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ユジンは自室でインテリア雑誌をペラペラとめくっていた。ふと見ると時計が夜の7時をつげている。そろそろサンヒョクが来るころだ。今夜は放送局の先輩DJのユヨルとの食事を強引にセッティングされた。ユジンはため息をついて、チャイムの鳴るドアを開けた。![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/ad/1a53d7575bcb133603931a16b087760d.jpg?1634995219)
サンヒョクはユジンの浮かない顔に気がつかないように振る舞い、ユヨルの待つロビーでユジンの肩を強引に抱き寄せた。久しぶりに感じるユジンの柔らかさ。ユジンは眉を顰めて身体を硬らせて小さな抵抗を試みた。肩を掴む手をそっと外そうとするが、その手はガッシリとしていて、まるでユジンを檻に閉じ込める手錠のようにほどけなかった。サンヒョクは素知らぬふりでニッコリと笑って言った。
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そんなことはお構いなしに楽しそうに話すユヨルとサンヒョク。
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そこに、散歩から帰ってきたミニョンが通りかかった。
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「行こう」何ごともなかったかのように満面の笑みを浮かべるサンヒョクに手をひっぱられて、二人はレストランに向かった。
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サンヒョクはユジンの浮かない顔に気がつかないように振る舞い、ユヨルの待つロビーでユジンの肩を強引に抱き寄せた。久しぶりに感じるユジンの柔らかさ。ユジンは眉を顰めて身体を硬らせて小さな抵抗を試みた。肩を掴む手をそっと外そうとするが、その手はガッシリとしていて、まるでユジンを檻に閉じ込める手錠のようにほどけなかった。サンヒョクは素知らぬふりでニッコリと笑って言った。
「いつも尊敬している先輩を紹介するよ。ユヨル先輩です。こちらは僕のフィアンセ、チョンユジンです。」
ユヨルは眩しそうな笑顔でユジンを見つめた。
「これはこれは、サンヒョクがいつも自慢しているユジンさんにやっと会えた。しかし、噂以上の美人だなぁ。」と言って2人を羨ましそうに眺めた。二人がレストランに入ると、そこにミニョンとキム次長がいるのが見えた。笑いながら食事していたミニョンの顔が一瞬で曇った。サンヒョクがユジンの肩を抱いているので、たまらなく不快な気持ちになったのだ。しかし、それ以上は顔には出さずに、下を向いて食事を続けた。ユジンはミニョンたちに気づくと、気まずそうな顔で一礼した。
しかし、サンヒョクはこれ見よがしに隣のテーブルを選んで、ユジンをエスコートするのだった。そして、イスを引いてまるでユジンをプリンセスのように座らせた。ユジンは居た堪れずに、チラチラとミニョンの方を見るしかなかった。
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そんなことはお構いなしに楽しそうに話すユヨルとサンヒョク。
「ユジンさん、こいつこの前ね、クラッシックのラジオなのに、あなたの好きな『スミレ』をかけて、始末書を書いたんですよ。ここで放送するのもあなたがここで働いているからなんですよ。もういい加減に早く結婚してください。こっちの身がもたない。あははは。」
「大丈夫です。すぐに結婚しますから。」
「よーし、その日のオープニングは『結婚行進曲』だな。そうそう、司会もやってやるから。」
話はどんどん盛り上がっていく。ユジンは胸が潰れる思いで、俯いて聞いているしかなかった。
しばらくして、この状況にたまらなくなったミニョンはキム次長と席を立って一礼した。キム次長は呆れた顔で「見せつけますね。ユジンさんの婚約者、怖いなぁ。お前を牽制してるぞ。やってらんないなぁ。さあ、奢るから飲みに行こう」と言った。
しかし、ミニョンは独り寒い空気の中で散歩して頭を冷やすことを選び、ゲレンデに向かうことにした。
