量地帯が日 本の生活のクオリティーを持っているか」の評価はない。
次に医療被曝は「足が腐ったから切断する」という場合も
医師が傷害罪に問われないという理 由と同じで、
「被曝しても良い」ということで はなく
「病気を防ぐことと比較して被害が少な い」という
判断を医師がした場合に限定され る。
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読売新聞が本当に被曝限度を上げても良いと考えているなら、
まずは「なぜ、これまで1年1ミ リだったのか?」、
「世界は統一して1年1ミリ だが、
それを上げても貿易などに支障は無い か?」などより
根本的なことを事実に基づいて、しっかり議論しないと、
反論する方もあまりに幼稚で反論が前進的結論にならない。
「結論ありき」で事実を歪め、論理が破綻しているのはまずい。
読売新聞はその歴史と伝統を重んじ、日本をリードする新聞として
もう少し シッカリした論説をすることを期待する。
これ では世間一般の議論以下であり、
「・・・すべ きである」などと大新聞が言うには品位を欠 く。
(平成25年3月1日)
武田邦彦
(C)武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ
より転載引用、音声コチラ↓↓
http://takedanet.com/2013/03/post_3b71.html