国立新美術館。
企画展示室1Eでは「遠距離現在 Universal / Remote -現代美術が観測した、個人と社会の距離感-」開催中。
会期は3月6日~6月3日。
グローバル化に伴う様々な問題からくる漠然とした不安定を抱えたまま、突然に疫病によるパンデミックに覆われた。
人の移動は停止したけど、資本と情報は止まることなく、逆に資本や情報の本質が見えてくるようになった。
この展覧会は、「Pan-の規模で拡大し続ける社会」、「リモート化する個人」を軸に、このような社会的条件が形成されてきた今世紀の社会の在り方について取り組んだ8名と1組の表現を通じて、私たちのいる世界の個人と社会の距離感について考えていく。
という。
出展作家は、、井田大介、徐冰、トレヴァー・パグレン、ジョルジ・ガゴ・ガゴシツェ+ヒト・シュタイエル+ミロス・トラキロヴィチ、地主麻衣子、ティナ・エングホフ、チャ・ジェミン、エヴァン・ロス、木浦奈津子。
エヴァン・ロス。
エヴァン・ロス(1978~)はアメリカ生まれ。ベルリンを拠点に活動。
制作にハッキングの概念を持ち込む。
この展覧会では、コンピューターのキャッシュに蓄積された画像を用いたインスタレーション〈あなたが生まれてから〉は、本人も知りえない自画像を写す。
展示室めいっぱいに貼られた写真。
この出処は他ならぬ自分(今回の展示ではエヴァン・ロス)のパソコンのキャッシュ。
とっくに削除したはず画像はもとより、勝手に出てきた広告写真やら検索過程であったなんやらかんやらが、パソコンやスマホに持ち主の意思とは無関係に自動的に残さているのだ。
ものすごく便利なのだけど、ずいぶんと恐ろしい世の中に生きてる事実にあらためて気付くのだった。
木浦奈津子。
木浦奈津子(1985~)は鹿児島生まれ。鹿児島在住。
一貫して、風景、特に日常の風景を独自の距離感で見つめる。
この展覧会では、大小様々な絵画で構成することで新しい風景をひろげていく。
チャ・ジェミン。
チャ・ジェミン(1986~)は韓国生まれ。ソウル在住。
この展覧会では、日本初紹介の映像作品〈迷宮とクロマキー〉を上映。
ネット強国を自負する韓国社会の片隅で、インフラを作る作業員の姿から、大量の情報を支える個人の労働を浮かび上がらせる。
特になにかあるわけではない。
ひたすらに作業員の作業を映し出す。
ネット社会の現実のインフラは人間の手作業でつくられていくのだ。
ネット社会はつながらないと途方に暮れるしかない脆弱な社会とも言い換えられるのかもしれない。
そういえば、会場にはベビーカーを押した親子連れが何組を来場してた。
子供がこういう展覧会を観るのは大事なことだけど、ちょっと幼すぎるんじゃないかとも思ったりなんかしてたら、「怖い!怖いよぉ」と半泣きになって親が慌てて連れ出している幼児がいた。
確かに怖い。
私もそう思わぬでもなかったよ。