ジヌとサンヒョクが話し始めたとき、ちょうどチヨンが二人のためにオレンジジュースを入れて書斎の前に立っているところだった。チヨンは漏れ聞こえた話に体が凍り付いて、図らずも立ち聞きしてしまう形になった。
「サンヒョク、お前いつからユジンとチュンサンが兄妹だって知ってたんだ?」
「記憶が戻った時に思い出したらしいんです。」
「記憶って?じゃあチュンサンだった時から兄妹だって知ってたんだな?」
「ええ」
「ミヒがチュンサンに話すはずないのに、どうして知ってたんだろう?」
「そうですね、ちょっとそこがわからないんです。とにかく、二人は別れることになったんです。しかもやっと再会できたのに、兄妹なんてひどすぎると思います。僕も信じられなくて、二人があまりに気の毒すぎると思ってます。今となっては、ユジンが僕を愛してなくても、別れなければよかったと思っています。そうすれば、彼女も苦しまなかったのに。ただ僕を恨むだけで済んだのに。それでも僕はかまわなかったんです。今でもそれを後悔してます。」
それを聞いて、ドアの外にいるチヨンは顔色を変えた。このままではサンヒョクがまたユジンに取り憑かれてしまう。チヨンにとってそれはどうしても許せないことだった。チヨンは険しい顔のまま、ドアの前を離れるのだった。またユジンに忠告してやらなければ、と決意して。
一方で、サンヒョクは気持ちを吐露すると席を立った。そんな息子を、ジヌはそっと呼び止めた。
「そういえばチュンサンとユジンは年が違うと思うんだが、何で同学年なんだろう?」
「さあ、よくわかりませんが、とにかく二人は同い年ですよ。しかも誕生日だって2か月ぐらいしか違わないです。」
サンヒョクはそのまま去っていったが、ジヌは顔色を変えた。男性なので妊娠期間についてはよくわからなかったが、これだけは明らかにわかった。それはミヒとヒョンスの別れ、ヒョンスとギョンヒの結婚を時系列で考えてみても、チュンサンがヒョンスの子ならば、チュンサンとユジンが同学年になるはずはないのだ。あの夜、ミヒが酔っぱらって自殺を企てて川に入ろうとしたあの夜、自分が彼女を止めて勢いのまま関係を持ってしまったあの夜、ヒョンスとミヒの別れについてはつぶさに聞いていた。ミヒは馴れ初めから別れまで泣きじゃくりながら打ち明けたのだ。だから別れた月もはっきりと覚えている。計算上チュンサンがヒョンスの子であるはずがなかった。だとしたら、だとしたらチュンサンは誰の子だろう。月日を逆算してみると、答えは一つしかなかった。ジヌはそれを証明するために、たった一つの事をするべきだ、苦しむ二人の若者のためにも、モヤモヤした自分の気持ちと決別するためにもチュンサンに会いに行かなければならないと決意をするのだった。