未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第22章 新しい試練に向かって ①

2021-01-26 19:57:11 | 未来記

2021-10-07 21:34:47 | 未来記

1.パパからのメール

 

地下のドームは、どこも薄暗く時間がわかりにくいが、もう子供達を起こしても良いと判断して、デビッドおじさんが声をかけてきた。

 

「キラシャ…、ケン…。起きなさい。君達の住むドームの近くで、大地震が起きたようだ。

 

君達の家族や保護者に、連絡がつくといいのだが… 」

 

いろんなことが重なって、疲れがマックスにたまり、銃声や爆発音で何度も目が覚めたこともあって、子供達はボーっとした顔のまま、デビッドおじさんを見た。

 

「キラシャ、大丈夫か? 寝られなくて、目がはれてしまったようだね」

 

キラシャは、タケルとの夢の出会いの後、しばらく涙が止まらなかったので、おじさんに見えないように、恥ずかしそうに枕にしていたタオルで顔を隠した。

 

キラシャとケンは、近くの火山の噴火やプレートの移動で、小さい地震は何度も経験しているが、実際の大地震に出くわしたことはない。

 

デビッドおじさんに、どう答えて良いのかもわからず、ケンがMフォンでニュースを見ると、確かにMFiエリアの大地震のことが出ていた。

 

震源も、自分達のいるドームに近い所だ。

 

キラシャも、メールを確認してみたが、パパやママからの地震が起こったというメールはない。

 

大きな地震が起きた後は、しばらく通信できないと授業で学んだことを思い出した。

 

『どうしよう。パパもママも無事かな…? 』

 

ケンは、ヒロに連絡しようとしたらしいが、つながらないようだ。

 

ただ、ケンはムッとした顔をして、ヒロから来ていたメールを読みながら言った。

 

「ヒロは、Mフォンの不正使用で、警察から取り調べを受けることになったって。

 

まだ、地震が起きる前だったンだろうな。

 

その後は、わからない。

 

ヒロがもっとさ、転送先で何が起こるのか、説明してくれりゃさ。

 

キラシャをあんな目に遭わせずに済んだのに…

 

オレ達のことをちっとも考えずに、勝手に転送するからだよ!

 

まったく、ひどい奴だ! 」

 

キラシャも、ヒロに対しては、ケンと同じような気持ちでいる。

 

だけど、タケルもあの危険なトコで、武器を持った怖いおじさん達と戦おうとしていた。

 

だから、ヒロが黙っていたことは、何となくわかる気もした。

 

ひょっとして、夜中の出来事が夢でなかったら、タケルはまだこの近くにいるかも…。

 

タケルは、MFiエリアに帰るとは言わなかった。

 

これから、どこで、何をして生きてゆくのだろう?

 

…ヒロなら、知っているのかもしれない。

 

その時、キラシャのメールに着信音が鳴った。パパからの伝言メールだ。

 

キラシャは、パパが送って来た声を、デビッドおじさんにも聞こえるように音量を上げた。

 

≪キラシャ、そっちはどうだ?

 

おなかをこわしてないか?

 

今朝、こっちで大地震が起きた。

 

電話がつながらないから、伝言メールにした。

 

ネットがつながれば届くから、届いたら知らせてくれ。

 

今、パパは動物園だ。ママも大丈夫。

 

でも、小動物が逃げてしまった。

 

飼育係みんなで探してるが、なかなか見つからない。

 

キラシャと遊んでたクーやポンタ、他にもたくさんいる。

 

おまえが声をかければ、戻って来るかもしれない。

 

頼むから、一日も早く帰って来てほしい。

 

パパもママも連絡を待ってるよ≫

 

「わかった。おじさんは、MFiエリアへ向かうレスキュー隊がいつ、どこから出動するか、防衛軍の知人に聞いてくる。

 

 ひょっとしたら、その便に入れてもらえるかもしれない。

 

ホテルから別の場所へ移動するよう言われたら、おじさんもそこへ行くからね 」

 

デビッドおじさんは、そう言って、その場を離れた。

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