2022-1-23 21:42:13 | 未来記
4.帰って来たンだよ!
キラシャ達は、ルビーおばさんやパールの姉弟と、ハグしてお互いの無事を祈り、再会を約束した。
防衛軍の車が迎えに来たので、近くのアフカ・エリアの軍事基地へ向かった。
そこから大型の空軍機で、多くの兵士と長旅をともに過ごし、MFiエリアへと帰って来た。
島は、津波が海岸を超えて、押し寄せた跡が残っていた。海のゴミの回収は進んでいるものの、それでも海からやって来たゴミが、あちこちに積み重なっている。
エアポートも、端っこが崩れ、地面もいたるところにヒビが入っていた。
ドームの中も、きっと大変なのだと、一行は覚悟して、同乗した兵士達に別れを告げ、コメットの駅に向かった。
ところが、駅に着いてみると、運行はすべて中止。ボックスも、地震で転送環境が安定していないため、使用禁止の区域もあり、チルドレンズ・ハウスまで歩いて移動した。
廊下を行き交う人達も、ケガをした人や不安げな様子の人が多い。通りを明るくするための装飾品が、落ちて散らばっているのが痛々しかった。
チルドレンズ・ハウスに着くと、デビッドおじさんとオパールおばさんが保護者として、スクールの先生にパールとマイクの再転入手続きを申請するために、職員ルームへ向かった。
子供達も、新学期をどの部屋で過ごすようになるのか、内心ドキドキだ。
先生やスタッフも、スクールの復旧作業で忙しそうだったが、パールとマイクが戻って来たことがわかると、何人か手を休めて集まり、しばらく会話で和んだ。
パールのことは、ニュースで流れたので、先生も皆見たよと嬉しそうに話してくれた。
ただ、あのままアフカにいたら、パールにもっと危険なことが起こるかもしれないと、心配してたそうだ。
キラシャは、やっぱりパールは帰って来て良かったンだと、ホッとして、パールと目を合わせて微笑んだ。
ユウキ先生は、次の君達の担任はまだ決まっていないが、地震で新学期は少し遅れるかもしれないから、部屋割りが決まるまで、保護者の所で待機していなさいと告げた。
そこで、キラシャがパパに連絡すると、いなくなった小動物を探すのを手伝ってくれるなら、パール・マイク・ケンもキラシャの家で預かろうと言ってくれた。
子供達は、会社に向かうオパールおばさんとデビッドおじさんに、動物が見つかったら、ドリンク配りの手伝いをすることを約束して、キラシャの家へ向かった。
キラシャの家に着くと、ママが待っていてくれた。みんなであいさつをして、部屋に通してもらうと、モノがすっかりかたづけられて、4人の寝袋だけが準備されていた。
ママは、大地震のあとで、また大きな地震があるかもしれないから、今日は寝袋でガマンしてねと言って、配給のお弁当と、お菓子と飲み物を渡した。
地震が起きる何時間か前に、地震速報が出ると、すぐに地下のドームへ移動する。これは、スクールの災害訓練で、何度か体験しているので、要領はわかっている。
ママは、たくさん怪我をしている人がいて、まだ治療を受けられない人のお世話があるから、何かあったらすぐに連絡をするように言って、急いで部屋から出て行った。
ママは、栄養士として配給の弁当を作るだけでなく、看護士としての資格も持っている。感染症の病気や災害などで患者が急増すると、空いた時間に救護の手伝いを行っている。
4人は、話もできないほど疲れ切っていたので、お弁当を食べて寝袋に入ると、すぐに眠りについた。
次の日になって、パパがキラシャのMフォンに、大音量のBGMが入った音声メールを送ってくれるまで、誰も目を覚まさずに眠っていた。
びっくりするくらいの大きな音で飛び起きた子供達は、すぐ近くにある動物園に向かった。
マイクは、お菓子と飲み物を入れたバックを大事そうに持って行ったが…。
パパに会うと、あいさつもそこそこに、まだ見つかっていない動物の映像を見せてもらい、4人で話し合って、キラシャが動物達と一緒に遊んだことのある植物園に向かった。
地震で植物園は閉園していたが、逃げた動物を探していると園の入口で伝えると、中に通してくれた。
園の職員だけでなく、ボランティアで復旧作業に参加している人が、たくさん忙しそうに働いていた。
キラシャが「ク~! お前の大好きなおやつ持ってきたよ~! お腹すいたンでしょ~? ポンタも早く出ておいで~」と大声を出すと、他の子も名前を呼びながら一緒に歩いた。
キラシャは歩きながら、ク~や他の動物との思い出を話した。パールも、アフカでいっしょに過ごした動物との思い出は多い。
植物の研究者であるマイクのパパも、どんな動物がこんな植物を食べているといった話をしていたので、得意そうにその話をしてくれた。
キラシャは、動物や植物を通じても、パールやマイクとこれからずっといい友達でいられそうだと感じた。
ケンはキラシャのおじいさんからたくさん海の冒険話を聞いていたが、動物園にはキラシャとあまり来なかったので、聞き役に徹していた。
ただ、キラシャが言うように、人間のお菓子を動物にやっていいのかと、マイクにこぼしながら、動物が見つかったら、ココでランチタイムにしようぜと話した。
地震で揺らいだ木々が、あちこち折れたり倒れたりしていた。相当ひどく揺れたんだなと思いながら、4人はゆっくり声をかけながら、動物のいそうな場所を探した。
広い植物園の奥にある花畑は、作業が後回しにされているのか、人があまりいなかった。
キラシャは、抜かれた花が重ねて置いてある場所で、何かがモゾモゾ動いているのに気が付いた。
子供達が、その花に近づこうとすると、サーっと何かが逃げて行った。
「エッ? ひょっとして、ク~? 」
いったんは逃げて行ったその動物は、その声を聞いて、ソロソロと戻って来た。
「わッ! やっぱりク~だ!
あたしだよっ!
キラシャだよっっ!!
ク~、戻っておいで!
あたしも、帰って来たンだよ! ク~も帰っておいで! 」
その声に反応するように、愛くるしい顔をしたフェレットが、ク~っと鼻声で返事をした。