一方でサンヒョクとユジンは、食事を終えてユヨルと別れた。ユジンは深刻な顔でサンヒョクをカフェに誘い、話をしようとした。しかし、サンヒョクはつまらない話を楽しそうにしていて、話す隙を与えない。ユジンは話が途切れるのを待って、
「サンヒョク、無理して元気なフリしないで」と言った。
「ねぇ、聞いて。わたしね、この前の話は良く考えて結論を出したの。一時の気の迷いじゃないから。」
すると、サンヒョクから笑みが消え失せ、怖い顔つきになった。
「だから?」
「もうやめて。わたしの決心は揺らがないの。」
「君の決心は受け入れられない。言ったはずだろ」
ユジンは説得を諦めた様子で席を立ってカフェを出て行った。
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その後をサンヒョクが急いで追う。そして、カフェの外で捕まえると、両手でがっしりと掴み、ユジンを離さなかった。サンヒョクは10年の長い年月と、結婚寸前でするりと手からこぼれ落ちた愛情を、手放すことは出来なかった。
「僕は君に言われたとおりにしなくちゃいけないのか?そんなことできるわけないだろっ」
「ごめんね、サンヒョク。お願いだから分かって。お願いよ。」
「僕を愛さなくていいんだ。愛さなくってもいい。どうせ今までだって僕のひとり相撲なんだから。」
ユジンはその言葉を聞いて驚愕した。今までサンヒョクがそんなふうに思っていたなんて。
「サンヒョク、あなたはずっとそんなふうに思っていたの?!あなたはずっと自分だけが愛していて、わたしが愛してないって本当に思っていたの?!」
サンヒョクはユジンがひどく驚き、傷ついた様子を見て、間違った言葉を言ってしまったことを悔やんだ。慌てて
「今まで通り愛してなくてもそばにいてくれるだけでいいから。頼む。」
と今度は懇願しはじめた。しかしユジンは
「だめよ。そんなこと出来るわけないでしょう。そう思ってるなら絶対に無理。従えない。」とキッパリと言った。
「理由は?、、、答えろよ‼️」
サンヒョクはカッとなって、ユジンを怒鳴りつけ、がっしりと掴んだ肩を揺さぶった。ユジンの目には涙が溢れだした。
「辛いとか悲しいなんて言葉で誤魔化さずに言ってみろよ‼️、、、言えないのか?言ってやろうか?原因はイミニョンさんだろ?おまえが否定しても分かってるんだ。イミニョンさんが好きなんだろ⁉️」
サンヒョクはますます興奮してユジンを揺さぶり続けるのだった。
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そこに、散歩から帰ってきたミニョンが通りかかった。
「ちょっと、何してるんです?」
二人は我に返って、じっとミニョンを見つめた。ミニョンはゆっくり近づいてきて一言言った。
「ユジンさん、部屋に戻ってください。」
「なんだと⁉️」
「サンヒョクさんとは僕が話すから、ユジンさんは部屋に戻って」
サンヒョクは思わずカッとなりミニョンの胸ぐらを掴んだ。しかし、ミニョンは全く動じずに言った。
「殴りたければいくらでも殴ればいい。だか、これ以上ユジンさんを苦しめないでくれ。」
「何だって⁉️」
「殴らないんですか?人を殴るなと教わった?」
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サンヒョクは驚愕した。冷静な目でじっとサンヒョクを見つめるミニョンは、まるでカンジュンサンそのものだった。サンヒョクは過去の亡霊を見たような顔で、思わず掴んでいた手を離してしまった。それを見たミニョンは、ユジンを連れて帰ろうと腕を掴んだ。しかし、ユジンは呆然としているサンヒョクを見捨てることが出来なかった。
「ミニョンさん、ごめんなさい。わたし、サンヒョクと、もう一度きちんと話して見ます。」
そしてサンヒョクの腕を引っ張って、去っていくユジンを、黙って見送るしかないミニョンだった。
その夜、ミニョンもユジンもサンヒョクもそれぞれの部屋で物思いにふけっていた。
ミニョンはユジンを、ユジンはミニョンを、そしてサンヒョクはカンジュンサンのことを繰り返し考えていた。
しばらくするとサンヒョクは、意を決したようにチェリンに電話した。チェリンに、公開放送があるから、ヨングクとチンスクと一緒にスキー場に連れて、遊びに来てほしいと言ったのだ。チェリンはサンヒョクの言葉を聞いてほくそ笑んだ。サンヒョクは何かを企んでいる。面白いことが起こりそうだと。こうして奇しくも関係者全員がスキー場に集合することになったのである。