皆さまこんばんは。冬のソナタを冬のうちに完結したくて再開します。しばらくコメントをお返し出来ませんがご了承くださいませ。お付き合いいただいてありがとうございます😊
二人は市場からまた民宿に帰り、オンドルで暖まった部屋の中で、ぴったりとくっついていた。ユジンは幸せそうに、チュンサンのためにミカンの皮を丁寧に剥いている。
「ねぇ、チュンサン。今日初めての喧嘩をしたね」
嬉しそうに歌うように言うユジン。しかし、チュンサンは沈んだ声で
「そう?」と答えるだけだった。
「ユジナ、今日は怒ったりしてごめんな」
「全然大丈夫よ。だって、私が悪かったんだもの。」
「違うよ、俺が悪いんだ。」
「でも、、、」
「わかった!じゃあ、明日何でも言うことを聞いてくれる?」
ユジンの明るい声に、ハッとしてチュンサンがユジンを見つめた。
「だってお詫びの印でしょ。喧嘩ってのもいいわね。だって、言うことを何でも聞いてもらえるもん。ねえ、チュンサン。明日は何をしようか?」ユジンは屈託なく問いかけてくる。しかし、チュンサンは「明日は、、、」と言ったきり何も言わなくなってしまった。そして話題をそらすように話し始めた。
「ユジナ、考え事をしながら歩いちゃだめだぞ。だから道に迷うんだよ。」
「わかったわよ」
「よそ見もしないこと。それから、意外に君はそそっかしいんだ。スキー場でも設計図をなくして大騒ぎになったじゃないか。そうだ、断ることも覚えなくちゃだめだよ。なんでも引き受けちゃうんだから。断った方が相手のためになることもある。わかるだろ?それから、、、」
目をそらして黙って聞いていたユジンが口をとがらせて言った。
「ちょっと、チュンサン、あなた本当に変よ。まるで遠くに行っちゃうみたい。なんで私の欠点ばっかり言うのよ。もっと長所はないの?長所を言ってってば。」
ユジンはチュンサンをバシッとたたいて見つめた。しかしチュンサンの顔はとても悲しそうで、遠くを見たままだった。
「ないよ」言い放ったチュンサンの顔は今にも泣きだしそうで、ユジンはドキッとした。チュンサンはそのまま立ち上がってもう一度「ないよ」と言うとタバコを吸いに外に出て行ってしまった。ユジンはそんなチュンサンの後姿をふくれっ面をしたまま見つめていた。この時のユジンは、まだチュンサンの気持ちが全く分かっていなかった。
その夜、隣の布団に眠るユジンを見つめながら、チュンサンは動けずにいた。朝になるまでにここから出なければならない。
しかしユジンから離れるのは本当につらくて、夜明け前まで見つめているしかなかった。やがて少しだけ夜が白み始めたのを感じて、チュンサンは言った。
「ユジン、ごめんよ」
そして眠っているユジンのほほにそっと口づけた。これがユジンと過ごす最後の日なのだと悲しく思いながら、ユジンの幸せを祈った。
チュンサンはそっと上着を羽織ると、夜の闇が残る浜辺に立ち尽くした。そして、ポケットの中からユジンとの思い出の品を次々と取り出すのだった。まずは両方とも表が出るように貼り合わせたコイン。脳裏に「やった、表が出たわ」とはしゃぐユジンの声が響いたが、思い切って海に投げた。次は二人で撮った写真が入っている使い捨てカメラ。
最後に、ユジンに贈ったポラリスのネックレス。チュンサンは泣きながら海に投げ込んだ。二人の大切な思い出が消えて行く。悲しくて悲しくて涙がこぼれ落ちてしょうがなかった。膝をついてがっくりとうなだれると、緩やかな波音だけがそっと寄り添ってくれた。チュンサンは寄せては返す波をいつまでも泣きはらした目で眺めていた。
そのうち、そっと肩に手を置かれる気配を感じた。静かに振り向くと、そこにはサンヒョクが立っていた。サンヒョクの目もまた、チュンサンと同じくらい泣きはらしていた。サンヒョクはいったいどこから見ていたのだろうか。
「サンヒョク、来てくれたのか、、、ありがとう」
「うん」
サンヒョクは何も言わずにチュンサンの隣に座った。二人は一言もしゃべらずに夜の闇に包まれた海を眺めていた。どれくらいそうしていただろうか。地平線がうっすらと薄紫に彩られ始めたころ、チュンサンがまたぽつりとつぶやいた。
「サンヒョク、ユジンを頼む」
二人は静かに立ち上がった。サンヒョクはチュンサンの目をまっすぐに見てうなずいた。チュンサンの目は痛みと悲しみに覆われていた。そしてチュンサンはサンヒョクを残して、そっと去っていった。残されたサンヒョクはチュンサンの後姿をじっと見つめるのだった。